阿修羅 入学

第21話 阿修羅ちゃん、入学

 4月、今日は、天上院学院の入学式。


 緑を基調とした制服を見につつんだ、生徒達が桜舞う校舎に溢れていた。


 生徒の中には、オーラを放つ新入生もいた。

 プロ野球選手の息子、テレビにもでる音楽家の娘、スポーツ会だけではなく、格闘畑のもの達も何人か見られていた。


 自然にその回りには見えないオーラが、他の生徒との距離を離していた。


 

 「流石のオーラ、気品と言った所か」

 遠巻きから、腕を組みそれを見つめる男がいた。

 男の名は、生徒会会長、近藤佳祐

 180センチ、オールバックに高校生には見えない風格を見せていた。

 フルコンタクト空手として、世界にも名を通す一人である。

 

 その近藤の独り言のような問いに答えたのは、修羅の当主を叔父に持つ、陸であった。

 「そうですね。ただそこまでとは。」


 近藤は、鼻で笑う、流石に修羅一族ともあれば、あの程度では、動じないのだろう。

 学園最強と言われる近藤だが、陸とは戦った事はない、生徒会会長が私闘を禁じられているのが1つの理由であるが、もし、戦えばお互い無事ですまないことを理解しているのである。



 「お前の身内は、まだ来ていないのか?」

 近藤は話題を変え、陸に訪ねる。

 陸は、回りを見渡して、指をさす。

 「あそこにいますね。」



 指差した場所も、微妙な人だかりが出来ていた。

 主に、女子生徒が、浮き足立っていた。

 「あの人、ほらやっぱりモデルのユウビさんだよ」

 「えー、そうなの」

 「凄い足長すぎじゃない」


 阿修羅の母である、優美が注目を浴びていたのだ。


 遠巻きに見ていた、女子生徒を呼び、他愛のない話やサインを求められると笑顔で応える。

 そして、話の最後には、決まったセリフで締めくくる。

 「娘の阿修羅とも仲良くしてあげてね。」

 一流モデルの笑顔を受けた女子生徒は例外なく目をハートにし、答える。

 「はい。こちらもよろしくお願いします。」


 「さすが、母様ですね、お父様。」

 「そうだな、さすがだな」

 

 阿修羅と天外は、母の人気に圧倒されて、見ていたが、少し波が落ち着いてきたので、合流し校舎の中に歩みを進めた。


 優美は、普段からファンには優しいことで有名だが、サインや写真を無尽蔵に受け入れる事はあまりしない。

 しかし、ここの女子生徒は、娘の阿修羅の学友になるのだ、媚を売っても損はないだろうし、女の妬みが恐ろしい事も知っている、少しでも娘の掩護射撃になればとの行動である。


 「あれが、阿修羅か。」

 近藤は、陸に感じるような、威圧感を天外にも阿修羅にも感じなかった。

 

 そんな事とは、露知らず阿修羅は、入学に心を踊らせる。


 

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