第18話 阿修羅ちゃん、夜の公園

 藤谷がトーナメントを制して、一週間、藤谷はダメージが抜けたのを確認し、日課であるトレーニングを再開していた。

 

 ここ最近は、マスコミの露出が多く上手く時間が作れなかった藤谷は、夜公園ジョギングで身体を暖めていた。


 マスコミに出たことで、色々な言葉を耳にすることもあった。

 (所詮、国内のトーナメントだ)

 (トーナメントが藤谷選手に有利だった)

 (まだ、最強というには…)


 雑念を払うように、藤谷はスピードを上げる。


 藤谷は、総合格闘技をベースに、打撃も組み技もあり世界レベル、優勝をしたがまだ確固たる自信を持てていないのは、自分のファイトスタイルが作れてなかった。


 自分がより上に行くのには、名のある格闘家を倒し何かを掴む必要がある、そう藤谷が思っていた。


 その内の1人は、修羅、しかし、戦うとしても、一筋縄ではいかない。

 

 しかし、藤谷の思惑とは別に事態は急に動き出す。


 藤谷の目線の先、進行方向に一人の男、いや親子連れが見えた。

 道の真ん中でたたずんでいた親子に一瞬、ファンかと思ったが、直ぐに誰か気づいた。



 修羅天外。


 藤谷は、走るのを止めて、距離は取ったまま、話しかける。

 「こんな偶然、嫌、まさか偶然ではないよな。」


 そして、側の阿修羅に眼を移す。

 (こんな小さい子どもに、ボブが負けたのか。)


 天外は距離を取りながら話をかける。

 「もちろん、偶然じゃない、会いにいったらいないので、今度は、知り合いに頼んで居場所を調べた。」


 藤谷は、失念していたことに気づいた。

 (たしかに、俺のジムもいる時間も知ってたし、この時間1人になる事を知ってても不思議じゃない。) 


 「すまないね、今あんたをほっとくと、娘にまで絡んでくると思ってね。

 娘は、入学を控えてるんで、問題は早めに解決って訳だ。」


 藤谷は、苦笑した、確かに、試合の為には娘を利用としていたが、今ここに来た以上そんな事をする必要はない。

 ここで、交渉すればいいだけだ。


 「試合受けてくれるんですね。」

 藤谷は快諾を予想していた。


 「嫌、試合はしない。ただ、今少しだけなら、遊んであげようかなと」

 藤谷の表情が曇る。

 「『試合をしない、遊んであげる。』だと」 

 そして、大声で叫ぶ。

 「ふざけるな、俺はチャンピオンだ。」


 世間の声にもイライラしていた、藤谷は激昂し上着を脱ぎ、戦闘態勢に入る。

 

 プロとして、路上の喧嘩は御法度だが、よもや止めれる人は、いないだろう。



 父親に誘われて、夜の散歩に来ただけの阿修羅に取っては、まさかの展開になってしまった。


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