第16話 阿修羅ちゃん、とお兄さん

 修羅宅の居間では、他ならない微妙な緊張感に包まれていた。

 阿修羅は、深呼吸して陸を見て心の中でお礼を言った。

 (ありがとう、陸お兄さん)


 「わたし、行きたい学校あるの」


 そう言って、陸を一度みて、父母に視線を移してからしっかり言葉を続ける。


 「陸兄さんと同じ学校。」


 天外と優美は顔を見合わせる。


 陸が通っている学校、それは、天上院学院。


 文武両道を掲げ、優秀な生徒が多く、また数多のスポーツ選手が卒業生に持ち、その中でも格闘技という分野においても有能な人材を生み出していた。

 入学という部分では、今の阿修羅の学力ではなかなか難しい部分もあった。

 

 天外としては、手がない訳ではないのだが。


 「天上院学院か」


 優美と天外は、二人で同じタイミングで呟いた。


 「おねがい、だめかな」


 優美は、納得するために問いかける。

 「でも、何でここじゃなきゃだめなの?」


 「だって、陸兄さんもいるし、いろんな人がいて、勉強もスポーツも力いれてるっていうから、お父様もお母様もうれしいかなと」


 阿修羅は力弱く答えた。

 

 「だが、ここの学校に行っても戦う事は禁止は変わらないぞ。」


 黙る阿修羅に、またしても、陸が助け船を出す。


 「ただ女学院に行って禁止するよりは、天上院でスポーツに触れたりするのもいいんじゃないですか?」


 それも、一理あるな天外はそう思いながら、優美を説得する。

 「阿修羅が言うならいいんじゃないか」


 「簡単に言うけど、試験とかはもう間に合わないんじゃない」


 優美が最もな事をいうが、天外は、問題ない事を伝えた、天外には策があった。


 天上院学院の学園長は、天上院我狼は武道者、修羅として面識があり、一方的なライバル視されている部分もある。

 上手く運べば入学できる。


 「じゃあ、お兄さんと同じ学校いけるの?」

 阿修羅は恐る恐る訪ねる。


 天外と優美は、大きく頷く、天外としては、自分の意思をしっかり伝えてくれたのが嬉しかったのだ。


 「四月からは、後輩だな」

 陸も嬉しそうに、阿修羅の頭を撫でる。


 阿修羅は、なんとか家族会議にも勝つことが出来たのだ。


 

 

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