第15話 阿修羅ちゃん、家族会議

 修羅宅、畳間で修羅一家が勢揃いであった。

 修羅天外、修羅優美、そして、その娘、阿修羅、今から重要な話し合いが始まるのだ。


 優美は、年齢より若く見え、モデルという事もあり、身体は細いが、程よく筋肉がついている。

 その眼光の鋭さに、独特の力強さを見せていた。


 緊張感の中、優美は1枚の紙を机の上に置いた。

 学校のパンフレットだ、そこには、笑顔の女子生徒と校舎と青空の写真が表紙を飾っていた。



 そこには、『聖キラリ女学院』と記載されていた。

 

 阿修羅は、そのパンフレットを手に取り中身を見る、華やかな学園生活風景や、可愛い制服、そして、学校長らしき人物のインタビューが載っていた。


 眩しい世界だ、それが、阿修羅の第一印象だ。


 「春からは、この学校に進学になる事話しているよね、そして、もう1つ約束して欲しいことがあるの、それは」


 優美は、ゆっくりとしかし、力強く阿修羅に話しかける。

 「学校生活の間は、戦う事は禁止、それに、修羅の業を習得するのも駄目よ。」


 阿修羅は、パンフレットから視線を母優美に向ける、確かに、学校の事は聞いていた、でも、戦わない事と修練を禁じられる事は寝耳に水であった。


 「そんな、お母様」


 「あなたは、この春から中学生、自分の名前も漢字で書けない、勉強もあまり打ち込んでないようね。

 それでは、将来あなたが困るの、色々学び知識を深めないといけません。」


 ピシャリと優美は言い切る、優美は元々、格闘技という世界とは無縁であったが、天外と出逢い結婚してからは少しずつ、その世界を理解してきた。

 普通、戦うだけでは生きて生けないこと、そして、怪我をしてもそれは自己責任、もし後遺症の残る怪我をしてしまえば、戦う事も出来ないだろう。


 その時に、少しでも生きる術がなければ、困るのは阿修羅自信である、今は理解出来なくても親として厳しくしなければならない、そう考えての事であった。


 天外は、沈黙をしている、無言と言うことは賛成なのだろう。

 天外も、幼少の頃から阿修羅を鍛えてきて、この子自身、ほんとうに、この道を望んでいるのかと疑心暗鬼になっている事もあった。

 親に合わせて阿修羅が無理をしていないか、知らない内に洗脳のようにしていないかを。


 阿修羅は、黙っていた、沈黙は賛成を意味する事だが上手く言葉が出てこない。

 そこに、別の助け船が出てきた。


 「自分の気持ちは言うべきじゃないかな」


 居間の入り口に、陸が立っていた。

 家族会議に参加するのは気が引けるのだがどうしてもほっとけなかったのだろう。

 陸に取っては、阿修羅は妹の様な存在だからだ。


 「優美さん、天外さん、部外者なのに、口を挟んでしまってすみません。」


 「気にしないで、あなたは家族みたいなものよ。」


 優美の言葉に嬉しく思いながらも、座らずに立ちながら会釈する。


 阿修羅は、大きく深呼吸して話を始める。

 ボブと相対する時よりも、緊張しているのを感じていた。


 

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