第13話 阿修羅ちゃん、技を繰り出す。

 試合が始まって約3分程たった、ぼぼボブの足技のデモンストレーションを見ている様だった。

 

 見物客は、ボブの足技を阿修羅がギリギリで避ける光景を、見ながら、このまま避けそこなって、阿修羅が食らうのは時間の問題だと思っていた。


 阿修羅からは、攻撃する素振りがなかったからだ。

 

 (くだらん、遊びだ。)


 ボブは、少し苛立ったが、攻撃に乱れは無かった、散漫もなく、前蹴り放った、瞬間、阿修羅は、ダッキンクで、距離を縮める。


 阿修羅は、一番、戻りが遅い前蹴りを狙っていた。


 避ける動作が、攻撃の動作と繋がっていた左鉤突きで右の脇腹を捉え、一瞬右鉤突きも繋げる。


 しかし、ダメージはない。

 

 ボブは、落胆したが、構わずに近距離での戦いに切り替えた、拳の攻撃だ。

 初動が少ない分拳の攻撃の方が攻撃があたる可能性は上がる、決着は近いそう思いながら、右の打ち下ろしを繰り出す。

 阿修羅避けながら、肘うち、ボブは、そのまま意に返さず攻撃、当たらない。

 体格差もあるが、それ以上に阿修羅の避けるテクニックが異常なのも関係している。

 

 距離が近過ぎると感じ、ボブは半歩下がる、その隙に下駄蹴り、もちろんダメージはない。

 

 ボブは、この全く意味のない攻撃に、自分の思っていた『カウンター狙い』の戦法ではないのではないかと疑問を感じていた。


 距離はまだ中間距離、ボブは蹴り技は膝しか選択肢はない、蹴りを捨て拳の打撃に集中する。


 ボブは阿修羅が何かを狙っているように見えた。


 阿修羅は、また、蹴りの動作に入る。


 (蹴るなら蹴ればいい、相討ちでもこちらの攻撃で勝負ありだ。)


 ふと、先ほどの天外の言葉をふと思いだした。

 『眼に指を入れられても、玉を潰されても…』


 (先ぼとの下段蹴りはフェイント、本命は急所蹴り、それなら一撃必殺になりうる)


 膝を内側に瞬時に閉じ、蹴ってきた脚を捕まえるように手を添える。

 

 撃ってこい、そのまま脚を捕まえ、鬼ごっこはお仕舞いだ。


 しかし、繰り出した脚は、半円を描く軌跡を変えてボブの右顔面、正確には、右顎の顎の間接を左脚の親指で撃ち抜いてた。


 意識は、完全に急所打ちにいっていた為に、予想外の顔面の攻撃に面食らっていた。

 痛みが広がっていく、阿修羅の蹴りで顎が外れてしまったのだ。


 修羅の技の一つ、『閃光』

 素足で蹴りを繰り出す時に、親指を立てて顎の繋ぎ目に打撃を与えて、顎を外す荒業。


 この技事態、成功率は低いが、成功した時には相手は、かなりの痛みと攻撃の低下を強いられてしまう。


 (カウンターしかないとおもってるのに、いきなりせめてきたから、かんがえがわからなくなったって感じかな。

 それに、さっきのお父様のことばで、きゅうしょにいしきいってしまったのが、負けるげんいんだね。)


 ボブは、自分の顎が外れている事に少し遅れて気づくが、どうすればいいのかわからなかった。

 

 そのボブに、阿修羅は裏膝に蹴りを繰り出して、ボブは尻餅をつく。

 

 ダウン、勝負ありだ。


 阿修羅は一撃食らうこともなく、圧勝した。


 天外は、結果は予想していたが、やはり嬉しかった勝利した阿修羅を見守りながら思った。


 (さずが、自分の娘だ。そして、最強の修羅になれ)


 


 

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