第12話 阿修羅ちゃん、対ボブ

 阿修羅は、視線を外さない、いつ攻防が始まるのか、始まりの合図も決めていないのだ。


 ボブは、そこまで、戦う空気を纏っていないのか、自然な形で提案をする。


 「さすがに、こんな場所では、試合は出来ない。

 あそこにスパー用のマットがあるそこでやろう」


 指した場所は、六メートル四方のマットが締めつけられているエリアだった。

 戦うには申し分ないスペースだ。


 「あと、ヘッドガードくらいつけた方がいい」


 ボブの提案に、阿修羅は父の顔を見た、なんと答えるのが正解なのか、わからない様子で、天外が代わりに答える。


 「遊びに、そんなものは阿修羅に必要ない」


 ボブは少しムッとしたが、それ以上は何もいわずマットに足を運び軽く柔軟、シャドーを見せる。


 阿修羅は、靴を外し、裸足でマットに乗ると、マットの弾力を確認だけした。


 (しんちょうは、よしだより、大きいけど細い、手足も長い、おこってたたかうかんじじゃない)


 阿修羅は、色々考えている内に、ボブは一方的に決着方法を決める。


 「ダウンしたら終わりだ、構わないな」


 阿修羅は頷く。


 お互い間合いを開けた状態から戦いは始まる。



 (さすがに、小さな女の子あいてで、ふつうのおとななら、かおやおなかは、ねらわない、まずは、げだんのこうげき…あのきょりならあしわざ)


 そう思っている内に、ボブの右足が微かに動く。


 『礼儀を重んじる』 『修羅なら女子供でも躊躇なく戦う』 『試合の場所の決め』

 咄嗟に、キーワードが阿修羅の頭に駆け巡る。


 (ちがう、この人、えんりょなくこうげきしてくる、かおもねらってくる)


 その考えから、阿修羅は、顔を後ろにずらしボブか放った前蹴りを避ける。

 ギリギリだった。


 ボブは、避けられた事に、驚きの表情を見せた、戦いの場に立ったなら女子供関係ない、甘い考えを打ち砕く為にあえて顔面に蹴りを繰り出したのだ。

 見物人も、驚いていた、避けた事よりも本気で顔面を狙った蹴りを繰り出したのだからだ。


 ただ一人天外だけは、驚く事はなかった、ボブという男は遠慮しないだろうし、それを避ける事は阿修羅には容易だと言うことも知っていた。


 体勢が崩れることなかったが、、阿修羅は反撃をせずに、そのまま、相手の動きを見極める。


 左脚の動きが見える、左中段回し蹴り、半歩下がり避ける。

 蹴りは、そのまま降りきらず、一度止まり左脚がまた顔をめがけて再度繰り出される。

 

 阿修羅は今度は、膝の重心を落として、ダッキンクの要領で避ける。

 そのまま、バックステップに咄嗟に距離をとる。


 またも、反撃はしなかった。

 いうよりも、まだ、阿修羅の中で定まっていたない部分もあり、迂闊な攻撃は避けたかった。


 相討ちでも、阿修羅には致命傷だ。


 ボブも攻撃は来ないだろうと考えていた、というよりも攻撃されても、どうという事もないと言った感じだろう。


 (避けまくって、こっちの大技にカウンターくらいしか、やることないだろう)

 

 ボブは、天外と阿修羅の思惑をカウンターと絞り、蹴りを主体で攻めを組み立て、攻撃を繰り出す。

 

 しかも、力は半分程度、万一カウンターを狙われても対処できるように考えていた。


 その思惑を感じ、阿修羅は、少し笑みを浮かべた、阿修羅は阿修羅で組み立てが終わった所だった。

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