第8話 阿修羅ちゃんは、寝てる

 修羅家-夫婦の寝室。


 修羅の当主、天外は、寝間着に着替えるために上半身裸であった。

 

 服の上からでは、想像できない、鍛えぬかれた鋼鉄の肉体がそこにあった。

 一見すると気のよいオジさんにしか見えない天外であったが、修羅の当主として鍛練を欠かすことなく続けている。


 いつかくる戦いのために。


 「どうするつもり」


 ベッドの上で、妻の優美が問いかける。


 「なにがだ」


 天外は気づいているはずなのに、はぐらかす態度に優美は少し口調が強くなる。


 「あの記者会見の事よ、全国放送でバカにされて悔しくないの」


 天外は、鼻で笑い答える


 「言いたいやつには言わせておけば、いい、あのレベル相手をするまでもない」


 「そんな事言って、もう何年も試合もしてないじゃない、戦うのが仕事じゃない?」


 天外は、身体を柔軟をしている、優美には視線を合わせない。


 「試合は、五年前にしたし、その時のファイトマネーがまだ残ってるだろう

 それに、あんなのは戦うまでもない」


 優美は、諦めたように言う。

 「でも、阿修羅は落ち込んでたよ」


 天外は、阿修羅の名前が出たことで、少し表情を変えた。


 「仕方ないな、少し元気つけてやろうか、でも、試合はしないぞ。」


 天外はそういって上着をつけて、ベッドで横になるのだった。


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