夏休みと先輩後輩 その3
「お待たせしましたッス、先輩!!」
「全然待ってねぇよ、15分前だから早いくらいだ」
「そんなボクより早い先輩は何分前から居るんスかね〜?」
「30分とかそこらだな」
「待ってるんじゃないッスか」
「15分、30分くらい誤差だろ」
「カッコつけなんスから〜もう〜」
「うっせ、カッコくらいつけさせろ」
「そんなことしなくても先輩はいつもカッコいいッスよ!!」
「はいはい」
「本気ッスよ〜!?可愛い後輩の褒め言葉テキトーに流しちゃダメなんスからね!!」
「はいはい可愛い可愛い」
「もう…」
「さっさと行くぞ〜」
「ちょっ、先輩?他に言うことあるんじゃないッスか!?」
「あー?」
「ほら!」
「手ぇ広げて何してんの?」
「なんかあるッスよね!?」
「ハグ?」
「褒めろ!!」
「
「はよしろ!!」
「わかったから戻ってくれ」
「まだ!?」
「はい、すいません、大変可愛らしいです」
「…」
「まだダメなん?」
「…」
「おーけー、だから睨むなって…シャツが水色ってのと白のサロペットが明るいお前に合っててすげー可愛い」
「…」
「求めておいて照れるな」
「……先輩……ス」
「なんて?」
「先輩もパーカーが似合っててカッコイイッス!!」
「おう、ありがとな」
「ほんっと……少しは恥ずかしがっても……」
「聞こえてるぞ」
「鼓膜破るッスよ!?」
「今日どうしたんだよお前…」
「先輩がからかってくるから…あれ?先輩?」
「なんだ?」
「なんで目ぇ合わせないんスか?」
「気のせいじゃないか?ほら、さっさとイクゾー」
「デッデッデデデデ」
「カーン」
「じゃなくてッスね!?本当は照れてるんスよね!?」
「うるせぇ照れさせるぞ」
「どういう脅しなんスかそれ!?」
「いいのか?」
「…何するんスか?」
「言えないこと」
「言えなっ…!?」
「何考えたんだ〜後輩ちゃんよぉ〜?」
「〜っ!!ニヤニヤしないで欲しいッスよぉ〜!!」
「くははははははっ!!」
「絶対仕返ししてやるッスから覚悟しておくッス!!」
「はいはい、楽しみにしてるよ」
「余裕そうなのがさらに腹立つッス〜!!」
「ここが新しい遊園地、ブルーラグーンッスか」
「思ってたよりかなり広そうだな」
「マスコットとか居ないんスかね」
「わっかんねぇけど、こういうとこ普通居そうだよな」
「そうッスよね〜」
「…なぁ」
「…なんスか?」
「マスコットってアレじゃ」
「違うッス」
「いやでも至る所に」
「違うッス」
「…けど」
「あんな青丸に手足が着いたものがマスコットとか絶対認めないッス」
「お、おう」
「なんかもう疲れが…」
「まだ入っただけなのにな…」
「一切調べてないッスからね、さっき貰ったパンフ見ながらブラブラしてテキトーに遊ぶッスよ」
「期待と不安で胃がキリキリしてくるな」
「最初がアレッスからね…」
「アレな…アレなんだったんだろうな」
「あおまる君っていうらしいッス」
「…ここの目玉アトラクションって何?」
「露骨に面倒くさくなったッスね?」
「何?」
「いや、いいんスけど…1番の目玉はアクアリウムらしいっす。ドームの中にあるバカでけぇ水槽と映像で、まるで360度全面魚が泳いでるような不思議な場所を歩き回れるらしいッス」
「なんそれめっちゃ面白そうじゃん!!」
「写真みる限りめっちゃ幻想的で面白そうッスね!!」
「じゃあそこはメインディッシュとして…まずはここ、行くか」
「ダイビングマリンッスか…ジェットコースターッスね!!」
「2人で乗れば怖くない」
「怖いのは先輩の顔」
「そう怖いのは…ってやかましいわ」
「…吐きそう」
「…キッツ」
「…」
「…」
「…」
「…」
「…先輩、ヤバいッス」
「分かってる、ベンチで休んどいてくれ。飲み物買ってくるわ…」
「ありがとうございまス…」
「あ、そうそう…」
「…?」
「電話繋げとけ、なんかあったらすぐ戻る」
「はい〜…?」
「んじゃ、待っとけよー」
「(なんで電話…?)」
「あ…」
「ただいま〜っと、何も無くて良かった。はいよ、レモネード買ってきたぞ、それとも水がいいか?」
「レモネードで…」
「ほい」
「あっ、美味しい」
「よかよか、顔色も少し戻ったし」
「いや先輩も顔色悪か…いや悪いのは人相だったッスね」
「そんだけ軽口叩けんならもう大丈夫だな?」
「えぇまぁ大分楽になってきたッス」
「にしても…」
「ヤバかったッスね…」
「どうなってんだあのジェットコースター」
「めっちゃ上下に振られましたね」
「シェイキングウェーブに改名せぇよ…」
「グルグル高速で回るよりヤバかったッス、キツイ感覚だけ残ってそれ以外の記憶が無いッス」
「奇遇だな、俺もだ」
「思い出したら…」
「やめろ、船に乗ってないのに陸酔いする…」
「なんかリフレッシュ出来そうなとこ行きたいッス」
「流石に飯はヤダな…こんな気分でアクアリウムもなんかな…」
「あ、一緒に写真撮りたいッス!!」
「写真?そういうのわからんから全部お前に任せるわ」
「いいんスか?めっちゃ撮るッスよ?」
「いいぞ〜」
「やった!!それじゃ先輩、行くッスよ〜!!」
「おい手引っ張んな…ったく」
「いっぱい撮れたッス!!」
「お、おう…」
「大丈夫ッスか?」
「さっきまで顔白くしといてよくこんなに元気だな…」
「え、そりゃ、まぁ…へへっ」
「いいけどよ、楽しそうで」
「にひっ、楽しいッスよぉ!!」
「よかよか…でも流石に腹減ったな」
「…えっ、2時間近く経ってる?」
「そんくらい経ってんな」
「あー、最初のとことはかなり離れたッスね…近くに食べるとこあったらいいんス…け…ど!?」
「あ?どうした?」
「てってててってってて」
「てってて…?」
「手ぇ!!なんで繋いでるんスか!?」
「いやお前が俺連れ回す時ずっとこんなんだったけど」
「気づかなかった…」
「馬鹿か?」
「酷いッス!?あ、でも勝手にすみません…」
「まぁ別にいいだろ」
「え?」
「デートだしな?」
「…」
「なんで睨むんだ」
「このスケコマシ先輩」
「なんでだよ…」
「うるさいッス、はやくご飯食べに行くッスよ!!」
「あ、結局離さないんだな」
「デートなんスよね?」
「あーわかったわかった、だから睨むな、怖くない」
「先輩の顔が怖いからッス」
「斬新なFUJIWARAだな…」
「いや〜、美味しかったッスね先輩」
「いや、そうだけど…」
「まぁ、言いたいことはわかるッス」
「なんで寿司しかなかったんだ?」
「なんか斬新過ぎるっすね」
「泳ぐ魚見ながら寿司食わされたんだけど」
「まぁ、いいじゃないっすか!!美味しかったんでスしお寿司」
「久々に聞いたなそれ」
「実際に美味しかったお寿司」
「ネタに聞こえるな」
「たまに目が合う魚がいたのが凄い気になったッスけど」
「夢に出そうだったな」
「夢の国じゃないッスけどね」
「アトランティス…ダメだ夢の国が網羅してる」
「夢の国って言うのもうやめないッスか?」
「なんか怖いしそうすっか」
「あ、先輩アレ乗りません?」
「あのコーヒーカップと言わんばかりに回ってる湯呑み茶碗にか?」
「あのコーヒーカップと言わんばかりに回ってる湯呑み茶碗にッス」
「…まぁいいか」
「なんか思ったより…」
「狭かったッスね」
「回る湯呑みどうだった?」
「狭くて緊張したッスけど回転スピードが速すぎて口から小さな水族館と田んぼが出るかと思ったっす」
「リバースシ」
「やめてください…そんなことより先輩が紳士的なこと出来るんだと驚いたッスよ」
「紳士的?」
「乗る時に手をとってくれて…」
「あれか?別に普通だろうよ」
「…そッスね」
「そんなことより次は…なんでそんな複雑な顔してんだ?」
「呆れてるだけッス!!次は向こうに行くッスよ!!」
「あ、走ってくなよ!!危ねぇぞ!!」
「誰かにぶつかったりコケたりとかは無く」
「無事に色んなミニゲームが出来る場所に着いた俺達」
「流れを一切無視し、唐突に始まる五番勝負」
「果たして勝つのは後輩か、先輩の俺か」
「負けられない戦い今ここに始まる!!」
「…なんなん」
「先輩がそれっぽく言うからノッただけッスよ」
「ノリがいい」
「今日食べた寿司ネタッスか?」
「脂の乗りがいい、じゃなくてだな」
「ボンドより」
「糊がいい、ってもうええわ」
「「どうもありがとうございました」」
「じゃないんだよなぁ!!」
「これを列待ちしながら真顔でやってるって客観的に見るとシュール過ぎてウケるッスね」
「真顔で言われてもな、ほらもうすぐだからアホなこと言ってないで大人しくしろ」
「了解ッス〜」
「いやお前弱すぎ」
「いやいやいやいや!!先輩が強すぎなんス!!なんスかほぼパーフェクトって!!」
「いや簡単だったろ?」
「本当に初めて来たんスか?」
「あったり前田のクラッカー」
「ベテランの動きだったッスよ!?」
「ナチュラルにスルーしやがって…初めてだしそもそもお前も俺と変わらんかっただろ?」
「いやいや!!割と差があったッスよ!?」
「そこはほら、男女差だろ」
「それだけじゃない何かが…スタッフさんみんな引いてたッスよ」
「あー…フリスビーを穴に通してくやつやってる時にめっちゃ笑顔引きつってたな」
「明らかにブラックリスト入ってるッス」
「なんも悪いことしてないのにな」
「顔は悪人顔なのに」
「やかましいわ」
「そろそろアクアリウム行くッスか?」
「んー?もうこんな時間か、行くかー」
「あ、そういや先輩」
「おん?」
「最初ジェットコースターの後に離れる時なんで電話繋げさせたんスか?」
「ああ…お前になんかあってもすぐ助けに行けるようにと思ってな。ただやっぱ電話はプライバシー的にダメだと後で思ったな、頭まわってなかったわ」
「ボクもなんも考えず電話繋いでたッスね…」
「今度からお互い気をつけようってことだな」
「そッスね!!」
「特にお前は可愛いからナンパされそうだし」
「あー…まぁ、あるッスけど…」
「なんでそんな歯切れ悪いんだ?」
「いやぁ…」
「ん?」
「その、先輩先に謝っておくッス」
「なんか怖いんだけど!?」
「いや、ナンパ断る時に先輩を使わせてもらってるんスよ」
「ん?どうやって?」
「えーっと…あ、これッス。先輩とのツーショット」
「あー…」
「お察しの通り、彼氏役として使わせて貰って、はい…」
「いや、いいぞ。お前が変なやつに連れてかれるよりはな…ただ、なんというかな」
「もちろんみんな怯えて逃げます」
「だと思ったよこんちくしょうめ!!」
「あ、そろそろ着くッスよ〜!!」
「ったく…というかそれが噂の元だったんじゃ…?」
「「めっちゃすごかった」」
「いや他にさぁなんか…」
「先輩もッスよね!?」
「余韻に浸ってんだよ静かにしろバカ」
「理不尽じゃないッスかねぇ!?」
「めっちゃすごかったわ〜」
「まったく、この先輩は…いやめっちゃすごかったッスけどね〜」
「はしゃいでるのあんまりいなかったな」
「普通にいいムードの場所でしたし、はしゃぐ前に感動がきたッスからねぇ」
「四方八方魚が泳いでるのはいいんだけどな…」
「なんかあったッスか?」
「人多すぎて感動どころじゃなかった」
「それはそうッスね…今思えば結構慌ただしく動いてたような」
「すごい綺麗で面白かったんだけどな…割とぎゅうぎゅう詰めで色々気にしちゃって…」
「途中から足下か天井ばっか見てたような…」
「…」
「…」
「また来るか…」
「…え、いいんスか!?」
「お前が来ないなら一人で行くけど」
「行くッス行きまス行かせてください!!」
「咄嗟に行くの三段活用とは…なかなかやりおる。よかろう!!次も同行を許そう!!」
「ははぁー…!!」
「ってことで、どうせ回りきれてないしな。またデートに行こうか後輩」
「次はエスコートをお願いしたいところッスね先輩!!」
「まぁー…任せとケヨ」
「そこはかとなく心配ッス!!」
「それじゃメインディッシュも終わったな、じゃあその次は?」
「…お会計?」
「なんでやねん、デザートやろがい」
「日本庶民なんでコース料理とか食べないッス」
「それは確かに俺も食わない」
「今度食べに行きたいッス!!」
「流石に奢らないぞ?お前が出せるなら行ってもいいけど」
「えー…あ、じゃあ材料費割り勘で先輩が作ってくれたら」
「俺の負担がデカくね?」
「ッスよねー…そもそもコース料理とか作れるのかっていう疑問があるんスけど?」
「オードブルからカフェまでの7つなら出来るんじゃないか?それ以上細かいとダルいけど…いや、既にめんどいな」
「ほんと完璧超人みたいな…顔怖いのに」
「言う程じゃない…なんかやたらとそのネタ擦ってくるなこの後輩」
「出来ないことあるんスか?」
「けん玉とか?」
「どういうチョイス?」
「そろばんとか」
「どういうチョイス?」
「あー…ごめん、思いつかん」
「チョイスが酷いだけじゃないッスか」
「いやボケが思いつかなかった」
「漫才やってんじゃないッスよ!?」
「割と出来ないことあると思うけどなー」
「まぁその顔ッスもんね」
「お前今日ほんと酷くない?」
「第一印象良くする事ができない!!」
「お前には人の心がないのか!?」
「あっ、デザートあったッスよ!!」
「はぁ?何の話…あー観覧車か」
「先輩がデザートどうのこうの言ってたんじゃないッスか〜」
「話がコロコロ変わったから覚えてらんないんだよ」
「いいから並ぶッスよ!!日が暮れてきてまスし」
「なんで観覧車こんなに並んでんだよ、なんか特別な事あったか?」
「30分待ちくらいでピリピリしたらダメッスよ〜?」
「1人だったら絶対並びたくない時間だわ」
「待った感じしなかったッスね」
「ずっとアホみたいな会話してたな」
「ッスね。そういや先輩って高所恐怖症とかじゃないんスね」
「そんな滅多にいないんじゃないのか?」
「そんなもんスかね?」
「そんなもんじゃないかね〜」
「そッスか〜」
「何だこの中身のない会話」
「いつものことじゃないッスか」
「初めて乗る観覧車ですることでは無いな」
「いいじゃないッスかボクたちらしくて」
「まぁな〜。景色キレ〜パシャパシャ〜見たい感じでは絶対ないよな」
「先輩が言うとウケるッスね」
「真顔で言うなよ…」
「まぁまぁ」
「ったく…にしても夕暮れ時に乗れてよかったな。綺麗な景色だ」
「綺麗ッスね…なんだか久しぶりにちゃんと景色を見た気がするッス」
「俺もだ、なんだか心が洗われるような…気がする」
「気がするだけッスか」
「別に悪いことした訳でもないから綺麗な景色だなとしか思わんな」
「ムードもへったくれもないッスね!?ほら、お前の方が綺麗だよとかベッタベタのセリフ言ってもいいんスよ?」
「お前は綺麗というか可愛いだからなぁ」
「…」
「んー?顔が赤いけど?」
「…夕日のせいッス」
「影作ろうか?」
「もう!!そういうベタなのはいらないッス!!」
「手のひらドリルやんこいつ…」
「…ッ」
「ん?なんて?」
「可愛いって…嬉しいッス…」
「…お、おう」
「…」
「…」
「せ、先輩!!」
「おわっ!?な、なんだ?」
「あの…ボク…」
「あー…もうすぐ下着くけど…」
「え…?」
「はぁ〜…」
「スッゴイため息」
「いやもう…なんか…えぇ…」
「落ち込んでるとこ悪いけどさっき何言おうと」
「聞かないでください」
「え」
「聞かないでください」
「でもなんか」
「聞 か な い で く だ さ い」
「わかったから圧掛けないで?」
「ふぅ〜…いや、すいません。もう大丈夫ッス」
「お、おう…」
「あんなんなってたッスけど今日はホントに楽しかったッス!!」
「ならいいけどな。俺も楽しかったよ」
「また連れてってくれるんスよね?」
「おう、また一緒に来ようぜ」
「楽しみにしてるッス!!」
「他にもどっか行って遊ぶか〜」
「ぜひお供に!!」
「よかろう、ついてくるがよい」
「ありがたき幸せ!!」
「最後までこれか〜」
「いいじゃないッスか〜!!楽しいッスよ?」
「それはそう」
「またデート誘ってくださいよ?先輩!!」
「わかったって、とりあえず帰るぞ〜」
「了解ッス!!」
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