夏休みと先輩後輩 その2
「やーっと終わった…ッス」
「おつかれさーんっと」
「ひゃっ!?いきなり冷たいの首に当てないでくださいッス!!」
「悪い悪い、ほらこれ」
「もう…あ、これ美味しいッス。レモネードッスか?」
「そ、自家製レモネード。」
「甘党の先輩が作る割にはスッキリした感じッスね」
「アニメキャラみたいにドバドバ砂糖ぶち込むのは甘党じゃなくて病気だろ」
「でも好きッスよね?」
「好きだな」
「病気ッスね、まったくこの先輩は…よくあんなもん飲めるッスね?」
「じゃあそれはもう要らないな?」
「それとこれは別ッス!!それともなんスか?先輩は可愛い後輩ちゃんから奪った飲み物飲むのが好きな変態さんなんスか!?」
「必死すぎだろ…」
「ガルルルルル…」
「わかったから唸るな、ゆっくり飲んどけ」
「あ、おかわりくださいッス」
「はいはい、最初の緊張してた後輩ちゃんはどこいったんだかねぇ…」
「『先輩だし、いっか』となって寛げるようになったッス」
「へぇ〜」
「…なんでニヤニヤしてるんスか?」
「お前が未だにキョロキョロしたりソワソワしたりしてるの見てるからな」
「なっなに見てるんスか変態!!」
「勉強教えてんだから見るだろうが!!」
「変態は変態ッス!!」
「理不尽過ぎるだろ…」
「…」
「またキョロキョロしてらぁ」
「あっいや、変態…じゃなかった」
「おい」
「せ・ん・ぱ・い!!」
「何も無かったかのように」
「一人暮らしッスよね?」
「そうだな」
「今更ッスけど、お金ってどうしてるんスか?」
「遺産と土日のバイト」
「遺産?バイトォ!?」
「なんで遺産よりバイトで驚かれてんだ?」
「いやいや先輩、遺産は前にお話したからなんとなくわかるんスけど、考えてもみて下さい」
「何を?」
「明らかな悪人面の先輩がバイトって言ったらヤバそうなことしてんのかなって思っちゃうッス」
「顔はいいだろ別に!!」
「いやいや、第一印象で怖いんスから雇われないと思っちゃうッスよ!?」
「失礼過ぎんだろ。普通に喫茶店で働いてんぞ」
「はぁ!?喫茶店!?」
「暑いから騒がないで欲しいんだけど」
「すみません…じゃなくて、大丈夫なんスかその喫茶店」
「何がだよ」
「極道がみかじめ料取ってたり…」
「するか阿呆!!どこの神室町だよ!!」
「先輩がホールに居てお客さんに対応してるイメージが全くつかない…」
「ああもういいだろ別に」
「今度冷やかしに行くッスね」
「来んな、教えないし」
「えぇ〜」
「えぇ〜じゃありません」
「気になるッス!!」
「気にすんのは身長だけにしとけ」
「誰がチビッスか誰が!!」
「誰とは言ってないだろ?」
「言ってるようなもんッスよね!?」
「そりゃお前に言ってるけど」
「あーもうカチンときたッス、その殺人鬼みたいな顔面でどこでどうやってバイトしてるのか絶対突き止めてやるッス!!」
「馬鹿だなぁ」
「なんスか文句あるッスか!?」
「俺がキッチンで採用されてたら顔関係無いってわかんないのかなぁ?」
「先輩がキッチンなんて…あっ」
「思い出したかポンコツ後輩?」
「先輩めっちゃ料理出来んじゃん…!!」
「わかったか馬鹿め」
「…ボクも一緒にバイトしたらいいのでは?」
「残念だけど今バイト募集してないし来たところで俺が落とすからな」
「そんなぁ…というかそんな権限あるんスか?」
「知らんがな」
「なんでやねん」
「んなアホな」
「なんか怒られそうなんでやめないッスか?」
「せやな」
「なんでやねん」
「今16時ッスか〜…なんか中途半端な時間ッスね」
「出かけるにしても疲れたしな、ゲームすっか?」
「ん〜気分じゃないッス」
「そうかぁ〜」
「…」
「…」
「「暇」」
「スマホ見てないでなんか考えろよ〜」
「先輩こそ寝っ転がってゲームしてんじゃないッスか〜」
「やる事ねぇしな〜」
「…」
「…」
「先輩」
「なんだ」
「この部屋快適ッスね」
「暑いの苦手だから気ぃ遣ってんだよ」
「羨ましいッス〜…」
「いいだろ〜…」
「…」
「…」
「先輩」
「なんだ」
「こういう状況を表す言葉とかないんスか」
「何それ知りたいの?」
「暇すぎて」
「ちょっと思いつかんな…小人閑居とかだとまた違うし」
「なんスかそれ」
「小人閑居して不善をなす、馬鹿が1人で暇してると悪いことするみたいな意味」
「へぇ〜」
「知らんけど」
「なんスかそれ」
「そもそも2人だしな」
「そんな都合のいい言葉無いッスか」
「調べたらあるんじゃないか〜」
「そッスね〜」
「…」
「…」
「見つかんねぇな…」
「意外と無いんスかね…?」
「まぁ、知らぬがほっとけって言うし」
「知らぬが仏ッスよ、そもそも知っても害は無いッス」
「新築二階ってこと?」
「…?何言ってんスかいきなり?」
「ああ、伝わらんか…」
「えぇ…?………あっ、なるほど!!」
「お?」
「それを言うなら人畜無害ッスよ!!」
「すっごいドヤ顔で言うじゃん」
「こういうのいいッスね!!言葉遊びみたいな感じで!!」
「でもお前に分かるか〜?さっきも遅かったぞ?」
「先輩がツッコミしたらいいじゃないッスか」
「芸人か俺らは」
「ボクらは閉店楽勝ッスから」
「一蓮托生な、いきなり閉店してどうすんだよ」
「よくわかったッスね!?」
「あまり舐めんなよ〜?」
「くっ、みかんも雪もない…」
「今夏だし強引過ぎだろ。油断も隙もない、な…いきなりぶっ込むお前の事じゃねーか」
「いやいや、ボクの頭の出来じゃ限界ですって、貴方の敵にゃなんないですって」
「なんなん急に」
「最近ラップにハマってるんスよ」
「趣旨変わるじゃん」
「終始アガるじゃん」
「韻踏むな」
「すみませんッス」
「こんな面白そうなのは後日思いっきりやろう」
「先輩…!!」
「夏休みやることがそれでいいならな」
「昼休みとかがいいッス」
「1日使って2人ですることでは無いな」
「どうしても暇な時に気分がノッてたらっすかね」
「そうだなー」
「…」
「…」
「なんだったんこの時間」
「いいじゃないッスか、くだらない会話で」
「つまらないサイファーで」
「なんなんスか急に?」
「さっきこういう気分になった」
「なるほど…なんかすいません」
「ええよ」
「なんでやねん」
「…」
「…」
「マジでなんの時間なのこれ?」
「知らないッスよ!?」
「あ、そッスよ先輩!!どこ遊びに行きまス?」
「さっきの時間全部その話に使いたかったな」
「全カットしてくんないッスかねぇ…」
「なんて?」
「なんでもないッス!!で、どこ行きまス?」
「んー、どこ行こうかね」
「先輩行きたいとこ無いんスか?」
「ゲーセン?」
「ゲーセンもいッスね〜!!でも先輩?可愛い後輩との初めてのデートの場所がゲーセンってのはどうなんスか〜?」
「デートってお前な…」
「あれあれ〜?先輩、恥ずかしがってるんスかぁ?」
「行かなくてもいいんだけど?」
「またそんなこと言ってぇ〜、本当はボクと遊びたい癖にぃ〜!!」
「もしもし、店長?」
「待ってすいませんボクが先輩と遊びたいのでバイト入れようとしないでほしいッス」
「よろしい。まぁ俺もお前と遊びたいから間違っちゃないけど」
「へ?お前で遊びたいの言い間違いッスか?」
「ん?いいのか?」
「どっから出したんスかその鎖ぃ!?」
「手品だよ」
「便利な設定に使わないで欲しいッスそれ!!」
「まぁ冗談は置いといて」
「…え、なんで鎖は置かないんスか?鎖は冗談じゃないってことッスか!?」
「…」
「笑顔で無言が1番怖いッス!?」
「はいはい、わかったから」
「…え?どこにしまったんスか?」
「じゃあデートどこ行こうか」
「ねぇ!!どこしまったんスかあんな長い鎖!!」
「遊園地とか行きたいなー」
「そうッスね!!でも今は鎖の行方の方が気になって話頭に入らないんで説明から貰っていいッスか!?」
「しょうがないな〜、こっから出てくるだろ?」
「背中の方から出てきた」
「ここにしまうんだよ」
「…え、待って分からない、普通にズボンのポケットに入れたのにどっかに消えた」
「わかったな?」
「何も分からないことがわかったッス」
「じゃあとりあえず遊園地ってことでいいッスか?」
「ああ、新しいやつできたじゃん。そこ行こうぜ」
「ブルーラグーンでしたっけ?」
「面白そうだよな〜遊園地自体行ったことないし楽しみだ」
「え、行ったことないんスか?」
「ない、そんな時間がなかったしなー」
「あ…」
「いちいち気にすんな、行けないわけじゃないんだからな」
「は、はいッス」
「お前は行ったことあんの?」
「小さい頃に遊園地行ったッスよ、小さいとこッスけど楽しかったッス」
「おお、いいな〜」
「そっから行ってないッスね〜、あんまり覚えてないッスし」
「じゃあ思いっきり楽しんで上書きすっか」
「人の大切な思い出に何をしようとしてんスか」
「俺とも思い出作ってこうぜ後輩」
「それは全然よろしくお願いしますって感じなんスけど…」
「じゃあ話し合って色々決めるか〜」
「了解ッス、あっ観覧車はやっぱ最後ッスよね?」
「だな。あとこの水のアトラクションとか…」
「いいッスね〜、王道のこのあたりも…」
「じゃあそんな感じで行くか」
「了解ッス!!今から楽しみッスよ!!」
「俺も楽しみだよ、遊園地デート」
「ニヤニヤしながら言わないで欲しいッス!!」
「くはは、いいじゃねぇか」
「もう…」
「そいじゃ、また連絡し合う感じで」
「はいッス!!」
「まぁ今から送ってくんだけど」
「締まらないッスねぇ…」
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