昼休みの先輩後輩

「すいません、先輩いませんか?」

「お?どうしたー?」

「あっ、先輩!!」

「ん…?ああ、なるほど。お前らーこいつは俺の後輩だぞ、ほら散った散った!!」

「俺の……後輩……っ!?」

「ったく、可愛すぎるのも考えもんだな…」

「かわっ……っ!?」

「んで?どうし、本当にどうした?顔真っ赤だけど」

「………(カッコイイ)」

「おーい…?風邪か?ちょいと失礼して…」

「っ!?な、なにしてんスか!?」

「返事しねぇからだ、熱でもあんのか?」

「ないっスなんでもないッス!!!」

「ほーん…?」

「…なんスか、文句あるッスか」

「いやないけど、で結局何のようなんだ?」

「あ、そうッス!先輩、一緒にご飯食べるッス!!」

「お、いいね。んじゃ待っとけ、弁当持ってくる」

「了解ッス!!」


「あの〜先輩?」

「おん?」

「どこに向かってるんスか?」

「屋上」

「えっ、屋上って立ち入り禁止ッスよね?」

「そうだな」

「鍵も掛かってるはずッスよね?」

「そうだな」

「何しに行くんスか…?」

「飯食いにだろ?」

「嫌だからそもそも入れないのにどう…なんスかそれ」

「鍵」

「どこの」

「屋上」

「なるほど…ちなみにどこから?」

「屋上に行けんのかなって行ってみた時にドアにぶっ刺さったまんまだった」

「ふむふむ」

「だからパクった」

「ダメっすよねぇ!?」

「ダメだな」

「先輩のことがよく分からなくなってきた…いや、返しに行くッスよ!!今すぐ!!」

「えぇ…誰にも邪魔されない良いとこだぞ」

「そんな問題じゃ…誰にも?」

「誰にも」

「……………………やっぱりそのまんまでいいッス」

「恐ろしく長い間、俺でなくとも見逃さないね」

「うるさいッス!!さっさと行くッス!!」

「後輩のことがよく分からなくなってきたッス」

「真似してんじゃないッスよぉ!!」


「おお…ここ良いッスね先輩!!」

「せやろ」

「なんで関西弁…?」

「んじゃ、食うか〜」

「はいッス!!」

「…お、そっちは弁当か」

「先輩は購買の…じゃなさそうッスね。サンドイッチッスか?」

「おう、作るのも食うのも楽でな」

「自分で作ってるんスか!?」

「なんだよ」

「その顔で!?」

「うっさいわボケ!!」

「はぇ〜…鮮やかだし凄い美味しそうッスね…」

「せやろ!」

「いやだからなんで関西弁…?」


「………先輩、ちょーっとお願いが」

「ふぃふぃ」

「食ってから返事してくださいッス」

「んぐ………だったら食ってる時に話しかけるなよ」

「それは…まぁいいじゃないッスか!!」

「殴ってやろうかコイツ…」

「それよりも先輩!!サンドイッチ食べたいッス!!」

「ふぃふぃ」

「なんでまた食ってるんスか!!そんでもって『チビ』って言ってるッスよねぇ!?許せないんスけど!!」

「んぐ、ごめんごめん、わかると思わなくて」

「否定して欲しかったッスゥゥッ!!」

「だからごめんて、これやるから」

「あ、くれるんス…か…」

「食いかけでいいならやるけど」

「…」

「やっぱいらんか?」

「っ!!いるッス貰うッスいただくッス!!」

「○○ッス三段活用じゃん」

「はむっ………えっ」

「『えっ』てなんだ、『えっ』て」

「美味すぎなんスけど…ホントに先輩が作ったんスかこれ…?」

「モチのロン」

「えぇ…そのツラで…?」

「なんか今日のお前暴言が過ぎないか?」

「だって!鶏ももとトマトをレタスで包んでてパンもべちゃってしないようにしっかりとトーストされてバターも塗られてて…」

「お、おう」

「ちょっとしょっぱさが強いのはズバリ、先輩がいつも飲んでるあれに合うようにッスよね?」

「おぉ、よくわかったな」

「ふふん、先輩のことすk…ごぉくしってまスからぁ!!」

「あらやだすっごい不自然」

「うっさいッス!!可愛い可愛い後輩が褒めてるんスから喜んで欲しいッスよ!!」

「わぁーてんきゅー」

「なんて隠す気のないやる気のなさなんスか」


「にしてもホント美味しいッスよ、先輩」

「じゃあそんな嬉しいこと言ってくれる後輩にはこれをくれてやろう」

「ドランクペッパーじゃないッスか!!ありがとうございまス!!」

「いやー、この美味しさがわかるやつが居なくてな。こんなに美味ぇのに」

「そうッスよねー!!やっぱドラぺ美味しいッスよね!!」

「ホント大好きなんだよな」

「…っ」

「何だ急に黙って」

「(こっち見ながら言わないで欲しいッス…)」

「…あ、そういえば」

「…?」

「サンドイッチ思いっきり関節キスだったけど」

「…いや、なんか、美味しさでまったく意識してなかったッス」

「顔真っ赤で言われても」

「思い出させないで欲しいッスゥゥ…」


「あっ、そろそろ昼休み…終わる…ッスね」

「俺まで恥ずかしくなるからやめてくれない?」

「〜っ!!先輩が悪いんス!!わざわざ言わなくても、もうっ!!」

「結局弁当半分以上余ってるし、どうすんのそれ?」

「いやもう色々いっぱいいっぱいなのでいいッス」

「ふーん…じゃあそれもらっていいか?」

「へ?」

「可愛い後輩ににサンドイッチあげたから腹が減っててな」

「あっそれは申し訳ないッス…どうぞ食べてください」

「時間ねぇから持って戻っていいか?一緒に帰る時に返すから」

「えっあっはい」

「よっし、じゃあ戻るぞ〜」

「えっあっはい…え?」


「いつものとこで待ってるッス、先輩♪…っと。送信完了!!あ〜先輩に思わずボクの弁当渡しちゃったけど不味いって思われてないかなぁ…それにしても先輩のサンドイッチ美味しかったなぁ…先輩凄い、すごい負けた気分だけど…」

「何に負けたって?」

「うひゃあ!?」

「いい反応するなぁ」

「驚かせないでくださいよ先輩!!」

「すまん、お前の悲鳴が面白くて」

「面白がってんじゃねぇッスよ!!」

「負け犬の遠吠え」

「全然違うっすよね!?」

「嬉しい悲鳴」

「全く掠ってもない!!」

「我儘だなぁ」

「くっ、このっ…!!」

「あ、これありがとな。」

「なんスか!?…弁当箱?あ、ボクのか」

「美味かったぞ、もっと食いたかった」

「そ、そうッスか…?えへっ」

「お…?もしかして手作りだった?」

「そ、そうッスよ!!そんなに美味しかったならもっとボクを褒めてもいいんスよ!!」

「マジで美味かった、いい嫁さんになりそうだな」

「よっ、嫁っ!?いやそれはマダハヤイトイウカナントイウカ…」

「なんて?」

「え!?え、っと、先輩に、褒められて、う、嬉しい…ッス…」

「(顔真っ赤で上目遣いで言うの卑怯じゃない?)」

「えと、その、あの…!!」

「あー、っと…とりあえずありがとう」

「い、いえ…」

「(耳真っ赤でずっと俯いとる、何だこの可愛い生き物)」

「(うう〜っ先輩の顔が見れないよ〜!!)」

「じゃあ帰る、か」

「はい…あ!えっと…!!」

「ど、どうした?」

「こ、今度は先輩にも……ッスから…」

「え?」

「今度は先輩にも弁当作ってきまスからぁ!!」

「マジで?じゃあ頼むよ」

「は、はいっ…!!」

「…」

「…」

「帰るか」

「そう、ッスね」

「あと言っとくけどここ学校敷地内だから」

「? わかってるッスけど…?」

「あんだけ叫んでたら誰かに聞こえてるかもな」

「………………゛あ」

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