第4話

曾祖母が入院してからは毎日曾祖母の病室に張り付いていた。

朝起きて、顔を洗って歯磨きをして着替えて家を出る、歩いて35分の位置に総合病院があったのでずっと曾祖母と話していた気がする。


家に帰ってテレビを見ている時に

「りりこ、水を被るの。」

祖母曰く、水を被って拝めば曾祖母は楽になれるそうだった、

「パパも昔やったのよ、猫を助けるために。真冬で今よりも寒かったけど それをやったから猫は助かったの。」

曾祖母が居なくて食費があまりもらえていなくて、春休みで給食もなくて頭が回っていなかったんだと思う。

「わかったよ。」

小学5年生の春休み、3月はまだ寒かった。

「おばあちゃんが楽になるようにちゃんと祈りながら水を被るんだよ。」

お風呂の浴槽いっぱいに溜まった水を無心で被った。

最初は寒くて体が痛かったけど、被り続ければだんだん慣れてきてそんなに苦痛を感じることはなくなっていたような気がする。

祖母は昔宗教や拝み屋にはまっていたことがあったそうで、その影響で困ったときは神頼みをするんだろうなと今更になって思う。神様なんていないし いくら祈ろうが自分が動かなければ何も起こることはないことだけはわかっていたが逆らうことの方がリスクが大きかった。

半分くらいになるまで水を被ったころに祖母がそろそろいいだろうと終わったのだ。

ずっと見張られながら水を被るのは普通のことではないと今になればわかるが、その当時の私には身を守るために言うことを聞くしかできなかったのだ。

そう思う一方で、水を被ることで本当に曾祖母が助かればいいと思った。


次の日病院に行くと元気そうな曾祖母が居て安心したのを覚えている、祖母も後から来て

「今日は一段と元気そうだね、昨日りりこが拝みながら水を被ってくれたから元気なのかもね。」

「そうっか、ありがとうねぇ。」

曾祖母の顔は見れなかった。


その3日後には曾祖母はあっさり亡くなった、末期で手の施しようがなかったとは聞いていたしどうしようもなかったと後から父に聞いた。

曾祖母が亡くなった報告は日曜日の17時半くらいだったのを覚えている、アニメのエンディングの時に祖母が返ってきて言った。

「おばあちゃんが死んだ。」

悲しくてその場でひたすら泣いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る