第30話 風の迷宮へ
爆睡していたのだが二日酔いになって頭痛で目が覚めた。
奴隷達は部屋に戻ったようだ。
今回は完全に油断していたな。
最近調子が良かったから、というのは言い訳か。
しかし奴隷に助けられるとは。
予想もしていなかったが、奴隷であっても彼女たちは人間だ。
自分の意思がある。
そのことを再確認した。
儲けが無くなったのは少しばかり残念だがな。
いや、この程度で助かったというべきか。
それから結局、本来支払うはずだった額三倍を徴税官が取り立てに来た。
非常に高額ではあったが、流石にこれ以上目を付けられるわけにはいかない。
満額支払うことで、とりあえず穏便に済ますことが出来た。
流石の俺も痛い目にあって反省した。
そして資金調達が終わったのか、ついに町の中心の広場に太陽神像が建設され始める。
素材にはどうやら鉱石の迷宮からとれるあの黒い石が使われるようだ。
全く忌々しい。
太陽神像……か。正直神々しさを感じるよりも少し不気味なんだよな。
だが太陽神像建設にあたって職人が集まった為、少し景気が良くなった。
日用品や弁当などが良く売れるようになり、それなりに店も忙しい。
店を担保にした金まで少し使ってしまったため、いつも通りではあるがアズ達三人には稼いでもらうことになる。
幾つか依頼をこなさせながら素材の相場を確認していたのだが、今は風の素材が大きく値上がりしているらしい。
風魔石をはじめとした素材の取引が活発になっている。
原因は……なるほど、土の迷宮の内部が拡張したらしく冒険者の中でお祭りになっているようだ。新しい魔物、新しいお宝、新しいボス。
土の迷宮は文字通り土の元素の素材が手に入るのだが、出てくる魔物は全て土の属性を持つ。
その上で土に対して効果的な属性は風だ。
土の迷宮を攻略するために風の属性を持つ武器や防具の需要が高い。
風魔石や風のエレメンタルは加工して武具に出来るからな。
土の迷宮には勿論俺も興味があるが、今は手堅く稼ぎたい。
風の迷宮の素材は間違いなく売れる。
風に効果的なのは火の属性だ。アクレシアのメイン属性も火だし向いている。
早速アズ達を呼ぶ。
俺の部屋でカーペットに座る三人と俺。
この構図も久しぶりだ。
うんうん。絶景だな。
「えー早速だが、次に行ってもらう迷宮が決まった」
「はい。どこですか?」
「うん。風の迷宮だ」
それを聞いたエルザが少し思案する。
「ついに属性の迷宮ですか」
「そろそろ問題ないだろう。今回の目的は風の素材集めで迷宮攻略ではないしな。勿論進行によっては攻略してもらうが」
「まぁ、そうですね。属性の迷宮は中級としては難易度が高いですけど、代わりに属性による相性次第で楽になりますから」
「そうだ。今回は予算の都合でこれだけ用意した」
そう言って三人の新しい衣装を見せる。
火の属性を付与された三人の衣装だ。
赤を基調とした服になっている。
「相変わらず準備は良いわね……。私は武器に自分で付与できるけどアズの武器はどうするの」
「下手な武器を渡すよりは今の武器を使う方が良いだろう。良い性能の属性武器は高いんだ、元が取れなくなる」
「分かりました。この剣なら大丈夫だと思います」
アズの元気に返事が気持ちいいな。頭を撫でてやる。
そして早速服を着替えさせる。
「奴隷だから文句は言わないけど、着替えを眺めるって……。ご主人様、親父趣味じゃない」
「うるさい役得だ」
服は良く似合っていた。
特に赤いバトルドレスを着たアレクシアは中々見栄えが良い。流石の着こなしだ。
アズも最初に拾った頃より少し成長してきたな。
発育も良くなったし背も伸びた。
これは食生活が良くなったからか?
エルザは赤い修道服だ。
修道服は禁欲の象徴らしいのだが、普通に体のラインが出てるしエロいと思うのだが。
俺の視線に気づいたエルザが胸を強調する。
プロポーションが一番良いのはエルザだな。
さて、今回はひたすら迷宮との往復だ。
最初は様子見させ、どこまでやれるかを試すとしよう。
さあ、儲けようか。
送り出されたアズ達はポータルと言われるアイテムの前に立っていた。
魔法道具の一つで、特定の場所と場所をつなぐアイテムだ。
移動距離が大きく短縮できるのだが、危険も大きいため置く場所の規制はかなり厳しい。
また人間が持てる分のアイテムしか持ち込むことが出来ない。
ポータル自体が人がやっと通れる広さしかない。
しかも個人の一日の使用回数が決められており、移動手段としては優秀だが用途は限られていた。身分が保証されていなければ使うこともできない。
その代わり身分が保証されていれば奴隷にも使える。
風の迷宮はアズ達の居る街からは遠すぎる。
王都の衛星都市から近いため、ポータルを使って三人は王都に移動してきた。
「王都って初めてです。人が沢山いるんですね」
アズが目を輝かせる。
元々いた街ですらアズにとっては都会だったのだが、王都ともなればもはや未知の場所だ。
エルザは今にも飛び出しそうなアズの右手を握る。
「そうねー。相変わらず栄えてるわ」
「帝国の首都の方が凄いわよ。今度アズにも見せてあげたいわ」
アレクシアの言葉にアズが反応する。
「本当ですか? ご主人様は許してくれるでしょうか」
「依頼があればすぐOKするわよ。あの銭ゲバ主人は」
「あははー、間違いないですね」
三人は早速宿をとり、風の迷宮へと出発する。
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