【声劇台本 ♂1:♂♀1】死にたがりの男と気紛れな死神

〇上演 目安 時間:15分


〇比率 ♂1:♂♀1の2人用声劇台本

 

〇登場人物

・男:♂

 屋上から飛び降りようとする男


・死神:♂♀(メン吉と兼ね役)

 気紛れでやる気のない死神


・メンきち:♂♀

 ゲーセンでゲットされたメンダコのぬいぐるみ

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※利用規約につきましては別途項目を設けておりますので、

 そちらをご一読くださいませ。


〇名前の横に(M)の記載がある場合は各キャラクターのモノローグです。

 一部【】内で括っているセリフは心の声としてお読みください。

 それ以外の()は動作を表すト書きとなります(セリフ内に入っている箇所が

 多々あり読みにくいかと思います。誠に申し訳ございません!)


〇演者様の性別不問(男性→女性、女性→男性)、及び登場人物の性別変更、

 セリフの改変、アドリブ等は可能です。


〇人数の増減についても不問、もしくは一人芝居で頑張って頂いても勿論結構です。

 (なるべく過不足無くセリフ配分をしたつもりですが、

 それでも偏りが多いですので、配役については適宜ご自由にどうぞ)


 配信等を含めたご利用の際は宜しければ下記テンプレートをご利用くださいませ。

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 作品:死にたがりの男と気紛れな死神

 作者:平野 斎


〇配役

・男     :

・死神/メン吉:

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◇ビルの屋上

 

(手すりの向こう側で全てを諦めた男が、今まさに飛び降りようと虚ろな目で佇んで

 いる)


 男「恋人に振られ仕事もクビ、転職の面接結果も来年に持ち越しになって……

 俺には何も残ってないんだよな。

 ハハッ、いっそ後腐れ無くて清々せいせいするよ。もう楽になるか……」


 死神「(男の耳元で囁く)聞こえますか、聞こえますか……。

 今キミの脳みそに直接語りかけています」


 男「(慌てて手すりを掴みながら)

 うわっ⁉︎ちょっといきなり何なんですか貴方は!」


 死神「いやぁ、ごめんごめん。一度やってみたくてさ。

 いつもお世話になっております、貴方の街の死神でーす!」


 男「………(おもむろに携帯を取り出して、電話をかけようとする)」


 死神「うーん……通報するのは構わないけど、警察が来た所でキミの飛び降りを

 止められるだけだよ。まぁ、信じられないのは無理も無いけど

(そう言いながら手すりを飛び越え空中へ一歩踏み出す)」


 男「宙に浮いてる⁉︎……嘘、だろ」


 死神「残念ながらこれはマジックでも、ましてや夢でも無い。これだけで死神と

 名乗るには信憑性は薄いけど、普通の人じゃないって事は分かって貰えると

 有難いんだけどなぁ」


 男「百歩譲って貴方が死神だと仮定した場合、俺を殺しにでも来たんですか?」


 死神「いや、どちらかと言えば止めに来た」


 男「は?」


 死神「ほら、よく有る『アナタの寿命はまだ先なので、勝手に死なれるとノルマ

 未達成で上司の雷が落ちるから困ります』ってやつ」


 男「なんか後半はガッツリ個人的な意見が入ってた気がしますけど、

 要するに不測の事態だと」


 死神「そう、それそれ!物分かりが良くて助かるよ。

 だからさー、少しだけ死ぬの先延ばしにして貰えないかなーって」


 男「申し訳ないですけど、もう決めたんです。こんなクソみたいな世界とは一刻も 

 早くおさらばしたいんですよ。

 幸い俺には大切なモノも守りたい人も何一つ無いんで」


 死神「そっか。そんなに覚悟決まってるなら、ちゃんと死ねるか見届けようかな」 


 男「はぁ……他人事ひとごとだと思って適当だな」


 死神「万が一踏ん切りがつかない場合、言ってくれればそっと背中は押してあげる

 から安心して(壁に置いてあるビニール袋をガサゴソしながら)

 あー、ちょっとコンビニに行って来るから、コレ好きに読んでて良いよ

(手すりの側にビニール袋を置いてビルを降りていく)」


 男「ニャンプとワンデーとピョンピョンとメーニング、

 ……ってどんだけ漫画好きなんだよ」


 ~20分後~


 死神「いやはや、真面目というか律儀というか……

 わざわざ待っててくれたんだね」


 男「なんとなく……ってなんですか?」


 死神「お酒とおつまみ!」


 男「いや、そうじゃなくてその小脇に抱えてるやつ」


 死神「コンビニの横にあるゲーセンに寄ったら取れちゃって。

 メンダコのぬいぐるみだからメン吉って名前にした」


 男「名前まで決めてるのか。道理どうりで遅いと思いましたよ」


 死神「ほら、もちもちして可愛いよ(ぬいぐるみを男の顔に押し付ける)」


 男「ぶっ……ちょっと何するんですか⁉」


 メン吉「まぁまぁ、ヌトゼロでも飲んで気持ちを軽くするメン」


 男「このメンダコ酒クズかよ……あはははは。なんか久しぶりに笑った気がする」


 死神「楽しい事は良い事だね。どうしようもないクソったれな世界でも、

 小さな幸せがあれば案外悪くないかも……ん?

(ポケットから携帯を取り出すも思わず顔をしかめる)」


 男「出なくて良いんですか?」


 死神「(大きなため息を吐き)……やっぱり出なきゃダメかな~。

 なんか分かんないけど、すっごく嫌な予感がする」


 男「誰からなんです?」


 死神「…………上司」

 

 男「絶対出た方が良いと思いますよ、だってずっと鳴ってるし」


 死神「やだぁ、怖ぁい」


 男「そんなに嫌なら尚更なおさらさっさと終わらせた方が気が楽に」


 死神「分かった、分かったよ!出ればいいんでしょ(意を決し携帯を

 耳に当て短く咳払いをする)…………あー、お疲れ様です。今…ですか?

 えーっと……はい、そうですね。なんとか踏みとどまって貰える様に説得中

 です。……は?またまたぁ~、もうエイプリルフール終わってますよ。

 ……それ……冗談、では無いんですね。ぇ…本当…ですか⁉はい、分かりました。

 失礼します(会話を終えると真剣な面持ちで男に近づいていく)」


 男「どうしたんですか?そんな怖い顔して……がはっ⁉

(急に右腕で首を絞められる)」


 死神「申し訳ないんだけど前言撤回。キミの背中を押してあげられなく

 なっちゃった。さっきの台詞の続きだけどさ、どうしようもないクソったれな世界 

 でも、小さな幸せがあれば案外悪くないかも知れないから生きてみるのも良いん

 じゃない?っていうか死ぬな」


 男「はぁ⁉じゃあ、なんで首絞めてるんですか。これどう見ても殺す気満々

 だろ⁉」


 死神「だってほっといたら今にも飛び降りそうだから、これでも必死に止めてる

 んだよ。あと気を失ってくれたら強引に阻止出来るしラッキーかなって。

 とにかくキミが飛び降りないって約束するまで離さない!」


 男「うっ……分かり、ましたから……離してくださ……」


 死神「本当に?じゃあ……離すよ?」


 男「(大きく息をしながら)はぁっ……はぁ……さっきの電話」


 死神「…………」


 男「(息を整えつつ)急にやる気出すなんて、どう考えてもさっきの電話

 ですよね?」


 死神「…………死神、クビになった」


 男「えぇ……っと?」


 死神「なんとなーく想像がついてるかも知れないけどさ、死神になってからほとん

 魂を迎えに行った事が無くてね。いざ鎌を振り下ろそうとすると、自分なんかが

 生き物の命を終わらせて良いのかな……って怖くなって。死期が迫っている

 生き物の魂が現世に彷徨さまよい続けると悪霊化するから、それを防ぐ役目が

 有るとは言え……ね。(苦笑しながら)まぁ……そんな事ばっかりやってるから、

 死神としては失格だって」


 男「……どうなるんですか?これから」


 死神「このまま何もしなかったら……多分消える」


 男「…………⁉」


 死神「だけど、消えずに済む方法が一つだけ有る」


 男「それって…もしかして」


 死神「うん。キミの命を救って寿命を全うするまで側に居る事。

 まぁ……守護霊みたいな感じで」


 男「守護……頼りねぇ。でも退屈しなくて済みそうだ

(手すりを超えて死神の脇に座る)」


 死神「よし!そうと決まれば乾杯だね」


 男「(笑いながら)……クソったれな世界の小さな幸せに、ですか?」


 メン吉「ヌトゼロいっぱい有るメ~ン!メンメン!

(ヌトゼロを男の顔に押し付ける)」


 男「ぶっ……冷たっ」


 死神「っという訳だから、これから末永く宜しくお願いしますね」

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【声劇台本 ♂1:♂♀1】死にたがりの男と気紛れな死神 平野 斎 @hiranoitsuki

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