第五章 クラス対抗戦!
第30話 さあ対抗戦!
ざっわざわざわ……
「えーこの学園恒例となったこの対抗戦ですが、これには長い歴史が有り……」
時の流れというのは早い物で、あっという間に対抗戦当日になってしまった。
ダラダラと長く続く校長の話のせいかあくびがそこら中から聞こえる。
だが俺の精神はかつてないほどの緊張感に包まれていて、
出るあくびも引っ込んでしまう。
「次は生徒代表の挨拶です」
司会進行役の生徒の声に導かれ、見覚えのある顔が朝礼台に上がる。
「……どうも皆さん。生徒代表兼、黄色組代表のセイラ・リドゥーです」
以前はエリトが務めていた黄色組代表だが、
彼の転学に伴いセイラに受け継がれたようだ。
挨拶の内容は当たり障りの無い内容だったが、何度か目が合った。
彼女とは決着をつけなければならない。
それは向こうも同じ思いらしい。
「……以上、生徒代表の挨拶でした。ありがとうございました」
その後も運動会のような挨拶やスピーチが続き、俺らが行動を許されたのは
朝の九時頃の事だった。
*
「ふぅ……まだ何もやって無いのにちょっと疲れてきた……」
「お前は赤組代表の挨拶をやっただろう?」
「まぁそうだけどさ。本番はこれからじゃん?」
校庭の東側に寄せ集められた赤組達の最奥で、俺はマロンと雑談をしていた。
「念の為確認するけど、スケジュールはどんなんだっけ……」
クラス対抗戦プログラムの冊子を開き、中を確認する。
9:00~11:00
舞、大規模呪文集団詠唱等、得点に関わらない催し物。(任意参加)
11:30〜13:30
赤組、青組、黄組対抗の団体戦。
13:30~14:00
昼食。
14:30〜15:00
二位、三位のチームによる決勝進出を掛けた大将戦。
15:30~16:00
一位、大将戦勝利チームのリーダー同士の決戦。
勝者のチームが優勝となる。
16:30
閉会式。
……よし。大体大丈夫だな。
つまり団体戦で一位通過なら確実に決勝の決戦に出れる。
俺と奈緒の決着が着くのはそこだ。
「気合い入れないとな……」
「ああ、せっかく狙うなら優勝だな。私も本気で行く」
「はは、頼もしいよ」
*
ノーティスとマロンがそんな会話をしているちょうど反対側。
校庭の西側に集められた青組の集まりから、ノーティスを睨みつける者が居た。
「……まったく。
どいつもこいつもセイラとノーティスの事を取り上げやがって……」
彼は学生とは思えない大きな腹を揺らし、鼻を鳴らしながら
学級新聞の記事を握りつぶした。
「……ラグロさん。大丈夫ですかね?俺達は商人の集まりですし、
戦いとなると不得手ですよ……戦いが得意なマロンさんとかは
引き抜かれちゃってますし……」
「関係ないんだよそんな事!どいつもこいつも俺様なんか居ないみたいに扱いやがってた……それも今日の対抗戦で終わりだ!頼んだぞ……お前さえいれば何とかなるんだよ」
ラグロと呼ばれた青組のリーダーは隣に立っていた銀髪で細身な少年に向かって声をかける。彼は赤組の制服に身を包んでいた。
「ラグロ。任せてくれよ」
彼はただ一言だけ言って目を閉じて集中し始めた。
その様はなにか強いオーラのような物を感じさせる。
(ククク……セイラ、ノーティスの二強は今日で終わりだ……
一番すごいのはこのラグロ様だって事を教えてやるぜ……)
体型に似合わない茶髪をかきあげながら、ラグロは心の中で宣言した。
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