第31話 無双の予感

「ほっ!はっ!でゃあ!」

「せいっ!やっ!うおりゃあ!」


時刻としては、9:30。ノーティスは校庭の中央で行われている剣舞を

遠目に見物していた。

だが、剣舞には集中していないようで心ここにあらずといった様子だ。


「……おいおい大丈夫か?」

「…………ん?ああ、大丈夫だよ。ちょっとこの後の作戦考えてただけ」


少し間を空けながらも俺はマロンに返事を返した。


「作戦……この後の団体戦だな。腕が鳴る……

だが、私も作戦通り行動しなきゃいけないか?

私は頭を使うのは面倒なんだが……」

「ははっ、安心して。そう言うと思ってたからさ、マロンは特別扱いだよ。

マロンの役割は、突撃して倒せるだけ倒す。それだけ」


俺が笑いながらそういうとマロンは目を閉じてうなずいた。

どうやらお気に召したようだ。


「いやー美しい剣舞でしたね!続いては……」


そうしてると実況を務めているカイの声が響きわたった。

どうやら剣舞は終わって次の演目らしい。


「はーい!皆注目!」


ここぞとばかりに俺は手をパチパチと鳴らしながら声を挙げ、

その場にいたメンバーの注目を集める。


「どうした?リーダー?」

「お?なんだなんだ?」


カイなど居ないメンバーもいるが、六十人程が俺の方を向く。


「この後の陣形とかの話するから良く聞いていて欲しい、

今居ない奴にも後で伝えておいてくれ。

俺の言う通りに戦えれば青組には絶対勝てるから……」


……そう、今まで俺は一対一などばかりで、

前世のゲーム知識を使う機会は有って無いようなものだった。


だが、この団体戦は違う。前世のSRPG知識がフルに使う事が出来る。

つまり俺の勝ちは約束されたようなものだ……


「この中で槍を使える奴ら!手挙げて!」


三十人程が手を挙げた。


「じゃあ君達は槍で敵の剣士と戦ってくれ。

ただし、倒すより足止めを意識してほしい」

「んー……まぁほんとは剣が良いけど……お前の言う事だし大丈夫だろ」


カイの新聞で活躍を取り上げられたおかげか、皆納得してくれてるようだ。


「じゃあ残りの皆は斧か魔法。好きな方を選んでくれ」


「私は魔法かなー……」「俺は斧だ!敵の腕へし折ってやる!」


「なぁ、ノーティス。どういう作戦なのか私はいまいち分からないんだが……」


マロンがそう聞いてきたので、おさらいも兼ねて説明しようと思う。


まず、全体的に敵には剣士が多い。

だからSRPGの基本、「相性有利な武器で戦う」を徹底するために

剣士に有利な槍兵を味方に増やす。

(今回は校庭が戦場なので地形効果等は考え無くて良いものとする)


だが、付け焼き刃で無茶しても上手くいかないだろう。

だから槍兵の皆には足止めに集中してもらって、魔法による遠距離攻撃と、

斧による一撃必殺を狙う。


全体の流れはマロンを先頭に槍兵で突撃し、敵が槍兵に気をとられている

隙をついて魔法と斧で刈り取る。


……なかなか良い作戦じゃないか?


「なるほどな。たしか何かの本に、

槍で剣に勝つには三倍の腕が要るとあった……

確実に有利に立つ良い作戦だと思うぞ」


マロンにそう言われると俺としても自信が出てくる。


「なんかよ……作戦聞いたらいける気がしてきたぜ!優勝狙うか!」


だんだんと赤組全体の士気も上がって来たようだ。

きっと勝てるさ。俺はそう信じて疑わなかった。



一方その頃。青組もまた、作戦会議をしていた。


「まったく……嫌だね赤組の連中は……

ノーティスなんかに乗せられて盛り上がってさ……

おい!皆!俺の話も聞けよ!」


ラグロが叫ぶが、青組のメンバー達は目もくれない。


「はぁー……赤組は楽しそうだな……

うちのリーダーもノーティスくらいカリスマが有ってくれればいいのに……」


「ムキー!なんだいその言い草は!もう怒った!

おい、ライト!準備運動しとけよ!ほんとは黄組の時にお前を出すつもりだったけど……もういい!赤組との違いを見せてやれ!」


「……了解だよリーダー」


ライトは、眉一つ動かさずにラグロの急な作戦変更を了承し、剣を磨き始めた。


(ふふ……道が倒木で防がれて学園に行けなくなった時はどうなるかと思ったけど……転入そうそうこんなイベントで目立てるなんて……楽しみだなぁ……)


やはり無表情のまま、彼は心の中でそう語った。

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