5.愚者は罰を見る

10月20日:304号室


 全てが変わったと思った。

 気持ちの整理がつくまで半分もかかっていた。

 夫が死んで、それを見ず知らずの男性と川に捨てにいったのだ。

 夫と出会ったのは、6年前の職場。私と夫は同じ貿易会社で働いていて、夫はその会社の重役であった。

 そこから仲が良くなっていったのは覚えているが、その後の馴れ初めはもう忘れてしまった、

 そうして私たちは結婚した。

新郎:大崎雄二 新婦:大崎季久美として。

 しかし、やがねそれははただのお遊び。

 それぞれ、仕事におわれ、2人で愛を戯れる時間さえもない。

 私はしばらくして、家事を行うために、一時的に仕事を休職したが、夫はその事もやがて忘れ、海外へ渡る機会が日に日に増えていちった。

 「あなた、いってらっしゃい。」

この言葉を言うのも、消えていく。

 最初は、返事を受け取ってくれたのも、今は上の空。

 そして、ついに悲劇は起きた。

 彼はついに、氷のように冷たくなった。

 帰ってきては、晩御飯が美味しくなくなった。ゴミが増えてきた。「勘弁して、もう今日は疲れてるんだ。寝かせてくれ」

 まるで当然のような言葉となった。

 それが自分を傷つける。ただ愛が欲しいだけなのに。

 辛い。辛い辛い辛い。嗚呼、もうここに愛はないんだ。

 こいつはどうせ、いずれ訪れる特別な日さえも覚えてないんだ。

 そうして私は救いを求めた。メッセージアプリだ。

 たくさんの人とお話しして、あたしの愚痴を聞いてもらう。

 始めると私のような人とも話せて心が安らぐ。

 そんな時、私に神がやってきた。

 9月中旬、DMにメッセージが走った。送ってきたのは、"R.S"という謎の人物。

 こんなメールを送ってきた。

「大崎季久美さんですね?江戸川区のマンショングレードエステート304号室に住んでいる」

 背筋が凍った。この人は自分の住所を知っている・・!?

 そのメールを見て以来、アプリを開けなかった。外に出るとき、その人物いるのか震えた。

 3日後、久しぶりにアプリを開いてみたら、その"R.S"から再びメールがきていた。

 恐怖で指が震えつつも、そのメールを開く。そこには、


 「メールを見ていたら、ご確認ください。夫のモラハラや、無関心なことに悩んでいるのではありませんか?私でしたら、解決できると思います」

何だこの人は、なぜ夫のことまで知っている?私は驚いていた。

 しかしなぜだろう。この人に謎の魅力を感じていた。

 私は恐る恐る、メールを入れて送る。

 「あなたは誰ですか?なぜそこまで知っているんですか?」

 R.Sが送ってくる。

 「味方ですよ。いわゆる夫に殺意をわいているのではないですか?」

 そう言われてハッとした。

 殺意。そうだ、ある意味彼に抱いた感情は殺意とも取れる。

 「私が完全犯罪で夫を殺せる方法、教えますよ」

 なんという人だ。こんなことを言う人がいるとは、でも私は怖くもなく、震えるもなく、ただその言葉を聞いていた。

「どうするんですか?」

「簡単です。あなたにコマを送ります」

「コマとは?」

「共犯者です。彼はあなたに好意を持っています、すぐに協力してくれるでしょう」

 わからなかったが、とりあえず私は了承した。

 彼の名前は須藤久信と言った。

 どうやら、同じマンションに住んでいて、何処でかはわからなかったが、私にあって惚れたらしい。

 そうして作戦を立てていった。

 私が夜中に部屋を開け、その隙に須藤さんが、部屋に入り、リシンを入れる。この毒は遅効性で、少量で体に異常を起こすらしい。

 それを一日一日、こっそり彼のコーヒーに飲ませてゆっくり殺していくという作戦だった。

 R.Sさんによると、私の場所でを入れると、自分の場所に毒があると警察にばれるらしい。

 病院にて、須藤さんの働いている医院に診せていった。

 そうして須藤はうその診療をする。

 これはただの疲れ、「不思議のアリス症候群」と。これでなんとか誤魔化した。

 そうして、10月の19日。彼は死んだ。

 あの時、こっそり起きて見ていた私をなぜか「アリス」と言い残して。

 次の日。私と須藤さんで山の麓の川まで捨てた。あそこなら人は通らないし、バレない。

 でもこの後のことに関してはわからないことだらけだった。

 あの後、須藤に言い寄られ、肉体関係を持つようになった。片方の愛という歪なもので。

 嗚呼、私は一体何がしたかったのだろう。

 嗚呼、何故殺したのだろう。

 そして今日もこの好きでもない人も交わっていく。

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