第7話

「この世には大きく分けて二つの宗教があることは知っているじゃろ?」


アクリルから明日に死刑宣告人工勇者の一部になることを受けた俺はアクリルの部下から持ってこられた飯をヴィヒと一緒に食べ、そしてヴィヒからの言いたいことを聞く。


「ああ」


王城にいるとき、この世界について図書館で調べた。ペルソナリタ教とソッコルソ教という宗教がこの世界を支配しているといってもいいほどに信仰されている。魔族やエルフといった人間から見た時の異種族にも信仰されているほどだから。

しかも両方とも多神教なので互いに存在を認め合っている。


「破壊教団はソッコルソ教の特殊部隊みたいなもんじゃ」


頷き返す。やはり宗教であった。

ただ疑問点がある。


「なぜ破壊教団の存在を隠していたんだ?」


破壊教団がやっていることは人工勇者をつくっていること。別に人工勇者をつくっていることを発表して、多少の反感を買うかもしれないが隠すほどではない気がする。魔王にプレッシャーを与えることができるのに。


「人間以外の種族が多く信仰している宗教はどっちじゃ?」


それはソッコルソ教だ。でも関係していることか?

さらに疑問点がでてきてしまった。


「魔王になる方法はしっておるか?」


ヴィヒからそう問われるがもちろん...


「知らない」


魔王になる方法について調べたこともなかった。調べようとしても書いてないだろうけどな。


「魔王になるには人間以外の種族の族長から認めてもらうか前魔王を倒すことが条件じゃ、だから魔王は言うならば人間以外の種族の代表じゃ、そして魔王を倒そうとする者を”勇者”と呼んでおる」


「だからか、今まで人間で魔王を倒した勇者はいるのか?」


人工勇者の件はバレてはいけなかったのだ。人間以外の種族が多く信仰している宗教がまさか魔王を倒そうとしていることが知られてしまうと宗教による統治を目的にしていることも知られてしまう。ペルソナリタ教の総本山はペルソナリタ教祖が統治している国ではあるが教えが違う。ペルソナリタ教は教えとして個性と人格を第一にしているので基本的に誰が教祖をしていてもこの教えがあるので統治に関して安心できる。

しかしコッソルソ教の教えは救済。救済は教祖が示すものだから。


「いないのじゃ、しかもコッソルソ教の教祖は現魔王じゃ、アクリルは破壊教団の団長にすぎん」


嘘だろ!!

だから人間以外の種族が多く信仰しているのか、そう納得もできた。

そしてとある可能性も出てきた。現魔王は背後から刺されることなく独裁することが目的ではないかと。


「魔王は人工勇者のことを知っているのか?」


そう問いかけをしようとしたところで急に後ろから気配を感じ、振り向こうとするが間に合わず視界は暗転した。

最後に聞こえたのは…


「知ってはいけませんよ、そんなこと」


アクリルの声だった。

自分の終わりをひしひしと感じた。

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