第3話

 彼女はいつも窓からやってくる。

今日も同じだ。


「吸血させて~」

「はいはい」


 俺の部屋に侵入すると羽を閉じる。にして俺の部屋は王城の五階にあるのでよくいつも侵入する時にバレていないことに関心する。


 俺はエキドナに首を差し出す。そしてエキドナはぷすりと歯を刺す。

昨日ほどではなかった。


「ぷはっ」

「そうだ、思ったんだけど」

「なに?」


 吸血が終わってからエキドナといつも通りベッドの上に座って話していく。


「マーキングってしてる?」

「...い、いや、そ、そんなことないけど?」

「してるな」

「そ、そんなことは...」


 俺は明らかに動揺をしているエキドナを押し倒して、


「してるな?」

「はひぃ」


 エキドナは顔を赤らめ、手で顔を隠す。

そして聞いていく。


「そのことは他の人にはわかるのか?」

「ま、待って!」


 エキドナは俺の言葉に待ったをかける。

一体どうした?と思うがハッとなって今の自分の状況を見ると、


「すまん」


 俺はエキドナから離れる。調子に乗りすぎてしまったな。

エキドナは息を整えながら起き上がる。


「魔王クラスじゃない限りはわからない、今の勇者ではわからないわ」

「そうか」

「で、その情報はどこで知ったの?」


 そこで俺は赤迫さんから教えてもらったと言った。


「なるほど、あの女か...で人質の件はどうするの?」


 ...やはり聞いてくるか。

しかし、ここで行きたいですは言わない方がいいな。


「行きたくないが、なりそうではあるな」

「へぇー、いいことを聞いた」

「思ったんだけど」

「なに?」

「人質になって、なにさせるの?」


 そう、これが一番気になっていた。正直、自分がエキドナにマーキングされているのはわかりきっていたことなのでさっきのは確認だ。


「そうわね、正直のところ、わからないわ」

「わからない?」

「そう、魔王様は人質を欲しているだけで、それを使ってなにかするのかまではわからない」


 つまり魔王は”転移者の人質”という存在を欲しいことか。


「なるほどな」

「でも危害は加えないわ」

「そうなんだ」


 てっきり洗脳して他の転移者と戦わすものだと思っていたが違うのか。いや洗脳とかされると戦うこともできるのか。危害を加えないことすら忘れさせれるからな。


「結果として人質として来てくれるの?」

「それはどうかな」


 転移してからクラスメートとろくに交流をしていなかったので自分が浮いていることは事実。でもまぁスキルのことはバレていないからメリットはあった。

 今回はデメリットが大きかった。


「別のことなんだけど」


 エキドナはこれ以上人質の件について触れても無駄と思ったのか話題を変える。


「最近、おかしな集団が事件を起こしていることは知ってる?」

「おかしな集団?」


 心当たりがない。最近、失踪事件が多発していることは知っていても。


「ええ、なんでも人工勇者を作ることを目的にしている教団らしくて人体実験とかしていると、まぁこの国は勇者や他の転移者にバレないように水面下で動いているけど」

「その教団の規模がわからないから自分たちにバレないようにしている」

「そういうこと」


 その教団からしてみれば勇者や転移者を実験できれば目的に大きく近づける。そして規模が大きければ転移者よりも強い者がいる可能性があり、転移者の中には自分が強いと思っている者がいるのでその教団を潰そうとして返り討ちに合い、実験に使われるのを避けたいのだ。


「そっちでもその教団によって事件は起きているのか?」

「ええ、そうよ。教団からすれば人工勇者は人である必要性はなく、魔王様を倒せればいいのだから」

「なんでエキドナがそんなことを知っているんだ?」

「こ、これは幹部だからよ」

「そんな機密の情報を俺に伝えてよかったのか?」

「......あ」


はぁ、でもまぁ、これで前から気になっていることが少しはわかった。

なぜ吸血鬼王の娘であるエキドナがをしているか?

吸血鬼は代々引きこもりであり、幹部になったという事例はエキドナが初めて。そしてエキドナのやけに教団に詳しいことを鑑みるに。


「エキドナは昔、その教団にいたのか?」

「!!!」

「そして魔王様に助けてもらった」

「......」


 正解していると思ってエキドナの表情をじっと見ていると、


「はぁ、そうよ、でも教団にいたのでなく攫われたけど」


 エキドナはため息をついていた。エキドナからすればいやなことを思い出す可能性があるからな。


「幸せが逃げていくぞ、せっかく美人なのに」

「美人と言ってもらって嬉しいけれども、よくわかったね」

「まぁな」

「ということで気を付けてよ、攫われたりすると、さ、寂しいから!」


 エキドナはそう言って窓から飛んで行った。寂しいということを恥ずかしがりながらも言えるエキドナには驚いてしまう。

 それよりも人工勇者を作ろうとしている教団か。調べものができたな。

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