第2話
「んんっ」
俺は起きる。
当たり前のことだが部屋のどこにもエキドナはいない。
良かった。だってこれからスキルの確認をするのだから。
モブな俺が持つスキルは四つある。
それは『スキル偽名』『不眠』『不食』『一瞬』である。
もちろん、『スキル偽名』を使い、鑑定などのスキル鑑定の対策として『不眠』以外隠した。
しかもスキルの説明欄ですら変更できるのは助かった。
『不眠』‥寝る必要がない。睡眠による悪影響を受けない。
↓
『不眠』‥一定の時間を寝ると一日寝る必要がなくなる。
に偽造した。
これによって俺がどの分野にも使えるスキルではないことが周知されたため、こうやって王城でのんびり過ごせているのだ。
さすがにスキルが四つ以上あるのは勇者と自分しかいないので、もし四つあるとバレ
てしまったらモブではなくなる。
そして『一瞬』だけはエキドナにもバレてはいけない。
『一瞬』‥行動を一瞬でする。行動は一回。不可能なことはできない。代償はランダム。
というのであんまりパッとはしないが強いスキルではある。例えば一瞬で逃げると思えばその場から数キロ離れたところまで移動していた。
しかも代償は普段はクールタイムなので今のところ危険はない。
コンコン
ノック音がする。
「どうぞ」
「失礼します」
メイドさんが入ってきた。
「陛下から王城にいる転移者にお呼び出しがかかっています」
これは何かあったな?引きこもりの俺を呼ぶほどに。
「すぐ向かう」
「はい、失礼しました」
パタンとメイドさんが部屋から出ていく。
もし自分のスキルやエキドナのことなら結構まずい。が王城にいる転移者なのだから全体に向けてなのでそのことではないだろう。
そう思いつつ、部屋を出た。
俺がつく頃にはほとんど来ていた。
そして檀上には王様が側近と何か話して、準備していることがわかる。
そこから数分後に部屋が少し暗くなり照明が王様の方に向けられる。
「実はな、勇者パーティが先の四天王の吸血鬼のエキドナ戦にてなんとかして勝ったが、勇者パーティが重症を負ってな...」
王様は少しためらい、告げた。
「魔王側は勇者が回復するまでの期間、侵略をしない代わりに人質を要求してきたのだ」
ザワザワし始める。
でも人質要求か...なんかありそうだな。
「しかもそなたたち転移者ということになっている、そちら側で一人か二人、候補を決めておいてほしい、時間は明後日までだ、申し訳ない」
王様は頭を下げる。
転移者は誰にするかで、より一層ザワザワし始めた。
俺はそんな状況を横目に部屋に戻った。
どうせ俺には抗力がないのだから。
部屋に戻ってからはベッドの上で呆けていた。
わかっている。きっと人質になるのは自分だろうと。
でもよかったかもしれない。
エキドナに言われる度に俺は悩んでいた。そのことを知らないふりをしてきた。
コンコン
「どうぞ」
誰かが入ってくる。
「お邪魔します」
「え、
入ってきたのは勇者パーティの一員である赤迫桜さん。
意外な人物が来たので驚いてしまう。
「赤迫さんか...昔みたいに桜って呼んでくれない?」
「無理」
そう赤迫さんとは幼馴染だった。でも進学してからは桜と呼ぶことをやめた。
自分がモブであると思ったから、赤迫さんが過去の記憶によって行動を縛られるのを見たくなかったから。そして勇者とも仲が良いと聞く。なら俺は波を立てずに逃げればいい。
「それで本題は?」
わかっている。どうせ。
「このままいけばあなたが人質になるわ」
だよな。
転移する前から俺はできるだけ人との関係をあまり持たないようにしてきた。
だから今、仲が良いといえるのは人ではないがエキドナしかいないのだ。
「驚かないんだ」
「薄々わかっていた」
「ならどうして何もしないの?」
...それはエキドナが誘って、素直にあっち側に着くことに抵抗があったからだ。
もしここで人質になって寝返っても人質として差し出したのが悪いという自分の中で免罪符があると思っているから。
「...疑うようで悪いけど、ここ最近、なぜかこの王城で魔王の四天王クラスの魔物が感知されてたって聞いた、でも誰かが負傷したということはない。もしかして...誘われてる?」
「どういうこと?」
とぼけることにした。エキドナの存在がバレた瞬間、俺は逃げることしかできない。そして赤迫さんが言っていることが事実だが、俺である証拠はどこにもない。
それはただの推測でしかない。
「そうね、そうね...私個人としては人質になってほしくないけど」
「それは過去から来るものだろう?」
赤迫さんに一度告白された過去がある。でも俺は断った。
そのことが関係しているだろう。
「...なんでそんなこと言っちゃうのかな?もし人質になって、百%生きれる可能性はないんだよ?勇者の
このペースでいっても魔王のところにたどり着くのは一年以上かかるだろう。そしてエキドナはまだ生きているから、また戦うことになる。その期間の間、人質になるということでも...あの王様、嘘ついたな。本当は勇者の怪我が治るまでじゃない。
勇者の怪我が治っても人質は解放されることはないだろう。
だって赤迫さんは『人質を助けるまでの期間なにされるかわからない』ということを話している。そうなら人質になる期間は無期限ということになり、実際その場にいたであろう赤迫さんの話の方が信憑性が王様よりも高い。
「そういうことか」
王様が嘘をついたのは、期間がわかっている方が志願する人の可能性が高いと考えたのだろう。王としてなら正しい判断だな。国のためなら
でも当事者の俺らからは素直に納得できないだろう。
「え?」
「王様の説明を聞いた?」
「聞いてないけど、王様からは『説明をしておく、人質になろうとする人がいないと思うが、多少強引にしてしまうかもしれない、先に謝る、すまない』だって」
聞いてないのか。一々王様が言ったことを伝えるのも面倒だ。
...そういえば、
「そうか、話変わるが、吸血鬼のついて知っているか?」
「え、吸血鬼か...私が知っている限りでは...」
赤迫さんは吸血鬼について説明してくれた。
・昼間だと本来の二割しか力を出せないこと
・吸血するにも相性があり、相性がいいと吸血した時の効果が強くなること
・吸血した時の効果は傷を治したり、リラックスさせたりなどをすること
・吸血する相性がいい時は何か特別な関係、思いがあること
・吸血鬼は侵略を好まず、エルフと同じように一定したところで住んでいること
・吸血鬼の中にはマーキングができるのがいること
「ありがとう」
「これからのことについて会議があるから、また会おうね」
「...そうだな」
赤迫さんが部屋から出ていく。
俺はベッドの毛布を抱く。
え、え、エキドナは俺に対して何か思っているの?!
きっと何かが理由で吸血されてると思っていたけど...でもなんで俺なんだろ?ほかの人にそういったあてはまる人がいないのかな?
そんなことを思いながら夜を待った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます