12月23日 寄託の仏像と向き合う

 雪のち晴れ。

 合同研究室に一体の仏像が持ち込まれた。真宗(お西)の阿弥陀像であるが、光背が大きく破損し、台座も何か所か大いに破損して倒壊寸前であった。当然、仏像をそんな不安定なところに立たせておくにはいかず、寝かせたおいた状態であった。

 本当ならば、この日のゼミは違う内容をやる予定だったようだが、院生から仏像が持ち込まれたことを聞いたので拝見したいとこちらが所望した結果、授業で拝見することになったのである。

 この像は元来他専攻の先生のご実家の寺院に眠っていた像だったらしく、せっかくなのでということで持ち込まれた。まあ、何もせず仏像を腐らせておくにはあまりにもお粗末だ。だからこそ、どうにかしたい気持ちが持ち込んでくださった先生にはあったと想像せられるが、しかしながら持ち込んでいただくことは実に殊勝なことでこの上なくありがたいことであった。

 最後に調査に同行した日以来久しぶりに仏像を手に取ることになった。よくみると、やはり江戸クオリティーではあったが温もりはなんとなく感ぜられる。ただ、この温もりの下には後から塗られた膜がある。はじめは気づかなかったが、先生の指摘で気づかなかったことに関して、変な感受に酔いしれていて恥ずかしい気持ちになってしまった。

 仏像と長いつきあいになるが、変な癖がついているとうすうす気づいている。ロマン性をどうしても求めようとしている自分がいることに感ぜざるを得なかった。このロマン性は、意図的なものかといえばそうと言い切れずむしろ無意識なものになっている。この悪癖は取り除かないといけないわけだが、なんせ10数年でできた癖だ、簡単にとれない。その克服方法について考えているが、現時点では「仏像そのものをありのままに見ること」しか見つかっていない。探さなければ。

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