第6話 イワノフのウクライナ紛争処理策
士気と兵站のまずさから、東部でもウクライナに押されていたロシアではあったが、ロシア東部の軍事資源投入に打って出た。また、南部クリミア半島にはセヴァストポリ軍港設備があり、失うわけにはいかない状況で必死の反撃が続いた。お互いに航空優勢のない状況下、地上最前線ではスターリングラード攻防戦さながらの市街戦が続いた。
初期には強力な軍事支援をつづけてきた西側諸国も、戦線が膠着するようになってからは次第に興味を失い、またエネルギー資源の再開発、石炭火力の活用などによりエネルギー危機は一時の切迫状況からは脱しつつあるように見えた。西側のマスコミも時折、戦況を伝える程度にとどまり、またそのいっぽうで、戦闘は一向に終わりそうになかった。また、エネルギー危機は切迫状況にないだけであって、いつもそこにある恐怖であり、エネルギー価格の高騰は続いた。
ウクライナは穀物輸出の本格再開と国内インフラの立て直しに注力し、輸出入バランスをとるとともにかつての軍需工場で大量に軍事物資を生産しており、ロシアはひっ迫する国内情勢のもとでも、使えるものは何でも動員する強引な手段に出ていた。なかでも電子誘導兵器は先端電子部品を輸入できないロシアは、量産すらままならない状況であった。旧来の無誘導兵器をつかわざるを得ない。
プーチンは、ロシア通貨のレートを維持するために利上げを続けた。利上げは信用不安と物価高を招き、ロシアがためた巨額な資産は流出しつづけ、国内は大インフレの様相を呈してきた。だが、強権的な政治力をもって反対勢力を抑制し続けた。本来、通貨レートを維持するために利上げを繰り返すのは成長率を下げる原因である。従って、市民はひっ迫する物資供給を求めてデモを繰り返したがそのたびにプーチンは力の政治で押さえ続けた。
イワノフは経済理論家と話し合いを続け、このままでは国家破綻を免れかねないとの結論に至った。戦争は早期に終結すべきだが、プーチンの暴走を止めるにはどうすればよいか。
やがて、イワノフは結論に至った。
それは戦術核の有効活用である。できるだけ、小規模な人的損失にとどめ、核の使用責任をプーチンに背負わせる。新生ロシアは、プーチンを国際裁判の名のもとに政治的失脚に追い込み、西側諸国との協力を約束する。それとともにウクライナとの和解を画策して新政府発足を宣言する。各種新興財閥とはあらかじめ結託しておく。さらに詳細な検討が必要だ、とイワノフと周辺でうごめく人物たちはそう思った。
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