3年後の生活
マイケル達が帰ると、残っていたカラーズ全員が迎えた。
もう、ギャング団としての仕事しかしていないのだ。
ゴミ漁りや、スリはやらなくなっており、仕事がない者達は小屋に残っていることが多かった。
「今日の仕事も上手くいったから結構金が入ったぜ」
マイケルが、みんなに金の入った封筒を、振って見せびらかす。
「今日は豪勢にいこうか」
マイケルがそう言うが、まとまった金が入った時はいつもこうである。
「やったー!」
しかし、いつものことながら、みんな喜ぶのだった。
「誰が買い出しに行く?」
その声に、マシューが手を上げる。
「俺が行くよ。今日はずっとここにいたしな」
「じゃあマシューと……ジェイクいいか?」
何故だか買い出しになると、マイケルはジェイコブを指名することが多かった。
その理由は、ジェイコブには全く分からない。
「ああ」
だが、断る理由はないのだった。
何故なら、マイケルの頼みだから。
「なら私もいくわ」
そして、何故だかエミリーも付いてくることが多い。
その理由もまた、ジェイコブにはわからないのだった。
「じゃあ頼むよ」
エミリーはマイケルから金の入った封筒を受け取ると、そのまま小屋を出る。
マシューもジェイコブも、それに続くのだった。
「しっかし、本当にでかくなったよなジェイク」
ここ3年間で、ジェイコブが成長したように、当然カラーズの面々も成長はしている。
しかし、マシューとオリビアだけは、身長がそれほど伸びなかった。
オリビアの方は気にもしていないが、マシューはやはり、とても気にしているのだった。
マシューの言葉に、ジェイコブは苦笑いをする。
「まだ成長期だからマシューも伸びるわよ」
エミリーがマシューのフォローをする。
実際に、マシューはまだ14歳であるのだから、成長の余地は大きいだろう。
「それ3年前にも言ってたろ」
それでも、3年間ほぼ身長が変わらなかったという事実もあるのだ。
マシュー自身、どうしたって背が高くなっていく仲間を見ると、焦らざる負えないのだ。
特にジェイコブなどは、元はマシューより背が低かったのだから。
そんな風に団欒をしながら歩いていると、すぐに商店街へと着いた。
「着いたぞ」
ホワイトライトストリートだ。
今となっては、カラーズは街に普通に買い物に出る事はある。
だが、近いというのもあるが、ホワイトライトストリートはカラーズに昔から良くしてくれているというのもある。
恩返しと言うわけでもないが、買い物は、積極的にここに来ることが多かった。
「おう!カラーズのガキ共じゃねーか!寄ってけよ!」
ジェイコブ達が少し歩くと、雑貨屋のカーソンが声をかけてくる。
「ちょっと行ってくらあ」
マシューがそう言って抜けた。
「おう!エミリー。見てくかい?」
次に、本屋のグレイソンが声をかけてきた。
「……見ていくわ」
エミリーは、何かに少し迷ったようだったが、結局本屋へと入っていった。
ジェイコブは一人、取り残される。
「ジェイク!来て来て!」
そして、ジェイコブにも声がかかる。
花屋の娘のリリーだ。
同時に手を引かれるが、ジェイコブはびくともしなかった。
「ああ」
だが、金の入った封筒を持っているのはエミリーである。
もちろん、少しくらいはジェイコブにも手持ちはあるが、全員の食事を買う程には持っていなかった。
「いらっしゃい」
手を引かれるままに花屋へと入ると、リリーの父親のアンソニーがにこやかに挨拶をした。
「どうも」
ジェイコブは返事をして、少し頭を下げる。
「今日は花買って行く?」
リリーにそう聞かれるが、ジェイコブに花を買う予定はなかった。
いつもは、母親の墓に寄る時だけ買って行っている。
だから、リリーと仲良くなってしまったわけだ。
今日は、買うものが多そうなので、母親の墓に寄る予定はなかった。
「いや……」
「そう!でも次買う花を見て行ってね」
リリーは無駄に元気である。
その笑顔に押されて、ジェイコブはしばらく花屋に滞在をしたのだった。
「それじゃ」
「うん!また来てね!」
ジェイコブは、ほどほどの所で花屋を出て、エミリーとマシューと合流する。
「随分楽しそうだったわね」
エミリーがそう言う。
しかし、ジェイコブにそんなつもりはない。
母親の為に花屋に寄っているだけで、花が好きと言うわけではないのだから。
「おいおい……さっ!肉屋に行こうぜ!」
なんだか少し暗い空気を、マシューが一言で吹き飛ばした。
「そうだな」
そして3人は、ホワイトライトストリートで買い物を済ませると、小屋へと帰宅したのだった。
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