保育士として生きる破壊者。
第15話 保育士としての始まり。
ズエイは不在だが仕事はある。
ゲーン探索団は手元にある神のカケラの育成をメインに行う事になる。
「育成とは何をする?」
「今説明するよ」
案外せっかちなクオーに呆れ笑いのダムレイがメンバーを集めて「よし、旦那が居なくてもやる事は変わらない。今日は西のゴブリンの洞窟に狩りに行く。ボラヴェンは警戒、サンバ達は護衛、イーウィニャ達は腑分けをやるんだ。俺とハクとクオーで中に入る」と言った。
皆頷くとすぐに準備を始める中、クオーは何をしたらいいのかわからずにいるとハイクイが「はい、クオーは行くまで荷物持ち。帰りは各々が持つよ」と言って荷物の入った籠を渡してくる。
籠は洗われていたがそれでも臭かった。
外に出ると羨望と嫉妬の目に射抜かれた。
思い当たる節のないクオーにダムレイが「気にすんな。Aランクが珍しくて、俺たちのシータの名前と匂いから違うメシを妬んでるだけだ。もし殺しに来たらカケラを使わずにぶちのめせばいい」と説明をする。
「殺すのかい?」
この問いにハイクイが「殺さないの?」と聞き返す。
クオーは団員を見て困り顔になると「罪になると皆に迷惑がかかる」と言う。
思った返しと違っていた事に少し驚いたダムレイの横でハイクイが「平気だよ。この街ではカケラの使用と兵士達の目の前、現行犯以外に捕まえる方法はないよ」と説明をした。
暫く進むと街は数日前とは明らかに違っていた。
「何か…違わないだろうか?」
「全部クオーの活躍のせいだな」と言って楽しそうに笑うダムレイの後でボラヴェンが「クオーが凄いのに他の大人は役に立たないって怒った連中が訓練って言って死ぬまでボコボコにしたんだ。その時に大人もやり返すから少し人が減ったんだよ」と説明して、ケーミーが「連合決死探索団はソンティンとプラピルーンの二大柱を失ってガタガタのところに大所帯が自慢のレギオン探索団が攻め込んで統合しちゃったからね」と話す。
「…それは…良い事なのかい?」
「良いも悪いも無いよ。普段は小競り合いで済むけど今回みたいに損害の大きい時は乗っ取りも起きるんだ。普段はどこの連中もやり合って弱った所を他所の奴らに狙われたら困るから大人しくしてるんだけど、そんな当たり前をクオーが壊したから少し街の中がスッキリしただけ」
「成る程、だが妬まれるという事は不在時に棲家を狙われたりしないだろうか?」
「それ、平気。皆、睨み合い。潰す理由、なるだけ」
サンバの説明はなんとなくしかわからないがサンバの横のキロギーが簡単に説明をする。
最後の希望は皆がそれなりに平和に過ごしたく、争いの火種を持ち込む輩には無視と同時に一丸となって潰す名目になる。
仮にゲーン探索団の棲家を狙って火を放とうが必ず目撃者は居て報復は不可避なうえに、庇おうが何をしようがバレるので関わるだけ損をするという話だった。
「それに盗られて困る物も焼かれて困る物も無いよ」
「本当、いい家見つけたらそっちに住むだけだしね」
「まあ、ズエイの旦那は怒って報復するだろうけどね」
話をしていれば街を離れていて「警戒しつつ聞いてもいいかい?」とクオーが言った。
ハイクイが「何?」と聞き返すと「最後の希望には…、ほかにズエイ・ゲーンのゲーン探索団のように大人の庇護化にある探索団はいるのかな?」とクオーは質問をした。
「まあボチボチと。この前の決死…連合決死探索団は大人の指示に従いたくないって好き勝手やってたから大人の保護はないよ」
ハイクイの説明が終わると同時に耳のいいイーウィニャが「なんか来る!」と声を張る。
すぐにボラヴェンが「化け羊!大きいよ!」と伝えるとダムレイが「ハク、クオー、早速で悪いが仕事だ」といった。
「ボラヴェンとイーウィニャの索敵なら会敵まで2分。クオー、アンタの質問に答えてやる。カケラは使うと早く育つんだ。それも戦いで使えばなお早い」
「わかりやすくて助かる。では向かってくるものを全て潰せば早くコイヌをジン家に連れ帰れるね」
クオーは穏やかな顔から破壊者の顔になると「皆、離れてくれないかい?」と言いながら柄だけになった鉄塊を構えると「いくぞ…魔神の身体!」と言い赤い光を柄に集めていく。
そして前方から走ってくる大きな羊に向かい鉄塊をフルスイングをする。
正面衝突。
普通の人間ならば押し負けて吹き飛ぶ状況でも吹き飛ばず、腕や鉄塊がひしゃげる場面でもクオーはモノともせずに力を込めると「ぬぅぅぅっ!」と言って化け羊を宙に飛ばしてしまった。
「…マジか」
「凄いや」
「今の音…耳が痛いよ」
「本当、耳自慢だからキツい」
皆が驚きを口にする中クオーだけは「どうだろうか?」と言って普段の謙虚なクオー・ジンに戻ってしまう。
化け羊は頭か首が破壊されたのか一撃で絶命していた。
ダムレイが化け羊を見て「上出来だけど…どうすっかな」と言う。
「ダムレイ?」
「化け羊って肉屋に売るといい値がつくんだ。売り飛ばしてズエイの旦那に儲けがいくと飯が豪華になってコイツらが喜ぶ」
クオーはキロギー達を見て「それは行かなければダメだね」と言う。
「だが仕事の時間もあるんだよ」
「ふむ。この羊は私くらいしか運べまい?なら土地勘と肉屋との面識のある者を帯同させてくれればその者と一度最後の希望まで戻ってこよう」
仕方ないと言って最年少のアンピルがクオーに着いて行くこととなった。
「へへ、クオー。よろしくな!」
「こちらこそよろしく頼むよアンピル」
アンピルは人懐こい子供で道すがらずっとクオーにジン家での暮らしや字を習った時の話を聞いて「俺もさ!アンピル・シータになったから習えるよね?クオーが教えてよ!」と言う。
「ああ、勿論だ。アンピルは勉強を楽しめそうだから私よりも字が綺麗に書けるようになりそうだね」
最後の希望に着くと真っ直ぐ肉屋を目指したが化け羊の巨体を持つクオーは人目を引くのでアンピルは我が事のように「クオーは真っ向勝負の一撃で化け羊を吹き飛ばして格好いい!俺も鍛えてクオーみたいになる!」と自慢して歩く。
周りからは眉唾物と思われていたが肉屋は「…な…なにをやった?身体に目立った外傷も損壊もない。食べられる部位はどこも傷んでない」と驚きを口にしてクオーは「鉄塊で真っ向勝負をして打ち勝ちました」と気恥ずかしげに説明をする。
目を丸くする肉屋にアンピルが「…おっちゃん。ゲーン探索団だからね。キチンとズエイの旦那につけてよね」と口を挟むと肉屋は「勿論だ。凄いな。また頼むよ」と言って笑った。
肉屋を後にしたクオーはアンピルに「破壊者としての力が役立って私は嬉しいよ」と言いながらゴブリンの洞窟に向かった。
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