第14話 ズエイと王都。
ズエイは本土に渡りツテを使ってジン家に赴く。
当初怪しまれたがクオーの手紙とリユーの遺品、そして末弟のズオー・ジンに話した事で歓迎を受け、そしてクオーの武勇伝を聞くと家族は皆自慢の男と言ってズエイを受け入れた。
そしてクオーが用意したBランク3個の神のカケラを見て家族は皆「ジン家はこれで救われた」と言って遠い地から帰って来れないクオーに感謝をした。
もてなしの席でクオーの手紙を見ていたズオーはズエイの元に行くと「ズエイ・ゲーン。兄上から「ズエイ殿は金銭に真摯な方。キチンと御礼をするように」と書かれておりました」と言う。
ズエイはクオーの父を呼んでもらい謝礼の話をする。
「本来ならジン家にも謝礼の話をする為の先行投資とクオー氏にも話しておりましたが、余りにもクオー氏のもたらしてくれたモノが大き過ぎてジン家の皆様には大それたお願いは出来ません」
「…それはありがたい事ですがクオーの手紙にもキチンとズエイ殿に御礼をするようにとありました。キチンと申してください」
「…ふふふ。ありがとうございます。それでは一つ、王都でのコネクション作りの為に一つお願いをしてもよろしいでしょうか?」
「…はあ、ですが我等は王都から離れた場所の貴族で御座いますのでコネクションと言われましてもご満足いただけるか…」
少し申し訳なさそうに話すクオーの父に「いえいえ、既にお会いしたい方は決まっております」と言ったズエイはキチンと「クーデターの件はクオー氏から聞き及んでおります。ジン家に神のカケラを持ってくれば不問にすると言った方への御目通りを…」と言った。
「それでしたら我々も御献上に行きますので一緒にいきましょう」
ズエイは深々と頭を下げて「ありがとうございます」と言った。
無論王都は混乱する。
程よくジン家を断罪し回避不能の罰を与え、クオーとリユーのミスでお家断絶に持ち込みたかった貴族達はまさかのカケラの献上に言葉を失った。勿論ズエイが買い付けたものではない事を証明したので誰も何も言えない。
ズエイは王都までの道のりで部下達に命じてジン家について調べさせたところ、閑職に追い込まれただけで元々のジン家は影の実力者で何をやらせてもそこそこ結果を出していて、それなのに無欲な為に懐柔は効果がなく、王の評価も悪くない。クーデターに参加したジン家が末席で周りに騙された愚か者だと判明していた。
扱い難いジン家を断絶させる為の出来レース。
それなのにクオー・ジンはやり遂げた。
疾風の名を持つリユーの死は意外だったがそれでも僅か20日でBランクのカケラを3つ持ってきたし、今現在クオーはAランクのカケラを育てている。非の打ち所がない。
しかも実直なジン家は逃げ道として欲望の島でズエイ達に金を積んでこっそりと買う方法もあったのにそれをせずに欲望の島でカケラを用意し仲介者で協力者としてキチンとズエイを王都に連れて行って紹介をした。
今、目の前にはカケラを持ってくれば不問に処すと言ったブァーリ・カーンと言う男がいる。
ズエイは恭しく挨拶をするとこれ見よがしにクオーの手柄をアピールして「無事にジン家を守れるように力を貸して貰えて良かった」と言い謝礼をもぎ取りながら値踏みをする。
ブァーリは露骨に迷惑そうな顔をするがキチンと謝礼を用意して渡してくる。
ここでブァーリという男の人となりの分かったズエイは踏み込む事をやめて恭しく挨拶をすると帰る事した。
儲けとしては悪くないが思った程の収穫はなかった。
そう思って帰ろうとしたのだが、ズエイ・ゲーンはパーティに呼ばれる事となる。
それは当初の予定通りジン家を追い込もうとした貴族も出席するパーティで、代わる代わる人々がズエイにクオーとリユーの活躍や欲望の島の現状なんかを聞き出そうとした。
貴族どもは神のカケラは欲するが汚い事には見向きをしたくない。
王国も国としてカケラを欲するが、それは国が管理して使用する場合で貴族が買うには税金が課せられる。
だからこそ知らずに噂のみを受け入れていたがジン家の話を聞き、ズエイを通せばコストパフォーマンスの高い神のカケラを手に入れられると踏んだのだろう。
その中にいたショーク・モーという貴族がジン家を糾弾し、平民に落とそうと言った貴族だった。
ショークは周りの貴族を追い払うと別室にズエイを連れて行く。
話の内容はクオーの活躍は本物であるか?リユーの死は本当か?そして神のカケラに関する事柄だった。
ズエイは一つずつ丁寧に説明していく。
クオーの活躍はクオー以外には有り得ない偉業だといい、リユーの死は目の前で確認をしたと理由も説明し、神のカケラに関してはどうしても国が管理している以上市場にBランク以上のカケラが出回りにくい理由を話す。
「もし仮に」
ショークの言葉に笑みを隠す事を心がけながら「はい?」と聞き返すズエイ。
「もし仮にゲーン探索団がカケラの優先供給をしてくれるというのなら私は専属の契約をしても構わないと思っている」
「勿論でございます。このズエイ・ゲーンはショーク・モー様のご希望に応えられますように粉骨砕身させていただきます」
これこそがズエイの求めていた言葉だがズエイは感謝だけで終わらない。
「ですが…、何故?とお聞きしてもよろしいでしょうか?後一年程お待ちいただけましたらクオー・ジンが一騎当千の力を身にして戻ります。あの男、僅か数日の付き合いでしたが忠義の心は誰にも負けぬかと思います。
恩賞も何も抜きで祖国の為に命果て尽きるまで戦うかと?」
呆れるようでいながら試すような値踏みをする目でズエイをみるショーク・モーは鼻で笑うと「お前は愚か者か?それともこの私を試しているのか?」と聞いてきた。
「いえいえ、ワタクシめがショーク・モー様を試すなど、ただワタクシも欲望の島に身を置く世俗に疎い商売人。いざ取り揃えてクオー・ジンがいるから不要となるといささか困ります故…。おこがましい願いにはございますが是非ともショーク・モー様のお口からお言葉を頂戴したいのです」
この言葉に「まったく」と笑ったショークは「私は一騎当千等という言葉を好かない。あくまで兵士は兵士、限りなく標準化していき、誰がいつ働いても同じ結果になる事を求める。そんな私からすればジン家の突出した力など邪魔でしかない。現に他の連中はジン家を神格化し特別扱いする始末。だからこそだ。ジン家が出来なかった時に「もうダメです」では話にならない」と言い切った。
それこそがショーク・モーがジン家を断罪し糾弾した意味だった。
恐らくブァーリ・カーンはただジン家を目障りな目の上のコブくらいの扱いだったのだろう。
だから戻ってきて忌々しいといった感情でしか無かった。
ズエイは「かしこまりました。それではこれよりこのズエイが持ち寄るカケラ達はショーク・モー様のご希望そのものとなると思います」と身振りで説明をした。
「その理由は?」
「簡単にございます。我がゲーン探索団は少数精鋭、故に出来上がるカケラにしても最低限のクセのみでございますので誰が身に纏おうが同じ扱いやすさになります。おそらく今買い付けているカケラは同じ物だとしても全てクセも威力もマチマチで兵士の皆様方には扱いにくい事でしょう」
「その言葉通りなら更なる標準化も夢ではないと?」
「はい。後はお値段のお話になるかと…」
ズエイは仲買人にCランクが1つ25万ジュタークで買い取られて居たが仲買人から城に入るときには何と60万ジュタークになっていた。
その辺りも想像通りの金額であったがそこはズエイも「優先的にご注文いただけるのでしたら」と言い、1個50万ジュタークで売り付ける事で契約を交わしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます