カケラと出会う破壊者。
第9話 力場。
力場が生まれた。
力場がどこにうまれるか場所も時間もわからない。
だが必ず3ヶ月に一度、満月の翌日に生まれる。
真っ暗な中、最後の希望を出たゲーン探索団は周囲に他の探索団が居ない場所で力場を探していた。
ダムレイが「ボラヴェン!悪い!踏ん張ってくれ!」と言ってボラヴェンは力場を探しながら「わかってる!見えた瞬間に伝えるから皆は走って!申し訳ないけど俺は今回も留守番するよ」と返す。
ボラヴェンは深夜から明け方になっても生まれない力場を探す為に一晩中休みなく大鷲の目を使って欲望の揺籠の中を見続けている。
「イーウィニャ!ボラヴェンの護衛を任せる。力場が見つかり次第ハウスまで連れ帰れ!」
「わかった!」
どうしても最後の希望では神のカケラの使用が認められない為に魔物の現れる欲望の揺籠で力を使う必要があるし、使った後の戻りを狙われてはたまったものではない。そもそも大鷲の目はランクは低いが重宝する神のカケラで、力場が生まれて慌ただしい時は最後の希望の中で万一襲われた時は罰せられる事を覚悟で証拠を抑えズエイへ連絡をする為に妖精の空耳を持つイーウィニャが護衛をする必要があった。
「ダムレイ!」
「なんだよクオー!?」
「新参が口出しをしてすまない!見つかった場合はどう動く?」
「あ?んなもん最短で行くんだよ!マリクシが黒豹の脚を使って最短を走る。後はなんとか踏ん張って貰ってる間に追い付くしかねぇ!カケラの複数持ちは命を縮めるだけでいい事がねえんだ!」
この言葉に「わかった」と言ったクオーは横のリユーに「リユー、疾風の名に恥じぬように駆けるんだ」と指示を出した。リユーは当然だという表情で「わかっている…任せろ」と返す。
それを聞いていたハイクイが「へえ、リユーは走るのが速いんだ。じゃあマリクシを頼むよ」と言うとダムレイ「ダムレイ、俺がクオーを引っ張るよ」と言う。ダムレイも「頼むハク」と言って会話を済ませてしまう。
ダムレイがリユーを見て「リユー脚自慢は期待してるぜ?」と声をかけると、リユーは肉厚の剣を抜きながら「任せろ。ここで結果を残しジン家を守る」と言って遠く地平線を見ていた。
リユーとクオーの頼もしさを見たハイクイは「クオー、新しい武器はどう?」と聞く。
クオーは屑鉄を寄せ集めただけの鉄塊を嬉しそうに持ち上げると「悪くないです。ズエイ・ゲーンの報酬の大半を頂いて良かったのか…」と困り顔になった。
芯に使った棒は上等な鉄だが周りは売りに出された鎧や剣なんかの屑鉄を寄せ集め物でズエイは「先日クオーの使ったハンマーはまだ使えたのに馬鹿力で再起不能になってたからな」と言って「芯さえ折らなければまた屑鉄を付けてやる。暴れろ」と言って部下に持たせた鉄塊を受け取ると深々とお辞儀をして「厚誼に感謝します。ズエイ・ゲーン」と言った。
ハイクイはクオーが鉄塊を貰った日を思い出しながら「いいんじゃない?別に報酬無くてもご飯は増えてるし。別に俺たち金なんて要らないし」と答える。
クオーは「ありがたい」と礼を言った後で「だが欲しいものは無いのかい?」と聞くと遠くを見たハイクイは「あるよ。今の俺たちにはどうやっても手に入らない物」と言った。
その顔は欲しいけど諦めを感じるような言い方と顔だった。
「教えてくれないか?」
「人間の証。俺たち、王国に登録されてない人間だから因縁つけられたら何も出来ずに牢屋でも殺されるでもできちゃうから人間になりたいんだ」
クオーは突然の事に「…人権…」と聞き返すとハイクイはクオーを見ずに「うん。それ」と答えてから少し嬉しそうな顔をした。
「でも他の奴らは気配すら無いけどゲーン探索団にはその気配があるんだ。どんなカケラでもいいから10個、10個を育ててズエイの旦那に渡せれば人間にして貰える。俺は人間になれたらハイクイ・シータって名前になる」
ハイクイは嬉しそうな顔で自分の手を見て「ハイクイ・シータ」ともう一度呟いた。
「シータ?」
「うん。ゲーン探索団の皆は人間になれたらシータの名を貰う。そしてゲーンの旦那の店で働いたりするんだ」
クオーは新たに知った街の話。
ハイクイたちの置かれた状況。
そして望む者と希望を知った。
「そうか。ズエイ・ゲーンは立派な男だな」
「うん。Bランクとかを渡して人になれたら渡したランクに合わせて金を貰えたり大陸で仕事を手配してくれるんだって」
「応援させてくれないか?」
「ありがと。でも今1番近いのはダムレイ。その次が俺、俺の後はサンバがリーダーだけど大丈夫か心配」
クオーは女性陣達に自分のそばを離れるなと指示をするサンバを見ながら「サンバは頼りになる男だよ」と言う。
ハイクイもサンバを見て嬉しそうに「そう?クオーが言うなら安心だ」と言って少し微笑んだ。
「俺たちは皆カケラを持ってるから良いのが見つかっても持てないか今の奴を諦めるか、無理やり持つかしか出来ないからクオーとリユーが頑張るんだ」
「任された。ゲーン探索団の一員として結果を残す」
ここでボラヴェンが「出た!近いよ!確実にマリクシなら1番が取れる!一時の方角!」と言い「誕生の光がここからでも見えてる!頼むマリクシ!行けリユー!!」とダムレイが言うなりマリクシが走り出し、その後ろをリユーが走る。
あっという間に姿の見えなくなるマリクシとその後ろを猛追するリユーを見てダムレイが「アイツ、本当に速いのな」と驚きを口にした。
「ボラヴェン!お疲れ!イーウィニャ!頼んだ!ハク!クオーと行ってくれ!俺たちは退路を確保しながら後を追う!サンバ!全周囲警戒しとけ!」
ダムレイの指示を聞きながらクオーが前に出ると「行くよ。邪魔な奴らは皆敵だ。相手もバカじゃ無い。何体か潰せば消える。でもカケラ持ちが何かしてくるから攻撃よりも回避を優先だよ。ケーミーが追い付いたら相手のカケラを覗き悪魔の眼鏡で見破るからそれから本格的に潰すんだ」と指示を出す。
「わかった。相手のカケラはどうする?」
「良い奴は貰っても良いけど変な癖がついてて扱いにくいから邪魔だし身体に悪いから大地に返しちゃえば持ち主不在で消えるよ」
クオーとハイクイが一気に走ると遠くから剣の音と悲鳴が聞こえてくる。
「リユーはいい仕事するね。斥候を殺してくれてるよ」
ハイクイの見ている景色には我先に力場を目指す連中が次々にリユーによって斬り殺されている。
「そろそろマリクシを殺そうとする奴らが来るから俺たちでそれを殺しながらクオーはカケラを見つけるんだ。産まれたてのカケラは持ち主を呼ぶ。保育士を選ぶんだ。声に従って」
頷くクオーにハイクイは「大丈夫。クオーならきっと特別なカケラだよ」と声をかける。
ハイクイはぶっきらぼうに見えて、気に入った仲間には優しい言葉もかけるし口数も多くなる。
クオーは「心強い言葉をありがとう。見事期待に応えてみせる!」と言うと穏やかな顔つきが消え、あのズエイが怯えた顔が出てきた。
鉄塊の一振りで向かってきた刺客のダガーナイフごと叩き潰すと止まる事なく駆け抜ける。
物言わぬ肉塊になった刺客を一瞥して嬉しそうに「凄いな」と喜ぶハイクイを見て「アイツ!ハイクイ!?ゲーン探索団の山鬼が出てきた!?」と驚く別の刺客にハイクイは「山鬼ね?俺は鬼じゃない。クオーが鬼だよ」と言うと山猿の毛の力で身軽に動いて相手を背後から斬り捨ててしまった。
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