第8話 葬儀。
歩きながらクオーが質問をする。
「ダムレイ、カイとシーカンとは?」
「この最後の希望の管理を任されてる子供だ」
「死んでも次の子供がカイとシーカンになるんだよ」
「世襲制なのですか?管理とは?」
クオーからすればこの街を見ると管理も何もないと思えてしまうので気にするとダムレイが「この街のルールは水に毒を流すのはNG」と言うとハイクイが「後は街の中で神のカケラの使用が禁止されているんだ」と続ける。
「それを破ると?」
「この街で殺して構わない敵にされる」
「まあ自分達の家で神のカケラを使うのは性能テストだよって言えばカイは文句を言わないよ」
ハイクイの説明にダムレイが「シーカンはうるせえけどな」と笑う。
ここでクオーが慌てて「では先程私を止めた時は!?」と言うと「だからバカって言ったんだよ」「家の中だから平気だよ」と返ってくる。
この会話でクオーは姿勢を正して頭を下げて「済まない」と言うとダムレイは「いいさ、それに見せてもらったぜ?」と言い、ハイクイも「うん。足と胃袋が台無しでスッキリした。コイヌも喜んでるよ」と言った。
「見てた?」
「ああ、ボラヴェンのカケラは大鷲の目で、ある程度の距離を見たり目の前に映せるんだ」
「だがそれをしては」
「性能テスト。カイにはそう言ってあるよ。ズエイの旦那が報酬から支払いしてくれたから問題なし」
「…すまない。感謝する」
「…お前、コイヌは俺たちの家族だからな?」
「娘って言ってたけどそこまでやるの?」
クオーは「当然だ。こんな破壊者を父と呼んでくれる娘なんてもう巡り会えまい」と言って本気で泣いていた。
クオーの涙を見たらそれ以上何も言えなかった。言えたのはハイクイが「とりあえずお葬式しようよ」と言い、ダムレイが「そうだな。シーカンにも支払ってもらったからきちんと送ってやろうな」だった。
家に帰ると外に祭壇が出来ていた。
祭壇は壊れた机とイスでみすぼらしいが最後の希望ではまだ机も椅子も使える部類だがコイヌの為に祭壇に使っていた。
「コイヌ…戻ったぞ。父が怨みを晴らしてきたよ」
クオーはコイヌを抱きしめて報告をする。
コイヌは苦しみの表情から寝ているような優しい表情になっていた。
「それにこんなに綺麗な祭壇を用意してもらえるなんて果報者だ。インニョン達には私からお礼を言っておくからね」
涙ながらに話すクオーの横にインニョンが来て「敵討ちありがとう。これ、今晩のご飯。クオーのお菓子もあげるの?」と聞く。
クオーは勿論だと供えて手を合わせると皆が手を合わせてお葬式は終わる。
クオーは辺りを見て「どこに埋葬するのだい?」と聞くとダムレイが「いや、ここでの最上の葬り方は燃やすんだ」と言う。
「何!?大地で安らかに眠らせてあげるのではないのか?コイヌが熱がる!」
「違うよクオー。大地に眠ったらまたここに来ちゃう。火で焼いで二度とこんなところに来ないで済むようにするんだ」
サンバの「火は高級、だけどダムレイが、シーカン、頼んだ」と言う言葉にキロギーが前に出てきて「俺が燃やすんだ」と言った。
「神のカケラかい?」
「うん。俺のは火龍の吐息だからね」
「…少し待って欲しい」
クオーは皆の了承を得るとコイヌの短い髪の毛をひと束貰い「コイヌ、お前の毛は私がジン家に連れ帰り埋葬する。だから次はジン家に生まれてきてくれ。熱いが頑張ってこの地を離れて欲しい」と声をかけるとキロギーに頭を下げて「頼む」と言った。
キロギーが手をかざすと掌から火炎球が飛び出して祭壇ごとコイヌを焼いた。
それは夕飯ごとで周りからは「もったいない」「バカか?」と聞こえてきていた。
葬儀後、夕飯の席では改めてクオーが強くて怖いという話になっていた。謙遜するクオーにハイクイが「ねえクオー」と声をかける。
クオーは先程までとは変わり、穏やかな物腰で「なんだい?」と聞き返す。
「クオーは子供も殺せる?」
突然の質問に「ハイクイ?」と聞き返すとハイクイは「力場では奪い合いの殺し合いだよ。ゲーン探索団以外は皆敵。無力化に意味がないんだ。殺してくれないと皆も危険になる」と言い、ダムレイが「だな、中にはコイヌくらいの歳から欲望の揺籠に送り込む奴らもいる。殺せるか?」と意思の確認をした。
クオーは否定するかと思ったが「殺せる」とハッキリと言う。
これには横に居るリユーもホッとした顔をして「流石はジン家の男、キチンとジン家の為に…」と言ったところでクオーは「私は一日も早く帰ってコイヌを埋葬したい。そのための障害は全てこの腕で取り除く」と言った。
リユーは呆れたが、ダムレイ達は嬉しそうに「信じるぞクオー」と声をかけた。
翌朝、ハッピーホープの外れだがよく目立つ場所にあの兵士は捨てられていた。
両足がぐちゃぐちゃになっていて鎧は何で貫かれたのか腹の所が破けていて取り出された胃袋は握りつぶされて足元に捨てられていた。
引きちぎられた両腕にはちぎれた片耳が握られている。
この兵士がゲーン探索団のコイヌを理由もなく蹴り殺した事は周知の事実でズエイ・ゲーンが手下をやられた仕返しをした事は一目瞭然だったが証拠がない。
そして神のカケラを使えば痕跡が残る御守りを身につけていたのに御守りには何の痕跡も無かった事、それなのに尋常ならざる力で破壊された姿に周りの人間もズエイ・ゲーンに手出しは出来ないと再認識した。
この結果にズエイはご満悦で「ふふふ。得られた効果で黒字になってしまうな。あの2人は何処まで金になるやら」と笑っていた。
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