娘と出会い別れる破壊者。
第4話 コイヌの死。
コイヌが死んだ。
コイヌに罪はない。
コイヌだったのは幼かった事、
それと笑顔が気に食わなかった事、
後はゲーン探索団の子供だった事。
それだけだった。
わずか6つの少女は王国の兵士に蹴り殺された。
リユーとクオーがゲーン探索団に入って3日目のことだった。
最後の希望は力場の発生に備えてピリついていた。
それはクオーとリユーが欲望の島に来た日に乗っていた一攫千金を夢見たゴロツキ共がわずか3日で6割が路地裏で犬の餌になっていた事からもわかった。
ゴロツキ共は子供達を見下して馬鹿にして大人だから、力が強いからと力で抑え込もうとして街の流儀を無視した結果、片っ端から闇討ちされ仕返しをされ毒殺をされた。
ゴロツキ共は見せしめに半殺しにして言う事を聞けと迫るが子供達は容赦なく殺しにかかる。
その結果は見ぐるみを剥がれて路地裏に転がされていてトドメは野犬に食い殺されていた。
これは当たり前の光景らしく死体処理の仕事をしてきたコイヌが「仕事してきたよー!」と帰ってきた時にクオーは委細を聞いていた。
「コイヌはまだ子供だから神のカケラを持って死んじゃうと困るからってダムレイが赤ん坊のお世話とか死体を片す仕事をしてて良いって言ってくれるの!」
クオーが驚いているとダムレイは「飯食うのもタダじゃない。綺麗事は島の外でやれ。アンタ達だって先行投資とズエイの旦那からの肉と菓子の支援があるから許されてるが本来なら仕事をさせてる所だ」と釘を刺してきた。
「今はダメだよー。大人は外に出れないよ」
コイヌの言葉にクオーが疑問を持った事を察したダムレイが「今は大人共は俺たち子供から狩られているからな。助かる為には軍門に降って下働きからだ。誰の持ちもんかわからない大人やこ綺麗な大人は狩られるんだよ。それにどこの連中も力場でいいランクを得る為に手駒が欲しいからな」と言った。
コイヌとキロギーは基本的にリユーとクオーを歓迎している。
それは飯に肉と菓子が付くようになったから、それはリユーとクオーを面倒見る対価としてズエイが支給してくれる事をダムレイが言ったからだった。
だがダムレイは「よその奴らからのやっかみが面倒だから外で肉と菓子の話はするな」と子供達には命じていた。
今も念押ししたダムレイは「それでなくても俺達は恵まれてるから敵が多い」と言うとクオーが「恵まれている?」と聞き返した。
「アンタ、ウチをドン底だと思ってたら筋金入りのバカだ。この最後の希望で子供は消耗品の使い捨てだ。だがズエイの旦那は量より質を重んじてくれる。だから俺達はそこら辺のガキより全然良い暮らしをしてる。キロギーが毎日喜ぶあの肉なんて他所じゃBランクを育て切った時に一回食べさせてもらえるような代物だ」
クオーはこの言葉に愕然とした。
そして話の後でコイヌは「クオーお兄さんは大きいね」と話しかけてきた。
「私よりリユーの方が背は高いよ?」
クオーはニコニコとコイヌに返す。
「うん。でも大きいのはクオーお兄さん。お兄さん…良かったら抱っこ…ダメかな?」
「構わないよ。何がダメなんだい?」
そう言いながらコイヌを抱きかかえたクオーの背中でハイクイが「アンタ死んだよ」と言うとダムレイも「俺の仕込みでコイヌが毒針持ってたらお陀仏だよ」と続けた。
コイヌを見て愕然とするクオーが「そんな…」と言うとハイクイが「外でやるな」と言い、ダムレイが「やったら死ぬぞ?」と続けた。
そのままコイヌを見てダムレイが「コイヌ」と言うとハイクイが「ダメだって教えたろ?コイツが悪い奴だったら殺されてるぞ?」と注意をした。
コイヌは「でもクオーお兄さんは良い人だよ?」と言ってシクシクと泣き始め、父性への憧れを口にしていたのでクオーは「私は悪人ではない。ジン家の皆の為に生きねばならないがコイヌになら殺されても仕方がない」と言ってコイヌを抱きかかえてあやした上に夕飯の菓子をコイヌに渡していた。
この日の菓子は小さなクッキーだったがコイヌは美味しいと何回も喜びクオーに貰った一枚をクオーの腕の中で食べたいと言って甘えていた。
その油断があったと言われればそれまでだった。
水汲みに行ったコイヌはそこで兵士に蹴り飛ばされた。
コイヌを蹴った兵士は先日ダムレイに「顔を覚えられたいかい?」と言われた兵士だった。
戦闘力ではダムレイには決して敵わない。
場数が違いすぎる。
兵士が勝てているのは兵士の立場だけだった。
そしてダムレイの圧に負けた事を同僚にからかわれていた。
「退くくらいなら最初からズエイ・ゲーンの奴を呼べばよかったんだよ」
「バカだな」
そんな言葉に兵士は苛立った。
適材適所。
ゴミ溜めのような欲望の島にはゴミのような兵士が送り込まれる。
中には貧乏くじを引かされる奴や要領が悪くて送り込まれる奴も居るが基本的にはゴミのような兵士が送り込まれる。
好き勝手やれる代わりに魔物が闊歩する欲望の島に駐在する事になるのは危険だが、多少の事で騒がなければ子供達と繋がっているズエイのような経営者から破格で娼婦も男娼も好きにできたりする。
この地にクオーのような清廉潔白な兵士が送り込まれれば不審死が起きるし、王都に話が回れば余計な事が起きる。
だからこそこの兵士は好き勝手やれるこの島に順応していた。
だが理解できなかったのは子供達には無闇に逆らうべきではないと言う事だった。
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