第3話 保育士と子供達。
リユーとクオーを迎えたゲーン探索団の生活が始まる。
クオーは持ち前の協調性を活かしてすぐに皆と打ち解けたがリユーはプライドの高さからなかなか打ち解けない。
探索団の家に入った瞬間に神のカケラを探しに行くと言い出したリユーは女性に見間違えてしまうボラヴェンから「バカじゃないの?普段行ったってとれるのはCランクくらいだよ?なにも知らないんだからダムレイの話を聞きなよ」と呆れられてしまう。
顔を赤くして怒るリユーの前に出てボラヴェンを止めたのは2人の少女で「言い過ぎだよボラヴェン!」と注意をしてから「お兄さん!私はインニョンです!こっちは妹のコイヌ!」「よろしくお願いします!」と言ってくる。
リユーは流石に少女相手では「ああ、よろしく」としか言えなかった。
クオーがダムレイの前で「リユーが申し訳ない。確かになにも知らないから教えてほしい」と言うとダムレイが「神のカケラは3ヶ月に一度だけ欲望の揺籠に力場が開く、生まれるって言う奴もいるが意味は変わらない。その時には普段お目にかかれないランクのカケラが出てくるから狙うのはそれだ」と言う。
こうして改めてダムレイがクオーとリユーに何があったかの確認をする。
話の流れは昨晩ズエイから聞いていて知っていたのでさっさと必要な「Bランクが3個、Aランクが1個」の部分を引き出して「無理難題、テイのいい言い訳作りにされたな」と伝えた。
この言葉に「どういう事だ!?」と声を荒げるリユー。
クオーは「リユー、落ち着いてダムレイさんの話を聞くんだ」と言う。
ダムレイは「さん付けはいらねぇ」と言ってから「簡単だよ。力場が開いてもAランクはあまり出ない。出ても年に2回くらいだ。それを最後の希望の連中が奪い合う。まずは夢物語だな」と説明をした。
リユーは「ならBランクならどうだ!?」と聞くとダムレイは「まあ、希望は持ちたくなるよな。期間は?」と聞き返すとクオーが「1年半だ」と言った。
「まあ無理だな」
「何故だ!?」
「いちいちカリカリすんなって。俺達が何で保育士なんて呼ばれてるかって話だよ」
「そうだ、あのズエイ・ゲーンも保育士と呼んでいた…」
「保護をして育てるから保育士。神のカケラは拾ったばかりでは話にならないんだ。それを実用レベルまで保護をして育てるから保育士。Bランクなんて育つのに一年かかる。まず無理だな」
「なにをいう?俺にはクオーが居る。2人でやれば…」
「良くて2個。3個は無理だよ」
この説明が流石にわからないクオーにハイクイが「始めたての素人がBランクを2個持ちなんてできる訳ないじゃん」と呆れ顔で続ける。
「本当、何も知らないと怖いよね」と笑ったボラヴェンが「俺たちの中で1番のハイクイでBランクが2個持ち、ダムレイならBとCが1個ずつ。俺達はCなら2個、Bなら1個。ここのインニョンとコイヌでCが1個までだよ。それ以上は身体壊すよ」と説明をした。
この言葉が嘘ではないと理解したリユーは「な…、それでは故郷で我らを待つ母上と父上達は…」と愕然とするとダムレイが「残念だがハメられたんだよ。欲望の島と神のカケラを知らないアンタ達に現実を突き付けて絶望をさせたい奴がいる」と言った。
この言葉にリユーは崩れ落ちて震えていたがクオーは違っていた。
「なら何故ズエイ氏は我らを助けた?」
「お、良いじゃねぇか。ズエイの旦那はここで番狂わせで帰れたアンタ達はきっと評価を受ける事になる。そうすれば金になると踏んだんだ」
「成る程、では番狂わせとはどうすれば?」
ダムレイの中には何パターンかがあったが全てを言うわけにもいかない。
「次の力場に最短最速で辿り着いてAランクを見つけて奪え。そして即座に使って育て切れ。通常Aランクなんて2年くらいかかるが力場の度に奪いにくる連中をやっちまえば上手くいけば1年半も夢じゃねぇ」
この言葉に希望はを持ったリユーが立ち上がり「それは本当か!?」と聞く。
「ああ、出なければその次だ。3ヶ月分をなんとか取り戻す羽目にはなるが死ぬ気でやればなんとかなる」
この言葉に待ったをかけたのはクオーだった。
「だが、この島の島民は全て王国の民達だろう?それを殺すのは罪に…」
この言葉に無言で壁に立っていた大柄の少年が「罪に、ならない。我ら、人ではない」と言った。
クオーが「は?何を?」と聞き返すとダムレイが「アンタなんも知らないのか?あ、今のはサンバな」と言って大柄の少年がサンバと言う名だと教える。
ハイクイが「ダムレイ?コイツらめんどくさくない?」と不満を口にするとハイクイのそばにいたキロギーが「ダメだよハイクイ!お肉だよ!お肉!!」と言う。
ハイクイはため息交じりに「…わかったよキロギー」と言うと「ダムレイ続けて」と言う。
ダムレイは「悪いなハク」と言ってから「俺達は人ではない。人権がない」と言った。
「何?」
「神のカケラがどう使われるか知ってるかい?」
「医療、戦闘、さまざまなものに使われる」
「そう、島の外に持ち出せた神のカケラは奇跡のように使われる。だがそれは育った神のカケラだ。誰が育てる?育つって言っても人間とは違う。保育士がついてやってだ。誰がやる?危険が伴うのにやる奴がいるか?」
「…十分な報酬があれば…」
「バカだな。そんな金が払えるか?大人どもが払うか?ガキどもにやらせりゃ良いんだよ。この島の…ハッピーホープの女どもはな、皆返せない借金で連れて来られた。どんな金額でもここなら子供を3人産んでチャラになる。子供はここ…最後の希望に捨てられる。母親共は父親のわからないガキなんてどうでもいい、借金減らす為に喜んで捨てる。捨てられたガキ達が赤ん坊の世話をして食い扶持を得る。武器が持てる年になれば保育士になる。死んでもいくらでも替えがきく。それで端金と飯の種の為に俺達が神のカケラを育てんだよ」
まさかそんな事が行われていた事を知らなかったクオーは青い顔で「そんな…我らが王国が…」と言っている。「これが現実だ、受け入れて来週に備えろ」ダムレイに言われたクオーの代わりにリユーが「わかった」と答えた。
クオーは食事の場でも言葉を失った。
ジン家では残飯と言っても過言ではないものをキロギーはご馳走様と喜んでいる。
「お肉だ!」
そう呼ばれていたものは硬く臭い肉だった。
「ほら!ハイクイ!この人達が居るから旦那がお肉をくれたんだよ!」
嬉しそうに肉を食べるキロギーにハイクイは「わかったよ」と呆れながら言った後で「ダムレイの為だし、キロギーが喜ぶから受け入れる。肉の為に長生きしてよね」とリユーとクオーに言った。
クオーは友好の証に肉をキロギーに渡そうとした時、ダムレイから「バカにするな、やめろ」と睨まれて何も言えなかった。
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