第3話
見回りを終えて、一旦白雪と別れて里に戻る。しかし、少し騒がしい。いつもはまだ老人たちと一部の生真面目な働き者以外起きていない時間なのに既に大半の者が起きているようだった。
「何かあったのか?琉琉、ちょっと里の様子見てきて」
『了解』
琉琉が羽を広げて飛んでゆく。私はそれを見送ると取り敢えず自宅に走った。隠れ里といっても規模はかなり大きい。小さな村どころかちょっとした町並みだ。いちいち自分で走り回って情報を集めるよりも琉琉に見てもらう方が効率が良い。それに私の自宅は父である頭領の家だ。まず何かあれば報告が来る。
自宅前でうろうろと黒髪の少年が歩いていたが、私の靴音を聞いてパッと振り返り、その顔が笑顔で彩られた。
「あっ、姉様!お帰りなさい!見回りがつつがなく終えられたようで何よりです」
「出迎えありがとう。
出迎えてくれたのは私の弟の蓮俐。私の三歳下の弟なのだけど、とっても素直ないい子。十三歳なのにこの笑顔。可愛すぎない?
前世で一人っ子だった分、初めての兄弟に興奮して猫可愛がりしてしまった自覚はある。そのせいかやたら懐かれてしまった。いや、嬉しいんだけどね。
「里が随分と騒がしいようだけど、何かあった?」
「姉様が見回りに出られた後に使いの者が父上からの文を届けてくれたのです。どうやらあと数日で帰還とのこと。父上も他の里の者たちも大きな怪我もなく無事なようです」
「嗚呼なるほどそれでこの騒ぎか。でもまぁ、そうかぁ。父様がご無事なら良かった。これで私も肩の荷が降りる……。もう留守役はこりごりだ。次はどうせなら父様に着いてく方が良いなぁ。前も着いて行ったことあるし」
「それは駄目ですよ。誰がこの里を守るのですか」
「えー蓮俐がやればいいでしょ。というかお前も父様の、頭領の子なんだから一回ぐらいこの胃痛ポジ変われ」
「いくら姉様の頼みといえども嫌です無理です」
「残念でしたー。今まで見学ばっかで討伐経験も積まないといけないからどうせ蓮俐もこの役回り巡ってくるよ。だいじょーぶ、
頭領である父が里を留守にして早十日あまり。やっと帰ってくるらしい。
そもそも何で留守にしていたかって?簡単に言うと害獣退治なんだけど。その言葉では収まらないくらい割と大変だし命懸けだ。この世界、動物が普通ではない。それは散々言ったが、まだまだ序の口だ。異世界転生らしくこの世界は前世の私基準大分ファンタジーだ。
そもそもこの世界には獣の区分が大まかに分けて六つある。
まずは神獣。人間に神の言葉を伝えるために天界から神殿に現れる。天界っていうのは神様が住んでる世界。前世の日本でいう高天原的な?因みにこの国は多神教だ。元日本人としては馴染みやすくて有難い。おっと話が逸れた。えっと、それぞれの神にはそれぞれ決まった神獣がいて、仕える神から特殊能力を与えられている。普通の人間は彼らの声を聞くことはできないけど、神殿に仕える神巫、巫女は長年修行することで聞くことが出来るようになる、らしい。知らんけど。神殿とか国家権力が関わってそうなもの、まつろわぬ者である私たちが近づけないから詳しいことは全く知らないし、この話が本当かは知らないけどね。神獣とかとも私は話せるのかなって興味はあるけど試しようが無い。それに平穏で平凡な人生希望だから、わざわざ厄介なトラブルになりそうなことには首を突っ込まないのに限る。前世で見聞きした数多の転生主人公たちのように波瀾万丈な人生は真っ平だ。
おっと、神獣だけで長くなってしまった。出来るだけ簡潔に他の獣たちは説明しよう。
次は幻獣。神獣が役目を終え、天界から降りて人界で暮らす獣たちのこと。神獣の時に得ていた特殊能力を弱体化しているけど使えるらしい。今いる幻獣はほとんど数千数百年前に役目を終えて、人界で血を継いでいる子孫らしいけど、一応幻獣区分らしい。寿命が恐ろしく長くて人間の前に現れることは滅多にない。彼らから人間を襲うことはないが、彼らの逆鱗に触れれば容赦なく襲われる。人間の言うことに決して従わない。長く人界にいる幻獣は人間の姿に化けることが出来る、らしいけど真実かどうかはこれまた知らない。人間の言葉を理解しているけど、人間との言葉のやり取りは神巫や巫女以外は出来ない。まぁそもそも会わないから誰も確かめようがないけど。
三つ目は
四つめが
そして問題の五つ目と六つ目だけど。
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