どうしたんですか!?


 ぱく、とメイドホムンクルスの足付き靴下に神様がかぶりついた瞬間。


 ――ピシッと世界にヒビが入ったような衝撃が走った。


「ッ!? こ、これ、はっ!?」


 直後。靴下、メイドホムンクルスの足から口を離し、神様が青い顔をして後ずさる。


「……うぐ! か、身体が……」

「え、あ、れ? 神様? どうしたんですか!?」

「ぐるぐるとかき混ぜられているカンジがします……こ、この力……! ま、まさか!」


 うずくまる神様。そして、それを見たカオルが、ニィと口端を上げた。

 そして、カオルの髪色が徐々に赤くなっていく。


「よくやったわレナ。カリーナちゃんもお疲れ様」

「はい、我が主」

「……!!」


 その瞬間、私の頭の中に『混沌の魔王』とのやり取りが蘇った。


「混沌の……!!」

「ああ。もう良いわよ混沌神で」


 パチン、と指打ちの音を聞けば、私の記憶は更に鮮明になる。


 そう。私は混沌神に記憶を弄られ、返り討ちにされたメイドホムンクルスを『黒幕』として神様の下へ運び、神様相手に害となる仕込み靴下を捧げさせられたのだ。

 そうなるように、そうするように、混沌神によって操られていた。操られていることすら気付かないように。弄られていた。


 そうして、そんな私に騙された神様は、ホイホイと毒靴下を食べさせられてしまったのだ。


「大丈夫よ、約束通りこれからは私がSPの代わりもしてあげるし、相応のアイテムを作ったりしてあげる。錬金術の神様だもの、神器だって簡単に作れるし、神器を隠蔽するアイテムだって当然作れるわ」


 そうか、それでメイドを見た神様が「何の神器も持っていない」って判断したのか。


 実際は、混沌神お手製の本物の神器を108個持っている、神器の塊だったのだろう。その中に『神器を隠蔽する神器』もあったのだろう。辻褄はそれで合う。



 うずくまる神様に、混沌神が近寄った。


「ふふふ、さぁて。どうかしら時空神ちゃん? 体の中から神力を封印された感想は?」

「くっ……お、おなかが……」


 その次の瞬間。

 神様がしゅばっとものすごい早い動きで混沌神に飛びついてガシッと両手両足でホールドした。……セミかな?


「おなかがよじれそうなくらい、笑っちゃいますねぇ! あはっ♪ 混沌神さんだぁ!」

「!? ちょ、な、何故動けるの時空神ちゃん!?」


 神様、混沌神(髪の赤くなったカオル)の服に手を突っ込んで撫でまわし、くんかくんかと体臭を堪能し、かぷかぷと歯形をつけていく。私はそっとふたりから距離を取った。

 あ、メイドホムンクルスさんちーっす。あんたも避難中? お互い大変だね。


「どうして! 仕込み靴下食べたはずなのに!?」

「え? やだなぁ。食べたフリですよ、フ、リ! ちゃーんと分かってますよ、混沌神さんが私の事封印してペットにしたいくらい好きだってこと!」

「ち、ちがうわよ!? 私は自由が欲しいだけなの!」

「ええ、ええ。分かってます。分かってますよ。だからあげない! 私だけの混沌神さんじゃなきゃ嫌なんです、うふふふふ」


 わー。ヤンデレっぽい。これだから混沌神が神様ん事避けるんじゃないの?


「くっ、ちゃんとコッショリ君を展開していたのに……!」


 あー、そういえばコッショリ君使ってたら神様見ないって話じゃなかったっけ?

 さては見てたんだな? 約束破りはだめですよ神様!


「カリーナちゃん。コッショリ君の例外、覚えてますか?」

「あ、えっと。……緊急事態を除き、でしたっけ?」

「よく覚えてましたね! では、どんな緊急事態だったら覗くと言いましたか?」

「えっと。10年くらい音沙汰がないとか、神様の恋人が遊びに――!!」


 そうだ。神様の恋人が遊びに行ったら、コッショリ君があっても覗く。

 神様は最初からそう言っていたのだ。


「はい! つまり今回は緊急事態でした!!」


 くっ、事前申請の例外処理か! なら仕方ない。



―――――――――――――――――――――――――

(以下お知らせ)

 8/27(火)よりComicREXにて本作コミカライズ(絵:かんむり先生)

 が連載開始しましたわよ! 紙の雑誌に載ってるのですわーーーー!!!

 9月発売分にも載ってますわ!! ハルミカヅチお姉様!!



 尚、フザケた新作もやってます。

 『バニーにあらずんば人にあらず ~バニーガールに支配された世界でニンジン屋を営む~』

  https://kakuyomu.jp/works/16818093083361398334


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