一件落着、かな?



「……ふはっ、あれ? 俺は一体……?」

「おっカオル。目を覚ましたか。おはよ」

「くっ、まさかあそこから逆転されてしまうとは……!」

「にゃーっはっはっは! 私がカリーナに渡したヤスリのおかげにゃー!」


 と、カオルの意識が戻るとそこには縛られたメイドホムンクルスと、高笑いするミーシャ。そして、メイドを捕縛した縄を手に持っている私がいた。


 ん? あれ? 私拘束解除されてたっけ? いつの間に逆に捕まえて……あ、いや、違う? ミーシャから貰ったヤスリで拘束を抜けて、逆にメイドホムンクルスを……拘束した、ん、だっけ?


「なんか記憶に混濁が……」

「おや、それはよろしくない。さすが悪魔の依り代。混沌の効きが悪いようですね」

「お前がなんかしたのか?」

「いいえ?」


 メイドホムンクルスは嘘を言っていないように見える。


「……あの白い芋虫のせいか?」

「おや。これは異なことを。時空神謹製の人型神器にあの程度の虫が効くわけないでしょうに。あとアレ実は穴につっかえて入らない欠陥品なんですよね」


 うん? そうか、神器の格の違いってやつか。うん、確かにそれだったら効かないよな……ああ、流石に虫に脳クチュされるのは嫌だと抜け出したんだっけ?

 うん、そうだった。間違いない。


「まぁいい。お前が黒幕だと分かったんだ。お前を神様に突き出せば私の仕事は完了だな。間に合って良かった……カオルの減刑も願えるはずだ」

「おう。頼むぞカリーナ、俺は自分からは名乗ってないんだからな!」

「くっ、は、はーなーせー。私は混沌神を創るんです、私が混沌神の母になるのです、邪魔をー、するなー」


 ホムンクルスだからか感情が乏しいようで、どこか嘘くさい――が、そんなはずはなく、こいつが黒幕だったことは間違いない真実・・・・・・・だ。

 改めてミーシャがぎゅっと縛りを強くし、私はメイドホムンクルスに声をかける。


「突き出しついでに神器を神様に納めればSPもたんと貰える。お前みたいな神器の塊、丸ごと神様に奉納してやるよ」

「……我が内臓のウソ発見神器、『真偽の肝臓スイッチレバー』が無反応……本当ということですね。ではよろしくお願いします」


 なにその神器。肝臓て。内臓を内蔵……? いや内臓なんだからそりゃ身体の中にあるだろうけどさぁ。そんなとこにも神器あるのかよ……


「これにて一件落着、かな?」

「にゃっはっは! カリーナ、帰るまでが遠足にゃよ?」

「そうだ、そこの猫さんの言う通りだぞ。油断するなよカリーナ!」

「ああ。それで、この近くの教会ってどこかな」


 さっさと納品してしまいたい。そんな気持ちでカオルに尋ねると、カオルは首を横に振った。


「いや、この国にそっちの神様の教会は無いだろう。混沌のアレを信仰してただろうし……」

「それは仕方ないな……」

「いや、普通にありますよ? 錬金術の材料に使う聖水を手に入れるのに便利だったので。案内しましょう、さぁ私を担ぎなさい」


 マジかよ。そしてそれお前が言うのかよメイドホムンクルス。殊勝な奴め。



―――――――――――――――――――――――――――――

(本作のコミカライズが開始しましたわー!!!

 8/27(火)発売、ComicREX! あの おにまい と同じ雑誌ですわー!!!)

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