まさか、これは……


 改造リザードマンは、その1体だけではなく。突然壁から現れて奇襲してきたり(空間魔法でガードした)、天井から現れて奇襲してきたり(空間魔法で天井に押し付け潰した)、前後から挟み撃ちしてきたりした(空間魔法で落とし穴して片付けた)。


 正直空間魔法がなきゃ私とミーシャはともかくブレイド先輩他冒険者がキツいレベルの力があると思われる。

 それが出てくる時は隠れ身の術よろしく壁が突然スライドして出てくるもんだから全方位気が抜けないのがキツイね。

 メカニンジャリザードマンだな。空間魔法がなければやられてるところだよ。


「どうするヒーラー。このまま探索を続けるか?」

「ああ。幸い我が魔法で対処できるようだしな」


 とは言ってみたが、実はちょっと焦りがある。

 なんとこのダンジョン、空間魔法が目視範囲までしか通じない。いや、拠点やダンジョンの外へ逃げることはできるのだが、先を探ろうと空間魔法の波を飛ばしても『壁』という反応しか返ってこないのだ。

 どうなってやがる? こちとら神様の魔法ぞ? カルカッサのダンジョンはちゃんと壁すら貫通して見通せたのに。


 と、そうかと思い至る。壁の向こうが判らないのだ。

 どういう素材や仕組みかは分からないが、壁が空間魔法をはねのけている。

 ただでさえヒーラーの格好のままだとお面をかぶっている時のように地味に視界が悪いのに、壁の向こうが確認できないのは割とつらいぞ。

 このままでは奇襲に対応しきれず、ミーシャ以外が足手まといになりかねない。


「……いや、やはりミーシャ以外は一旦引き返してくれ」

「いいのか? というか、やっぱ俺らじゃ実力不足か」

「ああ。思っていたより手ごわいダンジョンだ。そっちは他の出入り口がないか外から探してほしい」


 そう言うと、ブレイド先輩は「分かった」と頷いて他の冒険者を連れて行く。

 それを確認して、私はヒーラーの衣装を脱いだ。


「はぁー、下僕が減っちまったにゃー。あ、カリーナ、荷物預かって」

「万一のことを考えて自分でも持っておきなよ? このダンジョン、何があるか分からないんだから――」


 と、そう言った次の瞬間、カパッと床が割れた。床の下には赤い升目のレーザーネットが。


「にゃ? に゛ゃ゛ーーーーー!?」

「おっと。大丈夫ミーシャ?」


 とっさにミーシャを空間魔法で支えるも、荷物の一部がジュッとサイコロステーキになりつつ落ちていった。


「あー! アタシのポーショーーーーン!」

「急に殺意上げてきたなー……あれ。ミーシャその尻尾大丈夫なの?」


 見ると、尻尾の先がレーザーに触れていた。


「え? ひえっ!? ネコマタになっちゃう!!……ありゃ?」

「切れて、ないね?」


 はて、これは一体……

 試しに先ほど落とし穴で捕まえたメカニンジャリザードマンを取り出し、叩きこんでみた。


 わぁ、生身部分は大丈夫だけど機械部分が切れちゃったぞ。バラッと切られて落ちていった。


「なんだこれ……ハッ!? まさか、これは……いや、これ、マジでそうなのか?」

「なんにゃ? カリーナ何か気付いたのかにゃ?」

「服だけをバラバラにするレーザー!! 服だけをバラバラにするレーザーってことじゃないか!?」

「なんにゃそれ!?」


 だってポーション瓶ですらカットするのに生身の尻尾はバラさないとか、そうとしか思えない。いったいどんな技術力があれば実現できるのかはさっぱり分からないが!





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