はい、積極的に探していきまーす。



「それで、真・混沌……のヤツはどこに居るか、この中に知っているものは居るかね? 祈りの間だとは聞いているが……」

「ああ。それなら俺が知ってる、かもしれん」


 そう言って手を挙げた冒険者。どうやら彼は祈りの間に向かう真・混沌神を見たらしい。


「ちなみにターゲットの外見は?」

「ああ。十代後半くらいの若い女だ。金髪で赤い目をしている」


 なんと! 若い女だと!? こ、これは神様に生贄に捧げる前に味見してもいいだろうか――って、今のすっごく盗賊の下っ端っぽい思考だったわ。ごほん。気を取り直して……


「そんな若くて女王が務まるモノなのか?」

「錬金術の腕はピカイチでよ、コンコンと叩くだけで大破していたゴーレムを直す程だ」

「ありゃ前の混沌神よりすげぇんじゃないかな。知らんけど」

「伊達に真とか付けて名乗ってねぇ、って思ったよ」

『は? ウチの混沌神さんの方が絶対凄いですが? 何が真・混沌神だ。その女ぁ豚と結婚させて新婚・豚神に改名してやろうか』

「おいお前ら。禁忌の名前を口に出すな、ましてや褒めるな。神様がお怒りだ」


 なんだよ新婚豚神って。豚にやるくらいなら私にくれよ。


「にゃー、そんじゃ早速祈りの間にカチコミに行くにゃぁ!」

「って、お前誰だよ。よく見たら見てない顔だぞ」

「ホントだ。気付いてなかったけど誰だお前」

「おう、私ゃAランク冒険者のミーシャにゃ! おめーらの中にAランク以上が居ねぇなら私が仕切らせてもらうにゃ!!」

「何言ってんだ、仕切るのはブレイドだろ!」

「そうだそうだ! ブレイドは俺の靴下の穴ぁ繕ってくれるくらい良い奴なんだぞ、お前にそんな事できんのか!?」

「初めて会ったやつの事を信頼できるかッ! ブレイドの紹介なら別だがなぁ!」


 ブレイド先輩マジなんなん? 信頼度高すぎんよ。


「あー、まぁまて。そいつは一応本物のAランクで『烈風』のミーシャだ。まぁ、指揮するのはどうかと思うが、戦力にはなる」

「は? 過小評価してにゃーか?」

「分かった分かった。じゃあ大将はミーシャで、俺が参謀ってことでいいか? 面倒な指揮は俺に任せてくれ。もし力が必要な事があれば大将として力を奮ってほしい」

「うむ! 任せとけにゃ!」


 うーん、さすが先輩。ミーシャを手のひらの上でコロコロだぜ。

 他の冒険者達も「ブレイドがそう言うなら」と納得してるわ。


「よし! そんじゃまず祈りの間に向かったってのを追いかけてみるか。が、全員で行くのもなんだから少数でいく。他の連中は情報を集めてくれ。……もし王様が戻ってきたら足止めを、逃げようとしたら確保して欲しい」


 あ、そうか。戻ってくる可能性もあるんだよな。

 ……神様ー、犯人ホシが戻ってくるの待っちゃダメですか?


『期限は三日と言いましたよ? ちゃんとそれまでに戻ってくるんですかねぇ?』


 はい、積極的に探していきまーす。


  * * *


 というわけで私達は、ヒーラー、ミーシャ、ブレイド先輩、案内冒険者を含む5人の冒険者の計8人で祈りの間の探索に向かう。

 選抜した冒険者はいずれも探索技能に優れた者たち。セッコー先輩も含む。それでもCランク、せいぜいBランクなので高が知れているところはあるが、人手はあって損はない。


「ここだ。この道を歩いていた」

「時間は?」

「昨日の昼だな」


 水晶玉を手に持って、覗き込みながら歩いていたそうな。


「まずは道なりに進んでみるか」


 そのまま祈りの間にたどり着けば楽なのだが。そう思いつつ、道なりに進んでいく。

 復興作業中の城壁の内側を進むと、町の中央の方へ向かっているようだ。


「単純に考えれば、祈りの間は町の中心にある……とか?」

「大事な場所を中心に置いて城壁で守る、元々そういう造りの町だったのかもな」


 しばらく歩くと、トンネルが見えてきた。やや傾いており、地下に続いている。


「この中か? 一応2人くらいこの周辺を探索してくれ。残りは中に向かう。セッコー、頼んだ」

「わかった。んじゃマハト。付いてきて来てくれ」


 セッコー先輩と冒険者一人を置いて、トンネルに入る。

 一本道のどこか近未来を思わせるトンネルを歩いていると、小部屋がありリザードマンが居た。

 頭の半分を覆う金属製の機械のような物をつけている。


 目が合うや否やいきなり襲い掛かってきたので、ミーシャが首根っこを掴んで叩き潰す。

 一瞬で無力化させたリザードマンだが、フシュー、フシューと息を粗くして抵抗の意志を見せていて、理性は感じられない。


「おいコレ、トカゲ獣人や亜人じゃあニャーな。ダンジョンモンスターのリザードマンにゃ」


 ダンジョンモンスターは生殖の必要がない為、そのための器官がない場合がある。

 ある場合もあるが、無ければ間違いなくダンジョンモンスターらしい。


「……え? じゃあもしかして、ここってダンジョン、なのか?」

「にしても、この、頭の……何? コレ?」


 なんだろう。改造リザードマン?

 改めて見ると、壁がメカメカしくて、ファイナルなファンタジーの終盤ダンジョンによくある雰囲気のそれに思えてくる。

 ……そういや混沌神ってラスボスだったなぁ。最初に倒したけど。




―――――――――――――――――――――

(最近忙しくてコメント返信できず申し訳ありませんわーーー!

 誤字報告ありがとうございますわー!!)

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