頼むぜ皆!!


 その後、先輩のご飯を食べに雇われ冒険者たちが戻ってきた。

 おっ。シルドン先輩とセッコー先輩も混じってるな。


「おう、ちょっとやべぇ話を仕入れたんだ。食いながらでいい、聞いてくれ」

「どうしたんだブレイド?」

「ん? というかそいつは誰だ?」


 私はあらかじめヒーラーに化けている。さすがに先輩以外に私が神の使徒だとバラす必要もないしね。


「なんか……神様が激怒してるらしい……その、この国の新しい王様に」

「は?」

「……マジで?」


 と、ブレイド先輩の言葉に、ここで集まってるメンバーの殆どと面識のない私に視線が集まる。ヒーラーの風貌は怪しさ満点。そもそもローブを覗き込んでも顔が見えない闇が広がっているのだ。


「ブレイド。そいつが関係してるのか?」

「ああ。この方は……使徒様だ。神様のお言葉を伝えに来たそうだ」

「マジか! 信じらんねぇにゃ!! 証拠みせろにゃ!!」


 おいミーシャコッソリそっち側に混ざるんじゃない。サクラを頼んだ覚えはねぇぞ!


「そうだ。神様とか言われてもにわかには信じられねぇよ」

「そいつが嘘をついてる、って方がよっぽど信じられるぜ?」

「……だが、ブレイドが何の根拠もなく嘘やデタラメを信じるとも思えない。何か、あるんだな?」


 普通にもっと反発があると思ったのにブレイド先輩の人徳が篤い!! なんなら一番文句を垂れているのがミーシャだ。

 と、私はここで証拠として空間魔法を見せることにした。


「……あそこにズレて途切れた城壁があるだろう。あれは神様が破壊した跡なのだが――」


 丁度そこに、斜めに切られてズレるように崩れた壁があったので、それを指さす。そして、空間魔法を発動。指を持ち上げると、ズズズッと壁が元々の位置に移動していく。ついでにくっつけて直す。


「――と、直しておいたぞ。ご希望とあらば、反対側にずらすか?」

「……は!?」

「ちょ、ちょっとまて。なんかのトリックじゃあないのか? 確認してくる」


 セッコー先輩が数人を連れて走って確認しに行き、戻ってくる。手持無沙汰なのでふわりと浮いておくことにした。

 どう? 神の使いっぽい? ついでに光っとく?


「おい! 本当に直ってたぞ――ってうわぁ光って浮いてる!?」

「信じてもらえたかな?」

「お、おう……まぁ、信じるよ。少なくとも、アンタなら元々と同じように城壁を斬ることもできるんだろうし……なんか光ってるし……」


 最初から光っとけばよかったかもしれん。


「……改めて伝えよう。神様は、混沌神を名乗ることを許さない。その名を名乗ってよいのは、本物の混沌神のみである。真とかついててもダメであり、神罰を与えるとのことだ」


 むしろ真とか喧嘩売ってるよな。ホントなんで新生錬金王国の王様、真・混沌神とか名乗ってしまったん?


「期限は三日。偽りの混沌神を差し出せ、さもなくば国を滅ぼし尽くす! だからせめて被害が最小限になるよう、真・混沌神だけを生贄にしよう! な!」


 おい急に威厳を投げ捨てるな! とブレイド先輩が私を睨むが、取り繕ってる余裕はないんだよ!

 見つけてくれたら私が空間魔法で捕まえるから!! 頼むぜ皆!!



―――――――――――――――

(前回と合わせてブレイド先輩の人徳無双なだけの回ですわ!!


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