『怒』
そんなわけで、神様から強制クエストを発行されてしまった。
まぁ最悪? 次の勇者(中身は神様)がここで暴れる前に空間魔法で逃げちまえばいいんだけどさ?
ああ、私はただ自由にできるオモチャ(人間)を求めていただけだったのにどうしてこうなった。
でもあれだな。空間魔法さえあれば拉致なんて簡単。そんな簡単なクエストで1万SPも貰えるとなれば、むしろ美味しいのではなかろうか。
今回のSPはきっと処刑ポイントの略だろうけど。
と、神様の干渉が終わって時間が動き出す。
「あー、あの。ブレイド先輩、その真・混沌――なんちゃらってのは、どこにいますかね……?」
真をつけても混沌神と口にするだけで神様が「あァン!?」と乗り込んできそうな気がしたので多少ぼかして先輩に聞く。
「ああ、王様なら今は……祈りの間? とかいうとこに居るはずだぜ」
「祈りの間?」
「なんでも、よくわからんけど祈りをささげる場所だっつってたな。場所は最高機密とかで知らんけど」
むむ、なんということだ。神様からの追及を逃れるべく、敵は身を隠しているらしい。
「……先輩、大変アレなことを言うんだけども、信じられないかもしれないけど――この国は今、滅びかけています!!」
「おうそうだな。だから俺らが復興しにきてるわけだし」
「違う! 新生の方が今まさに神様に再び滅ぼされるピンチなの!」
私はこの深刻さについてブレイド先輩にどうにか説明しようとする。
……って、よく考えたら私、別に神様から正体や事情を隠せとか言われてねぇんだった。
「実は私神様にコネがあるんだけど、混沌神ってのが神様の恋人の名前らしくてさぁ。それを勝手にジジイが名乗ってたから混沌神は殺されて錬金王国は滅んだんだわ」
「は? え、なんだそりゃ。マジでか?」
「うん。それで今私を通して新生錬金王国の王が真・混沌神って名乗ってるのが神様にバレた。で、三日以内に生け捕りにしないとこの国は滅ぼすって言われた」
と、私は先輩に全部ぶっちゃけた。ストレートに。ド正直に。
「……マジでか」
「あれ。信じてくれるの? 先輩」
「ったりめーだろ! カリーナの事は信用してるからな! お前はこういう嘘を吐くヤツじゃねぇ。ってことはガチなんだな!? 念のため聞くが、今ならやっぱり嘘でしたでも許すぞ!? 信じていいんだな!?」
うわ、なにその全幅の信頼。ちょっと不覚にもキュンとした。
いや、男としてね。恋愛要素ではなく人間としてね? なんだよ先輩、見た目チンピラなくせに中身主人公かよぉ!
「……ガチッす! 信じてください!」
「わかった! 今すぐ他の連中にも協力させて、真・混沌神に話を付けに行く。……あー、その、改名したら神様は許してくれんのかな?」
『怒』
「ダメっすね。混沌神の名前は神様の逆鱗。一度触れたら滅ぶと思ってください」
「ハハッ、まだ実感がわかねぇが、ドラゴン相手の方がまだ気が楽だぜ」
まぁドラゴンなら3体ほど知り合いいて、うち2体はボコして舎弟にしてるしな。
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