当面、私的にはなんにもやること無くない?
鬼族の里に私達専用の新しい家が建つことになった。
地味にいままでの拠点より普通の家っぽいので悪くない……別荘が出来る感じだ。
今回の報酬としてありがたく受け取っておこう。
……ただし外見はまるっきり神社である。何? 姫巫女神社? 靴下を奉納する賽銭箱ならぬ賽靴下箱付き?
いいね。未使用靴下を大量に買い込んで置いておくから、是非活用してくれたまえ。
あ! 今家作ってる奴らも全員靴下やるから履け! そして洗うんじゃねぇぞ!
神社出来たらそれ全部奉納だからな!!
『ハロー、こちら神様です。賽靴下箱ですが、羞恥心を煽る仕組みもなんか追加してください。皆に見られながら脱ぐストリップステージにするとか!』
……神様? ウチの別荘を風俗店にする気ですかね?
『神事神事! 靴下教の靴下神カリーナちゃんを名乗っていいですから! 怪しげに靴下を捧げる儀式とか作ってください! 靴下神社に栄光あれ!』
嫌だよ!? というか靴下神って何さ、それ神様の方でしょ!!
勝手に変な神に任命しないでくださいよ!? あと姫巫女神社だから! ディア君が御本尊だからねっ!?
んで。
ヨウキちゃんに頼まれた既に売られた鬼族の救出の手伝い。
里の安全を確保はしたものの、もう少し何かしたほうが良いかなぁ、とディア君に相談してみることにした。
「これ以上するのもどうかと思いますが……そうですね。では、あの商人を解放してしばらく泳がせましょう」
「ほほう?」
ディア君、一体何を企んでいるのだろうか。
「はい。最も効果の高い薬だったんですよね? であれば、勝手に奴隷になった鬼族達を集めてくれると思うので、頃合いを見計らってかっさらえばいいですよ」
「……そうなの?」
「はい」
うーん。ディア君が頭良すぎてどうしてそういう結論になったのか分からん。
でもよくわからないけど、ディア君が言いきるくらいならそれで大丈夫だろう。
私はお姫様のお言葉に従うまでよ。
「となると……」
私は自分の仕事を考える。商人達の監視は当然あるが、たまに様子を見ればいいだろう。
鬼族の里から帝国内への出入り口に門(無許可の人には見えないし通れない鳥居)も作ったし……
あれ? 当面、私的にはなんにもやること無くない?
靴下の熟成や回収も、ヨウキちゃんがある程度やってくれるの待ちなところあるし。
「……うん? 私はこれから何をしたらいいんだろう?」
「えっと。……とりあえず、テラリアルビーに戻ります? 商人としての滞在記録って今そこですよね」
「おお、そうだったそうだった」
そんなわけで私達はテラリアルビーに帰ることにした。
……とはいえ、行きと違って帰りは一瞬。さすが空間魔法だぜ。
里にはいつでも顔を出せる(というか里自体が私の空間魔法内にある)ため、一々ヨウキちゃんやギャルドラ達に挨拶する必要もない。お散歩程度の気分での帰還だ。
「ふにゃー……マジでテラリアワンにゃし。カリーナの魔法ってイカレてるにゃぁ」
「え? ミーシャだけ一人徒歩で帰りたかった?」
「そんな事一言も言ってないにゃ!! あー、やっぱ空気がちげーにゃぁ!」
無駄にスーハースーハーと深呼吸するミーシャ。
「つーか、とーちゃんに『ちょっと遊びに行ってくる』で数日開けちまったニャ。カリーナ、ついつい興が乗っちまって、とか口裏合わせて欲しいんにゃけど」
「おっけー、いいよ。壁から尻を突き出して壁尻ごっこしてたんだけど数日抜けなくなって大変だったってコトにしよう」
「お? 喧嘩売ってんのかニャ?」
「割と真面目に命の危険のない程度の事故で大変だった、ってのはいい案だと思うんだけど」
「……確かにそうにゃね」
というわけで、私たちは(一応)テラリアワンに帰還した。
さーて、靴下神社……もとい、姫巫女神社に置く靴下を買い溜めしてこよっかな。金なら大会で荒稼ぎした金貨が唸る程あるでな!
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