一方、帝国帝都にて。
一方、帝国帝都にて。
中小規模の商会が2つ消えた。帝国において商会は何個もあり、一般人に対して大した影響はない。店や商売自体も、大部分は他の商会に買われており、行きつけの店もオーナーだけが変わった形だ。
しかし、一部。ごく一部だけ、完全に消えた商品があった。
「何? 『鬼の角』が無いだと?」
「はい、大変申し訳ありません。こちらの薬は生産・販売が終了いたしまして……」
薬屋のカウンターに、こっそり媚薬を買いに来た貴族が不満げに舌打ちをする。初老を超え、孫すらいる爺だった。
彼は媚薬『鬼の角』の愛用者だった。
「他の薬はいかがでしょうか? 例えばこちらの『
「……男向けの精力剤が欲しいのだが」
「ではこちらの『
「それはもう試したのだ! よくて半分程度にしかならぬ!」
ダン! と貴族がカウンターを叩く。人気の少ない店内だったが、大きな音に注目が集まり、気まずげにローブを深く被る老貴族。
「……一番強いヤツ、それが『鬼の角』だったろ!? 在庫はないのか!?」
「もうしわけありません、在庫もゼロでして……販売終了と同時に、在庫に残っていた薬は全て買い占められてしまったのです」
「その不届きものはどこのどいつだ!?」
「申し訳ございません、お客様の情報なので明かすことは……」
ギリッ、と歯を食いしばる老貴族。しかしつとめて冷静を装う。
「何も、強盗しようというわけではない。交渉をして譲ってもらえればと思っているだけだ。教えよ」
「いや……しかし……」
「おっと、この金貨は君のだったか。落としていたぞ」
「……さる尊いお方、とだけ」
金貨1枚を握らせ、引き換えに得たその情報に、何度目かの舌打ちをする老貴族。
貴族の自分を相手にしても『尊いお方』ということは、皇族ではないか。それでは交渉も難しい。
「くぅぅ……工場などは!? この薬を作っていた者は!?」
「前の商会主が持っていた牧場が消えたらしく、再生産は絶望的だそうです」
「金ならいくらでも出す! 商会主はどこにいった!?」
「破産し、今は別の商会で下働きを……」
「儂が金を出す! 新たに牧場を作らせればいいだろう!?」
このようにして商人は『鬼の角』を必要とする貴族たちから強制的に再起させられ、前に売り払った鬼族奴隷達を集めることになる。
そして、きっかり奴隷達が集まり切ったその時に、金をもって姿をくらませ、翌日には置いていかれたはずの鬼族の奴隷達も煙のように消えてしまい、商人は投資詐欺師として国際指名手配されることになるのだが――それはまた別の話。
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(以下お知らせ)
2巻発売中なので、買ってね。
Ixy先生の描いた可愛いディア君ちゃんが目印だぞ!!
尚、海賊の船長があんな可愛いことになっていますが(以下ネタバレ防止のため自主規制)
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