藁にもすがってるカンジかな?



「わ、我々に手を出せば、帝国が黙っちゃいませんぞ!」

「そうですぞ、今すぐ解放すれば許してやるので解放してください!」


 おぉっと? 商人どもがなんか言い出した。

 ギャルドラに掴まれてるってのに強気だな……いやこれは商人的には「『人間』相手なら交渉が通じる」と、藁にもすがってるカンジかな?

 じゃあまずはそこを訂正してやろう。


「いやぁ、ひとつ勘違いしてるみたいだから言っとくけどさ。このドラゴンたち別に私らの言うこと聞いてるんじゃないんだわ」

「へ?」

「は?」

『え? カリーナがやれって言ったんじゃん?』

『シーッ! マイハニー、ここは姐さんに合わせるんだよ。そういう流れ!』

『あー……あーね。りょ! そうだぞー、誇り高きドラゴンが人間のいう事なんて聞くものかー!』


 ドラゴンカップルも空気を読んでくれたところで商人たちに説明を続行する。


「よりにもよってさぁ、アンタら、鬼族をさらうのにドラゴンを騙ったじゃん? だから、私達がドラゴンに協力して、こうやってアンタらを捕まえたってわけ。タイミングよく来てくれたのは助かったよ」

「……なん、と」

「ということは……その」

「そ。ドラゴンが主体。私達はお手伝い。現に、アンタら二人を捕まえたのはだぁれ?」


 ちらり、と商人達がギャルドラを見ると、彼女はニィと凶悪な牙を見せて笑った。


『おめーらがあーしらを騙ったのね? ウケる、ガチで潰していい?』


 少し怒りを混ぜてグルルルと唸るギャルドラ。

 いいぞ! その調子! あ、潰すのは待ってね。それじゃつまらないからね。


「ひぃいい!! も、申し訳ありません申し訳ありません!!」

「ほ、ほんの出来心だったんですぅう!! ここのあたりに昔ドラゴンの卵を入手した話があると聞いて……ッ」

『ちょ。これダーリンが卵盗まれたのが原因ってコトじゃね?』

『えっ、俺かぁ!?』

「おお! ドラゴン様はその件についても大変怒られているようだ! ね、姫様!」

「え? あ、はい。すごく怒ってます」


 姫巫女ディア君がうんうんと頷く。

 私とドラゴン達以外ドラゴン語分かんねぇから言いたい放題だな!


「さて、それでドラゴン様方はケジメを求められている。分かるかね、商人君?」

「け、ケジメ、ですかな?」

「つまり、い、い、命を差し出せと……そ、そこの傭兵たちならいくらでも食べてよいので! 私の命ばかりはお助けを!」

「そ、そいつらは私が雇ったやつらですぞ! 私の命を助けてください!」


 あっさりと傭兵たちを生贄に差し出す商人2人。わぁ見苦しい! 傭兵たちからの視線も実に痛々しいぞ!


「ああ、ああ、要らない要らない。イマドキ、生贄なんてドラゴン様も求めちゃいない……代わりに、財宝を差し出せと。そうですよね、姫様!」

「はい、財宝を差し出せと言ってます」

『いえーい、財宝を差し出せー! あはははッ』

「ひぃいあああ!!」

「さ、逆さに振られても、ああっ、へそくりがっ!」


 ギャルドラが商人たちをひっくり返してゆさゆさ振る。ネックレスや小銭がぱらぱらと地面に落ちた。


「お、これギャルドラの爪デコるのに使えんじゃね」

『マ!? おら! もっとだせよ! ほらほら!!』

「ぎゃああーーー!!」

「も、もうでませぇええええんん!!!」


 まぁ手持ちなんてそんなもんだろう。私が狙うのは、そう、貯えてるアレコレ色々だ。

 そのためには、商人達を一度帰してやらなきゃならないわけだが……


「何、巣に溜め込んでるんだろうってドラゴン様が言ってる? そうですか姫様! なら、それをありったけ持ってきてもらわないとですねぇ!」

『ん? 念話……あー、はいはい。キリゴンさん、姐さんが商人達のニオイ嗅げってさ』

『えー……まじかよアーサー。あ、いや、やります。やりますって姐さん』


 キリゴンが商人達のニオイを嗅ぐ。


『おえっ。これでいいっすか?』

「ほう、ニオイを覚えたぞ、と。全財産を差し出せ、もし財宝を出し惜しみしたり、隠れたり、逃げたりしたら、地の果てまででも追いかけて今度こそプチッと潰すと仰ったと。いやぁ恐ろしいですね姫様!」

「なっ……」

「ひぃ……」


 震えあがって声も出ない商人達。


「おい、返事は? ドラゴン様に今すぐぱっくんちょされてぇのか?」

「わ、か、りました……」

「いう通りに致します……」


 脅して頷かせ、契約成立ぅ!


『うわ、えげつねーっすね姐さん。でも本当に持ってくるんすか? 俺ぁそこまでニオイ追えないっすよ?』

「おう傭兵ども。雇ってやる。コイツらが逃げないでちゃんと財宝を持ってくるか見張れ、それでお前らの命は助けてやろう――と、ドラゴン様が仰ってると! そうですね姫様!」

「はい、仰ってます仰ってます」


 なんかディア君だいぶ投げやりになってきたな。まぁ傭兵たちも商人も細かいことは気にならないほど怯えてるから大丈夫っぽいけど。


「わ、わかった。言うことを聞く。……既にそいつらには見捨てられたし、取立に協力するのは願ったり叶ったりだ」

「よし。それじゃ縄ぁ解くけど、忘れるなよ、ドラゴン様はいつでもお前らを見てるからな」


 こうして、私達は商人と傭兵を一旦解放した。

 商人は逃げないように傭兵が改めて縛ってたけどね。



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