もっと伸ばそ



 ばっさばっさ、と銅褐色のドラゴンが飛んできた。

 キリゴンではない。そのカノジョ、ギャルドラちゃんだ。


『おーっす! カリーナの言ってた通り崖んトコにニンゲン居たから連れてきたよー』

「お、ギャルドラちゃん。おっすおっす、お疲れー」


 私は手をヒラヒラさせてギャルドラちゃんを広場に招くが、鬼族と、ついでに捕まえた里を襲ってきた傭兵共は阿鼻叫喚だった。

 なにせ人間2人を握りしめた新たなドラゴンが現れたのだから。……動いてないけど生きてる? あ、気絶してるだけ? ならよし。


 あらかじめ連絡が取れるように、私のテイムしていたスラベェをギャルドラちゃんに貸し、爪に張り付かせておいたのである。

 これでスライム経由で『怪しい奴がいたから捕まえといて』と連絡をいれたのだ。


 宝石っぽく固めてあるのは、ギャルドラがその方が喜ぶだろうとデコったから。実際凄く喜んでくれた。テンションアゲアゲだった。

 なんなら今回の報酬ってことで次は本物の宝石でデコるのもいいだろう。ドラゴンらしく財宝の一つや二つ持ってるだろうし。

 ドラゴンネイルアーティスト、カリーナちゃんである。


 え? キリゴンへの報酬? テメェの命をとらねぇでやってんだろ、ありがたく思え。


 ……二人の扱いが異なりすぎるって?

 可愛い子には優しいカリーナちゃんなのだ! 優しくしてほしけりゃ可愛げを見せろ! おらっ! ディア君を見習えぇい!


『お、そっちがカリーナのオキニの子? ひらひらで可愛いね!』

『おっ、マイハニーも来たのか。そうそう、こちらの方が姐さんの女、ディア君ちゃんさんだ!』

『ほへー! ディア君ちゃんさん!! なかなか長い名前だね!』


「……初めまして、えーっと。アーサー、コッチのドラゴンさんはなんて?」

『ギャルドラさんっすね、キリゴンさんのツガイっす。えーっと、ディア君ちゃんによろしくって言ってるっす』

「なるほど。よろしくお願いしますギャルドラさん」

『うん! よろしくね、ディア君ちゃんさんちゃん!』


 ディア君が会話できるのは単語帳を使ってるアーサーだけなのでギャルドラの言葉は分からないわけだが……


「ギャルドラちゃん。一応言っておくと、ディア君の名前は『ディア』だけだからね?」

『マ!? めっちゃ継ぎ足されてんじゃん、ウケる! もっと伸ばそ。ディア君ちゃんさんちゃん様とか?』


 きゃっきゃっと尻尾を地面に叩きつけて楽しそうに笑うギャルドラ。

 巨体がそんなことをしたものだから、鬼族も商人・傭兵も揃ってビビってやがるぜ。まぁ一般人が当たれば軽く死ねる尻尾だからそれも当然だけど。

 私も空間魔法がなかったら真っ先に逃げて距離取ってるよ。


 ヨウキちゃんが恐る恐るディア君に尋ねる。


「あ、あの、巫女姫様。こちらの新しいドラゴンは一体?」

「ああ。えーっと……キリゴンさんのツガイです。敵対しなければ襲ったりはしないかと。……里の外の方を見張っててくれたようです」

『そーそー。んで見つけたのがコイツらってワケ!』

「ひひゃっ、な、なるほどぉ……あ、ありがとうございます」


 ずいっと差し出された商人2人(気絶中)。……私達を襲ってきた以上、当然ケジメはつけさせないとな――って、ドラゴン脳になってんな。まぁいいけど。


 ん? なんだいそこの傭兵君?

 ……「ドラゴンが居るの見えてたら襲わなかった」って?

 私達もお前らがここを襲わなかったらケジメ云々はなかったわけだから、お互い様さ。容赦なく搾るから覚悟してね!(もちろん金銭的な意味で)


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(以下お知らせ)

 GCN文庫 4/22発売、「あとはご自由にどうぞ! 2」

 特典SSの情報でましたわよー!!


  https://gcnovels.jp/news/337


 買い占めても良いわよ。なんたってディア君ちゃんさんちゃん様が表紙だしな!

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