擬装が強かった。
カリーナ達が広場で鬼族と次の村長について話し合いをしている頃、商人達が傭兵に里を包囲させていた。
里の様子を見に行かせた斥候が驚きの報告と共に戻ってきた。商人は天幕の中に斥候を呼び、紅茶を飲みつつ話を聞く。
「里の広場に何やら集まっていました。意匠の違う服を着た者が3人おり、話をしていたようです。一人はエルフ、一人は人族、最後の一人は猫獣人で、こいつは尻や尻尾を撫でられて嫌そうにしつつも逆らわずにいたので、奴隷でしょう」
そして、ドラゴン――については、斥候の目には入らなかった。
節穴である、というには、カリーナの擬装が強かった。里の広場にまで入らなければドラゴンが見えないように神レベルの光学迷彩で隠されていたのだ。
これを広場の外から見破るには神器レベルの偵察でなければ不可能である。
「ふむ。予定外の3名はいますが、問題なさそうですな。こいつらは口封じ――生け捕り出来たら奴隷商に流しましょう。では予定通り、里の包囲が完了ししだい狩りといきましょうか」
「ですなぁ。さてさて、どのくらいの角が収獲できるか楽しみです」
傭兵たちにも、角を折らず、殺さなければ何をしても良いとは言っている。
仮に鬼族を殺してしまった場合はペナルティとして、男なら銀貨10枚(日本円にして約10万円程度)、女なら金貨1枚(約100万円)と言っているので、気軽には殺さないだろう。
「ひとつ思いついたのですが、奴隷にして繁殖させれば角が獲り放題なのでは?」
「あまり手間をかけても、コストがかさみますでな。それに増やし過ぎたら値崩れして元が取れなくなるので、このくらいが丁度いいのですよ。……とはいえ、そちらが試す分には止めませんので、雄と雌を2匹ずつくらい使って試せばよいでしょう」
「ああ、男も鬼族でないといけないのか。人族を産んでしまったら孕ませ損か。まったく、亜人共は人間のフリが上手くて厄介ですな」
そんな雑談をしているうちに、里の包囲が終わったらしい。
「では、狩りの時間ですぞ。とはいえ、我々は高みの見物ですが」
「抵抗されたら危ないですからな。さて、傭兵たちのお手並み拝見といきましょう」
と、双眼鏡を取り出しながら天幕を出る商人達。里を見渡せる高台に立ち、双眼鏡を構える。文字通りの高みの見物。
「……む? 鬼族の連中が武装しているようですがな」
「これは多少傭兵たちも手こずるかもしれませんな……む?」
傭兵の一人が鬼族を捕まえていた。が、直後に傭兵の動きが固まり、逆に捕まえられている。そして広場に連れ込まれていく。
広場に連れ込まれた傭兵は、
「……何やら嫌な予感がしますな。今日は帰りますか」
「ですな……ん?」
と、商人の勘で撤退を決めた二人。しかし、足が動かない。
物理的に。
「こ、これは!? え!? あ、足が動きませんぞ!?」
「わ、わた、私もです! しまった、何かされている……!?」
『ぎゃおーん♪』
後ろから、なにやら大きな動物の吼える声。
振り向けないが、どことなく雌の気がする。……そして、その影だけが商人の足元に映る。
「「……ドラ、ゴン……!?」」
直後、がしっと身体をドラゴンの手が掴む。商人はそこで気絶した。
尚、その手の爪には宝石が
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(以下お知らせ)
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