ディア君ちゃんさんの言うことなら従いますわ!



「というわけでキリゴンさん、こちらがミーシャです。仲良くしてあげてくださいね」

『うす! ディア君ちゃんさんの言うことなら従いますわ!……ディア君ちゃんさんが言うから仕方なく仲良くしてやらぁ、感謝せぇよ猫獣人!』

「えーっと、これ仲良くしてくれるってことでいいのかニャ? よろしくにゃ! いやぁさすがディアちゃんにゃ、カリーナとは大違い!」


 ミーシャはキリゴンが差し出した爪を握る形で握手した。

 あと私と大違いってどういうことだよ。私だってキリゴンと仲良くしろって言ったじゃん。尻撫でんぞコラ。


「で、どーゆー状況にゃ?」

「あー、うん。なんか商人が里長脅してた黒幕っぽい? というわけだから、どうしようかなって。どうしたらいいともうミーシャ?」

「まずは私の尻を撫でるのをやめたらいいと思うニャ。……さすがに人前ではちょっと」


 それもそうだね、だが断る。とミーシャの尻を撫で続ける私。


「……その商人を皆殺しにでもしてきたらどうニャ?」

「ミーシャ、私の事を殺人鬼か何かだと思ってらっしゃる?」

「だって、里を守るならその商人どもの口を封じる必要があるにゃん? 口封じっつったら、そういうことにゃ? それとも鬼族を全員商人に売りつけるかにゃ?」

「なるほど、確かに口封じといえばそういうことになるか……全員神隠しコースもあるけど」


 ……ん? でもまてよ?


「あ。よく考えたら私達、別に鬼族の里を守る義理はなかったわ」

「えっ? あれ? そうなのにゃん?」

「そうなんだよ。だって私達の目的ってドラゴンじゃん?」


 最初はドラゴンが生贄を取るからどうにかしたい、っていう話だった。んで、ドラゴンはどうにかなったわけで。


「ドラゴン相手ならともかく、人間相手は私らが手ぇ出す義理一切ないじゃん?」

「おー、言われて見りゃそうにゃね!」

「ちょ、ちょっとまってくださいカリーナさん。ここまで来てそれはないのでは……!?」


 ヨウキちゃんが恐る恐ると割り込んで声をかけてくる。


「巫女姫様、どうか我々をお助けください……!」

「……え、いや。言われてみればお姉さんの言う通りですね。ドラゴン相手なら何かしら手を貸しても良いですが、ここから先はその商人と鬼族の皆さんとの話になるわけで……そもそも人間の商人相手なら、どうとでもなるのでは? ドラゴン相手にするより楽でしょう?」


 と、ディア君がこてりと首を傾げた。

 鬼族の面々も、ドラゴンという理不尽と比べたら、人間の商人なんてまだ対応できる相手だなと気付いたようだ。


「い、いや、しかし帝国の商人が相手だぞ? 我々の里がバレてしまったら、帝国の兵士を送り込まれて全員狩られて奴隷にされるしかない……」

「全員奴隷にされるくらいなら、全員で里を捨てて逃げる方が建設的ですね。では全員で逃げましょう」

「……里を捨てるわけには」

「え? でも全員奴隷になるなら里が滅ぶのは同じですよね? むしろ人が無事な分、全員で逃げる方が圧倒的にマシですよね? これ以上里の人間を失う前に、一刻も早く逃げるべきでは?」


 正論でバッサリと切り捨てるディア君。

 里長は言葉を失っている。


「ディアちゃんの言う通りにゃあ! んじゃ、まずは商人相手にアッサリ屈した無能な里長を放免するところからだにゃ! みんなに謝るがいいにゃ!」

「え、あ、と、というかお前はなんなんだ猫獣人!? わ、儂が悪かったのは認める。認めるが、お前に好き勝手される筋合いはないぞ!?」

「うっせぇにゃ! オラ! 立てや!……やっぱ頭が高ぇにゃ! 頭下げろ!」


 げしげしと里長を蹴るミーシャ。こっちはこっちでやりたい放題である。

 ところでこの里。さっきからこっそり兵士っぽいのに包囲されつつあるんだけど、どうしようかなぁ。言うべきかなぁ。


「よし、それでは新しい里長は兄貴に代わり、このテンシキが――」

「新しい里長はドラゴンに立ち向かおうとした人の中から選んだらいいんじゃないですか? あなたと、あなたと、それとあなたでしたね」

『このテンシキってやつは奥の方で隠れてたからダメじゃけぇ』


 うーん、みんな新しい村長を決めるのに忙しそうだし、もうちょっと黙っとこうかな?






 一発殴られたら正当防衛でいけるからな……フフフ。


―――――――――――――――――――

(以下お知らせ)

 ちなみに来月には書籍版2巻が出るわけだけど、1巻と同じく加筆+書下ろし率は8割超えてると思うよ。

 めっちゃ書き下ろすことに定評があるとか言われても良い気がする。


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