愚問っすよ



 キリゴンに里長を甘噛み(最初1回目はキリゴンが加減間違えて腕食いちぎっちゃったのでこっそり治した)してもらい、色々吐かせた。


 推理? 陰謀? 知るかッ! 暴力は全てを解決する!!

 これが一番早いと思います!!


『なぁアーサー、姐さんが一番ドラゴンしてねぇか?』

『愚問っすよキリゴンさん。ドラゴンを生身で殴るような御方が、ドラゴンしてないはずがないじゃないっすか』

『それなー』


 ドラゴン同士は仲良く雑談している。聞こえてんぞお前ら。

 でもドラゴンしてるってなんだよ、下手に横暴だとか脳筋だとか言わず自分たちの種族名で言ってるから私からツッコめない。

 そして私以外ドラゴン語の分かる人間はいないから誰もツッコめない。


 ハッ!? まさかあいつらそこまで分かって言ってるのか!?

 テメェらドラゴンしてねぇな! 文句があるならかかって来いよぉ!!



 さて。そんなこんなで里長をかぷかぷして情報を得たわけだが。


 帝国の商人に、隠れ里が見つかっており、その存在を隠蔽してもらうために、『ドラゴンへの生贄』と称して若い女を数年に一人差し出していたそうな。


「――この、里を、守る為だった、んだ……すまない……」

「やっぱりな。兄貴の事ぁ怪しいと思ってた。だから俺ぁ外から生贄を用意しろと言ったんだ」


 テンシキ、つまりヨウキちゃんの叔父が鬼の首を取ったかのように得意げに里長を責めている。鬼族なだけに。


「でもあなたがボク達に薬盛ったのは変わらないので、キリゴンさん。この方も甘噛みしてあげてください」

『うっす! 了解っすわディア君ちゃんさん! あーん』

「ぎゃぁあお、お助けぇ!? ごめんなさいごめんなさい、敵の仲間かと思ったんですぅうううう!!」


 ドラゴンにじゃれつかれて泣き叫ぶ成人男性。うーん微笑ましい光景?

 まぁつまり、ドラゴンに罪を擦り付けていたのは里長とその商人だったってわけだね。うんうん。


「ってか、キリゴン普通にディア君の言うこと聞いてんね、アーサー」

『そりゃーディア君ちゃんの言葉は、実質姐さんの命令も同然っすもん。キリゴンも聞く……いやアレは普通に気に入ってるっすね?』

「マジで巫女姫なんじゃねぇかなディア君。まぁディア君に悪さしたら尻尾ちぎってやるけどさ」

『そういうとこっすよ姐さん。相対的にディア君ちゃんが天使に見えるってやつっす』


 なるほど、私との対比ね。


「ふぁぁー……おー? なんにゃなんにゃ? こんなとこに集まってなにしてんのにゃー?」

「あれ、起きたのミーシャ?」

「目ぇ覚めたら知らないトコに一人で寝てたにゃ……ニオイを追ってきたにゃん」


 ピンク髪の猫獣人、ミーシャが頭を掻きながらやってきた。もう薬が切れて起きたのか。

 そしてちらりとキリゴン、ブラックドラゴンをみる。ぱちぱち、と瞬きするミーシャ。


「うぉっ、マジでドラゴンいたのにゃ!?」

「うん、いたいた。あっちの山の方にいてね、ディア君に懐いた」

「マジかぁ、さすがウチの姫様にゃね!」


 そだよー。


「ってか、反応軽いね。ドラゴンいたのに」

「……どうせカリーナの新しい舎弟にゃん? な! 黒いの! 新入りは先輩を敬うがいいにゃ!」

『がるるるぅ! なんだオメェ、猫獣人のミーシャってやつか! 触っていい許可は出してねぇぞぉ!』

「ぴぇっ……カリーナ!? こいつ反抗的にゃ! シメてやれにゃあ!!」


 ミーシャは吠えられて私の後ろに隠れる。おいおい、ペット同士仲良くしろよ……って、ミーシャの事は適当にしていいってキリゴンには言ったっけ。


「実力で上下関係を示したらいいんじゃね? がんばれミーシャ、ファイト!」

「おめー、ドラゴン相手にそんなこと言うとか正気にゃ? ちゃんと私のこと守るにゃ! 飼い主の義務だろぉぉ!? おしっこ漏らすぞコラぁ!!」


 ペットの自覚があるようでなにより? だよ、ミーシャ。



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