青鬼かな?


 ブラックドラゴンのキリゴンに乗ったディア君と一緒に里に戻ってきた。アーサーも付いてきている。

 あ、結界については私がそっと誤魔化したからフリーパスだよ。結界の設定にハッキングを行い、ディア君を例外に追加した。

 今後は気軽に通ってくれたまえディア君。君は乙女だ。


「ど、ど、ど、ドラゴンだぁーーー!?」

「ひぃい、お助けぇー!!」

「あわわわわ、あわわ、あわわわ!」


 里に降り立ったドラゴンに対し、慌てふためく鬼たち。多少気合の入った奴は武器を構えたり拳法の構えをとっている者も居た。

 その連中は、当然頭の上のディア君に気付く。


「み、巫女姫様!? おい、ドラゴンの頭の上に巫女姫様が!」

「何!? 救出せねば……」

「いや、普通にドラゴンを従えているということでは?」


 戸惑いつつも警戒し、距離を保つ鬼族の連中。


「みなさーん、このドラゴンは安全なので話を聞いてくださーい」

「! お前ら! 巫女姫様がおおせだ! 武器を下ろせ!」

「さすが巫女姫様! ドラゴンを支配しているのか!」

「素晴らしい……おお、巫女姫様、巫女姫様……!」


 老鬼がディア君に向かって手を合わせて拝んでいる。うんうん、その調子で頼むよディア君。

 ディア君が私にちらりと目線を送ってきたので、こくりと頷いておく。


「どうやら、ドラゴンは生贄を要求していないようです。これからドラゴンに罪を擦り付けようとした人を探していくので協力してください」

「む?」

「はい?」

「……それは、どういうことですかな?」

「非協力的な人はドラゴンが齧ります。ドラゴンは、生贄を要求してないのにその罪を押し付けられて大変怒っているのです」

『おう、わかった。齧ればいいんだな! 任せときなエルフの嬢ちゃん!』


 いいタイミングで返事したキリゴン。ドラゴンの鳴き声を聞いて、「は、ははー!!」と土下座して並ぶ鬼たち。


「……では、まず。生贄云々を言い出したのは、誰ですか?」

「それは……ドラゴンが現れたので?」

「ああ。生贄を差し出して怒りを鎮めにゃ、と」

「そうそう。ドラゴンといえば生贄だもんな」


 ドラゴンの目の前、非協力的なら齧られるということもあり、すらすらと事情を話し始める鬼たち。


「生贄だ、と、自分より先に言っていた人を教えてください。そうすれば一番最初に言った人にたどり着くでしょう?」

「! それは確かにそうだ。ほら、ゴンベのやつが言ってたよな」

「俺はヨウキ様から聞いたぞ」

「え、私は父から聞きましたね」

「あ。俺もおさから聞いたな」

「俺も」

「わいも」


 と、里長に視線が集まる。


「……儂はテンシキから聞いたな」

『あ、嘘くせぇ。コイツ目ぇ逸らしたっす。キリゴンさん、吠えてくださいっす』

『おうよアーサー。がるるる!!!』

「ヒッ!?」


 ドラゴンに吠えられ、ビクッと飛び上がり腰を抜かす里長。


「わ、わ、わ、儂ではないッ! 儂ではないぞ!?」

『もう一声!』

『うむ。ガルルルルルルルッ!! ガァーーー!!!』

「ひぃっ……」


 ……里長、顔色が真っ青である。青鬼かな?




―――――――――――――

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 そして来月はあとごじの2巻でるぞー! ディア君ディア君!!)

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