なかなか話せるヤツだったよ
どうにもドラゴン達が生贄を要求しているわけではないらしい。というわけで、ドラゴンと交渉を行い茶番に付き合ってもらうことにした。
で、下見を終えて祭具殿に帰ってきた私。
「つーわけで下見行ってきたんだけど、なかなか話せるヤツだったよアーサー」
『姐さん、それは話すって言うか……いや雌の方は話せるヤツだったんすね。そうっすね』
「なんだね? 私の肉体言語に不満があるってんならお話してもいいんだよ?」
『そういうとこっすよォ!……キリゴンさんにはちょっと同情っすわ……』
やれやれ、と肩をすくめるアーサー。
「で、ディア君とミーシャはまだ寝てんの?」
『ぐっすりっすね。自分は寝てるフリ飽きたんで薬切れて起きた演技したっすけど』
うーん、そうなるとドラゴンカップルが来る前に起きられないかもだなぁ。
『姐さんの得意の空間魔法でパパッと解毒とかできないんすか?』
「……薬の成分とか良く分からないからなぁ。とりあえず胃洗浄だけしとくか」
パチンと指を鳴らすとディア君の胃から薬を含んだ消化中の食べ物は消えた。
ミーシャ? そのうち起きるよ。
と、これが効果があったのか、ディア君はそれからすぐ起きた。
「……んん、あれ、おはようございます……?」
「おはよディア君。お腹空いてるよね? サンドイッチ食べる?」
「……いただきます。ここどこですか?」
私はディア君に結界に守られた祭具殿だと説明する。
「え? 男を弾く結界……ボクいるんですが?」
「ディア君は結界に男と認識されなかったみたいだね!」
「お姉さんが何かしたんですね」
「うん。ディア君を私の結界で包んで誤魔化した。ナイショだよ?」
まったく、ディア君の私への信頼が
尚、判定があるのは境界部分だけだったので今は性別を誤魔化す小細工はしていない。
『そんなことよりディア君ちゃん! 姐さんの調査によると、どうにもドラゴンが生贄を要求してたんじゃないって話なんすよ』
「え、そうなのアーサー?……となると、その叔父か、あるいは別の企みということですね。パッと思いつくのでは奴隷売買でしょうか」
おお、奴隷売買。そっか、ドラゴンの生贄と言い張りつつ清らかな乙女を要求し、奴隷として出荷……あり得る話だ。もしや森に居た鬼族の男達が?
そしてディア君寝起きでそれ推理しちゃうとかホント頭いいな。なでなで。
「まぁそれについても、ちょっと茶番付き合ってもらうことになったからさ、何かしら発覚すると思うよ」
「茶番、ですか?」
「もちろんディア君にも協力してもらいたいんだけど、いいよね?」
「はい。それは勿論構いませんが」
と、私はディア君にドラゴンとの茶番について説明する。
ホント茶番なんだけども、キリゴンにはディア君にお腹を見せてゴロゴロしてもらう予定なのだ。
「……えーっと、それでいいんですか? その、ドラゴンのプライド的な面で」
「いいって言ってたよ!」
『まぁ姐さんが文句言わせないんで、ディア君ちゃんは言う通りにしてくれればいいと思うっすよ!』
勝者の言うことはなんでも聞くのがドラゴンのいいところよねー。
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