ここがドラゴンのハウスね
ドラゴンの頭に仁王立ちしたまま、ドラゴンの巣穴へと向かう。
山中の洞窟で、もとはオークがゴブリンを従えつつ住み着いていたらしい。それを奪ったそうな。
「ここがドラゴンのハウスね」
『いきなり殴りこみにいかんといてくださいよ!? 俺が先に一言いってきますんで!』
ドラゴンの頭から降りた私に、慌てて言う黒いドラゴン。
彼女は俺が守る! と言いたげだが、足がプルプル震えているぞ。かわいいね。
「チッ、仕方ねぇな、さっさと行ってこい」
『うす。……おーい、マイハニー。お客さんが来てるんだけど、話してもらってもいいかな』
『ちょっとダーリン! あーし、お腹空いたんだけど! ご飯は!?』
『あ、ご、ごめん。まだ獲れてなくて』
洞窟の中から銅褐色のドラゴンがにゅっと出てきた。
獲物、ちょうどイノシシがあるな。くれてやるか。
「あ、さっきとったイノシシいる?」
『マジっすか! ウス、あざっす!』
『どったの? 誰か来てん……んん? 誰もいないじゃん』
と、きょろきょろあたりを見回す銅褐色ドラゴン。ふむ、人間はノーカウントか。
「ほら、イノシシ」
『ざーっす! うっす! ざーっす!』
と、彼女さんの前で私がイノシシを黒ドラゴンにくれてやると、ようやく彼女さんは私に気付いた様子。
『え!? 人間が喋ってんですけど! ウケルー! ってか人間にペコペコしちゃってダッサ。ダーリンどしたん?』
『バカッ! このお方はな……えーっと、その、そう! メッチャ強ぇんだぞ! 俺らが束になっても勝てねぇから!! 頼むから丁寧に接してくれッ!』
『は? いうて人間でしょ?……マ?』
「マよ、マ。あ、『ホント?』って意味だよね?」
『わー! ってかなんでドラゴン語喋れんの!? スゲー! えー、スゲー!』
目をキラキラさせてぱったぱったと羽をはばたかせている。
なんというか、ギャルいなこのドラゴン。よし、ギャルドラゴンと呼ぼう。
「んでさ、ギャルドラゴンちゃん。最近人間に生贄とか要求した?」
『え? イケニエ?……イケニエってなんだっけ?』
『ほら、ケジメとかで犯人突き出させたりするやつ。で、そのあと勝手にケジメとらせたりしてくるアレじゃん?』
『あー、あーね。ここ20年くらいはしてねーけど?』
おや、そうなのかね。
嘘をついているようにも見えない。ドラゴンが要求してるわけではない……?
『ってか名前教えてよ名前! あーしはギャルドラゴンじゃなくて(翻訳不能)つーんだけどさ!』
『あ、俺は(翻訳不能)っす。そうっすね、是非お名前を!』
おっと、名前んとこ聞き取れなかったぞ。アーサーんときもそうだったけど、やっぱり人間の単語に相当するものが無いからだろう。名前んとこだけグギギーとかガギギーとか。
名前って外国語で言ってもそのままだから、これはこれで正しい翻訳なんだろうけど。
「うーん、ごめん。私にはその名前は難しいからギャルドラゴン……ギャルドラと、イキリドラゴン、キリゴンって呼ばせてね」
『おっけーだし! ギャルドラってチョー可愛くね? これからフツーにそう名乗るわ』
『キリゴンっすか。ええ、悪くねぇっすよ』
と、私のネーミングに喜んでくれる二人。よかったぜ、私、こういう名づけセンスねぇってよく言われるからな!
「私はカリーナってんだよ。よろしくねー」
『カリーナね? おっけー! あーし喋る人間と会ったの自慢しちゃお』
『お、おい! だからこのお方は……すんません、俺の女がマジすんません!!』
ペコペコと頭を下げるキリゴン。
『ってかダーリンめっちゃ怯えてんじゃん。カリーナちゃんマジでつえーの? ちょっとバトってみて、い?』
「お? 可愛い女の子に手をあげるのは私の心情に反しそうなところある。だから手加減してあげるよ。かかっておいで」
『おけまる! じゃあまずは様子見でブレス!』
ブゴォ!! とギャルドラの口からエネルギーの奔流が放たれる。
が、私は空間魔法でそれを捻じ曲げ、キリゴンにぶつけた。
『ぎゃーーー!?』
『うわ! すっげー! ってか大丈夫ダーリン。あーしのブレスがごめんね』
『い、いや、なんのこれしき』
若干フラフラしてるキリゴン。彼女のブレスくらい受け止めてやれよな。
『ね、ね、力比べとかもできんの?』
「お、じゃあ持ち上げちゃる。よいしょ」
『わわっ! すっごーい! ちっちゃいのにパワフルじゃん!?』
ギャルドラをひょいとお姫様抱っこ――は、体格的に無理なので、両手で持ち上げて掲げる形だ。もちろん空間魔法です。手は添えるだけ。
「ついでにキリゴンの傷も治してやろう。えい」
『え? いくらいや姐さんでも人間の回復魔法が効くわけ……治ってるぅーーー!?』
『えー! まじまんじ!? カリーナちゃんすっげー!』
ほっほっほ、もっと褒めて。私褒められると調子に乗って伸びるタイプだからね!
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