確信犯かコイツ
結界をすり抜けた私達は、神社の本殿のような建物に運ばれた。
「ここまでくれば一安心……で、いいんでしょうか?」
「かもね。でもあのテンシキが相手なら、しつこいはずだよ」
ヨウキと侍女がそう話しつつ、私達は畳の上のお布団に寝かされた。
……そろそろ起きた方が良いかな?
チラッ……あ、女中さんと目が合っちゃった。
「……あの、起きてますよね?」
「むっ? バレてた?」
「ええまぁその、運びやすかったので……」
本気で寝てる人間なら、もっと運びにくいらしい……バレてちゃぁ仕方ない。私は体を起こす。
「なんかこう、みんな見ると薬盛られてた感じがしたから寝てた方が良いのかと」
「申し訳ありません、我々の不手際です。……ヨウキ様、事情を説明した方が良いと思われますが」
「う、は、はい……」
ヨウキちゃんが畳の上に正座する。
「実は、村の人間を生贄に捧げるなんてとんでもない、人を攫ってくるなりすればいいだろ、とかいう主張をしている一派がおりまして……その頭目が叔父です」
「……そんなのに朝食任せたとか頭大丈夫?」
「あ、そこも聞いてらしたんですね。いやぁ、あまりに露骨だったので何かしでかすと思いまして……そうすれば叔父といえど父も容赦なく罰せるでしょう? 私が多少叱られる程度で里の膿をだせるならそれでいいかと」
おい、確信犯かコイツ。
「つまり、その叔父はうちのお姫様を生贄にするために眠り薬を盛ったってこと?」
「……そうなります」
「OK、把握した。めちゃ許せんな。ドラゴンに食わすか」
その叔父、私の敵認定しとくわ。
「それにしてもドラゴン様にも眠り薬が効くとは思いませんでしたが」
「まぁ身体小さくしてたし、それでかもね」
『……いや自分も寝たふりっすよ?……あくびはちょっと出たっすけど……鱗毟られたのはびっくりしたっす。でもまぁいつものことなんで』
あ、そうだったんだ。と、まだ寝たフリしてるアーサーが寝言風に言う。ドラゴン語なので私にしか通じない寝言だ。
やるじゃんアーサー。私もすっかり騙されてたよ、言ってくれればいいのに。
「とりあえず、ここは安全なの?」
「ここには男が入ってこられない結界があります。本来ここは清らかな乙女と、その世話をする側仕えの女性だけが入れるのです」
「うん、それでここは安全なの?」
「……叔父の一派には女性もいるので、完全に安全とは言い切れません」
ですよねー。
「まぁうちのお姫様は私達が守るから。それはそうと、さっさとドラゴンと話付けたいんだけどドラゴンはどこにいるの?」
「……ええと、この先の山にいます。あちらです」
ヨウキちゃんが指さす先には森と山がある。そもそもここは山中にある隠れ里なわけだが……ふむふむ。あっちね。
「そっかそっか。じゃあ私ちょっと下見に行ってきていいかな? すぐ帰ってくるからさ」
「え? あ、はい」
ディア君が起きる前に、さっさと済ませておこうかな。その方がのんびり叔父とやらを破滅させられるっしょ!
ディア君に手ぇ出した事、後悔させてやんよぉ!!
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