こんなところでお休みですか?
寝たふりをしていた私とガチ寝してるディア君とミーシャ、あとアーサー。
いざとなれば私が助けるとして……里長とヨウキがやってきた。
「……失礼します。おや? 皆様、こんなところでお休みですか?」
「あら、こんなところで寝ては風邪をひかれてしまいますね。寝室に運びましょう」
「まてヨウキ、この屋敷の寝室では失礼になりかねん。かといって我々が勝手にあの箱を開けるわけにもいかん。祭具殿の方に運ぼう。幸い女性ばかりだし」
いけしゃあしゃあとそう言う二人。
そしてアーサーは里長が、私含む他の3人はヨウキと女中さんのような女の子が背負い運んでいく。
鬼族の女性は十分に力持ちのようで、軽々と背負う。私も女中さんにひょいと背負われた。ディア君はヨウキちゃんが担当のようだ。
……私は寝たふりなので寝言でも言うべきかと思ったが、「むにゃむにゃ、うーん、もう食べられないにゃ……いや食うにゃぁ!……むにゃ」とミーシャが言って、起きてんじゃないのかと尻を突っつかれていたのでやめといた。
というか、一応男女が考慮されてるのがなんだろう。何? どういう企み?
あ。そういや生贄は清らかな乙女じゃないと云々言ってたもんな、そういう感じのアレかな?
「それにしても巫女姫様一行がそろって昼寝とはなぁ」
「そうですねぇ。まるで薬でも盛られたかのようですね」
ヨウキちゃんがそう言うと、里長の顔色が変わった。
「……おい、まてヨウキ。今朝の食事当番はお前だったよな?」
「いえ。テンシキおじさんがどうしても巫女姫様をもてなしたいから、と交代しました。おじさんもついに真面目に働く気になったんですね」
「バカッ! テンシキの野郎に巫女姫様の口に入るようなものを作らせるんじゃない! こりゃ本当に薬盛られてるかもしれん、祭具殿に急げ!」
ん? あれ、これちょっと雲行き変わってきたな。もしかしてこの先に待ち構えてるの、そのテンシキおじさんの手の者?(空間魔法で伏兵把握済み)
じゃあそいつら固めてそのまま伏せさせておきますね。ていっ。
「む? なにやら圧が消えた感じがあるぞ」
「巫女姫様の神通力でしょうか?」
まぁきっとそう、たぶんそう。おそらくそうだね!
「今のうちに急ぐぞヨウキ」
「はい。しかし、祭具殿でも大丈夫でしょうか?」
「祭具殿なら安全なはずだ。あそこは女子以外は入れないからな」
「そうですね! あ、ドラゴン様はどうしましょう……?」
「入れないのは人類だけだ、ドラゴン様は問題ない。というわけで儂は入れないから、途中からドラゴン様も任せる」
「はい父上」
……おっと。これディア君も入れないんじゃね?
まぁ、バレた時はバレた時でいいか。巫女とするために女の子の格好が義務だったとかそんな感じで!
そんなこんなで、私たちは祭具殿とやらに向かう。と言っても割とすぐ近くで、朱色の鳥居がたっていた。この先が祭具殿らしい。
「儂はここまでだな。あとは任せたぞ!」
「はい、父上。皆もあと少し頑張ってくれ!」
と、女中さんが私を背負いつつ、一足先に鳥居をくぐる。
とぷん、と水の膜のようなものを通った感覚があった。
これは空間魔法、結界か。空間魔法なら私もプロだから触ればもうほとんど分かる。……対象を分類し、女以外を弾くタイプの結界が張られていた。
だがこれはディア君を空間魔法でコーティングすれば通れるはずだ。簡単に誤魔化せそうだね。
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