下見



 ディア君を結界で守りつつアーサーに任せて、私は一人山まで下見にやってきた。


「オラァ! 出てこいや雑魚ドラゴン! ぶちのめしたらぁ!!」


 適当に山の木を殴り倒しつつ、私はドラゴンを探す。

 へし折れた木は回収して木材にしよう。大事な資源だ、無駄なく使わなきゃね!


「ほらほら縄張りはここじゃねぇのか? おーいドラゴンやーい」


 イノシシが逃げていたので捕まえておく。今日のお昼は牡丹鍋にしようかな。

 サクッとしめて、血をばらまいて獲物を誘う。


「ほーら、お肉だよー。ドラゴン君出ておいでー?」


 と、ドラゴンではなく狼が寄ってきた。鼻の良さはドラゴンより上なんだろうか、犬ッコロめ。まぁ犬は嫌いじゃないので見逃してやろう。しっし。せめてドラゴン呼んで来いよ。


 襲い掛かってきたひときわ大きい狼をげしっと蹴り飛ばす。そいつを思いっきり蹴り飛ばしたら群れは逃げていった。


「はぁー、出てこないなぁドラゴン」


 ……うーん、こんなに暴れてるのに全然顔を出してこない。


「えい、空間魔法サーチ!」


 半径1kmくらいを探る。……うーん、鬼族の男が数人。そこそこの獣が数十匹。小動物と虫は無視。

 鬼族の男はなんか逃げてる感じがあるな。あ、私がここで暴れてたからか?


「もうちょっと山の方に行ってみるか」


 空間魔法の転移を使ってより山奥へ移動。改めてサーチ……あ。オークだ。こいつ良い肉になるんだよね。上位個体はマズくなるけど。狩っとこう。


「こんにちは、そしてさようなら!」


 遠慮の欠片もなくずどーん! と周囲を薙ぎ払い、オークを狩る。首を飛ばし、足を掴んでブンブン振り回して遠心力血抜きだ。同時に血がばらまかれ、獣を呼び寄せる……って、さっきの狼じゃん。私みて逃げたしたよ。「なんで先回りしてんの!?」って顔してたわ。

 ついでに言えば鬼族の男達も追い越してたので、こいつらも横へ逃げていった。


『ぎゅぉおおおおおーーーーーーーん!!!!』


 あ。ドラゴンの声。見上げれば、黒い鱗のドラゴンが羽ばたいて空から私を見ていた。来たみたいだな。


『俺のシマで何しとんじゃワレェ!?』

「やぁ、探したよドラゴン君。君、生贄欲しいとか言ったってホント?」

『は? あー、この近くの鬼がそう言ってたんか?……って、ニンゲンがドラゴンの言葉喋っとるがな!? どないなっとんねん!!』


 ぎょっと驚きの表情を浮かべるドラゴン。


「なんだよ、ドラゴンだって人間の言葉わかるんだから、人間がドラゴンの言葉喋ってもおかしくないだろうに」

『確かにそれもそうか。じゃあ改めてぇ、貴様ァ! ウチのシマ荒らしてんじゃねぇええええええ!!!』


 一瞬落ち着いたかと思ったが、普通に襲い掛かってきた。


「オラァッ!」

『へぶぅうぅうううう!?』


 はい、横っ面をワンパンでおとなしくなりましたよっと。さ、改めてお話しよっか。ドラゴン君?


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