快適な空の旅



 コンテナの内部は応接室のようにテーブルとソファーが置いてあり、カーペットが敷いてある。仮眠用のベッドも置いてあった。それとソファーにはペットのミーシャが丸くなって寝ていて、床には透明な丸い窓が角の4ヶ所についている。


 コンテナはアーサーに持ち上げられてふわりと空に浮いた。


『……あれっ!? ホントに超軽いっす!』

「いやだからそう言ってんじゃん。ああ、どんだけ早く飛んでも中にGがかかったりしないから安心して飛ばしていいよ」

『じいってなんすか?』

「ほら、勢いよく動くとぐわってすんじゃん? それ」

『あれかぁー!』


 ……Gの概念、ぐわっで通じるのか。

 尚、ここまでコンテナの天井から顔をだしてのドラゴン語会話である。



 天井から顔をひっこめ、コンテナの中に戻る。


「はーい、それじゃあ快適な空の旅へレッツゴー。外の様子は床の窓から確認しようね」

「……と、飛んでる……! 本当に!」


 鬼娘、ヨウキちゃんは床に設置した窓を覗き、離れ行く地面に感動しているようだ。アイシアも「ひらめいた! これはあるじ様を讃える新曲に活かせるかもしれない!」と食い入るように見ている。


「ディア君は見なくていいの?」

「ボクはアーサーに乗って飛んだりしましたから」


 と、すこし得意げなディア君。可愛い。

 ちなみに私は普通に空間魔法で飛べるので見る必要は無いのだ。


「ミーシャは? 見なくていいの?」

「ていうかなんで私ここにいるにゃ??」

「いやぁ、狭い空間には癒しがあった方が良いかなと思って」


 さりげなくコンテナを展開したときにミーシャを呼んでおいたのだ。

 従者がOKってんだからペットも従者ってことでOKっしょ。癒しは大事だぞ、癒しは。


「拠点で五大老かよいづまに尻をつつかれて研究されるのとどっちがいい?」

「…………ちゃんと夜にはお家返してにゃー?」

「ところでこれから鬼族の隠れ里行くんだよ。一緒に行かない?」

「お、なにそれ面白そう。付き合ってやるにゃ!」


 そういうノリの良いところ好きだぞ親友。


「あ、あの。勝手に同行者を増やされるのは……」

「え? 従者OKなんでしょ? 大丈夫、餌は自前で用意するから!」

「餌いうんじゃねぇにゃカリーナ! でもこう見えて私そこそこ強いからお役立ちにゃよー?」


 会ったばかりのヨウキに対し、肩を組んで絡むミーシャ。

 何気にコミュ力高いよねミーシャ。相手のヨウキは迷惑そうに困っているけど。


「ちなみに生贄を求めるドラゴンが相手なんだけど」

「おうカリーナ、やっぱおうち帰るから扉開けにゃ」

「一緒に来てくれるって言ったじゃん! ディア君はやる気満々だよ!?」

「ディアちゃんを巻き込むんじゃねーにゃ……ちっ、しかたねーにゃー……ってちょっとまつにゃ!? なにこれ地面がはるか下にゃん!? すげー!!」


 窓を覗き込んでミーシャが楽しそうに言った。楽しんでもらえて何よりだよ。


「つーかスゲェ速いにゃ! 馬車よりずっと早いにゃ!」

「まぁこれ運んでるのアーサーだしね。サンダードラゴンの速度は伊達じゃないってこった。あ、ヨウキちゃん。里近くなったら言ってね」

「は、はい」


 そして思っていたよりアーサーは早く、その日の夜中に里に着いた。


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