鬼族
目的地を決めた私たちは、早速出立を決めて首都テラリアワンを出た。
ローブちゃんローブちゃんと言い続けるのもなんなので、そろそろ自己紹介してもらおう。訳ありっぽくてここまで触れずにいたけれどね。
「申し遅れました私はヨウキと申します」
「……おお! 黒髪美少女!」
ローブを外して顔を見せてもらうと、そこにはおかっぱっぽい黒髪の黒目の女の子がいた。年齢的には女子高生くらいだろうか? おでこに2つの小さな角が生えている。
「なるほど、
「私も初めて見ましたね。鬼族、歌で聞いたことはあります」
「そういうのもあるんだ。へー」
曰く、モンスターの血が入っているため迫害されがちらしい。とはいえ、獣人国ではシカ獣人と言えばギリギリ誤魔化せるとか。
「それで、隠れ里ってのはこっちの方向でいいんだよね?」
「はい。馬車で半月ほど行った場所にあります」
「ん? そうなるとテラリアルビーの外にでることになるのか」
獣人国テラリアルビーは小国で、面積も小さい。馬車で半月も移動したら端から端まで行けてしまうだろう。
「はい。場所としては、ギドラーガ帝国の領土内になります。国境の砦は通りませんが……ところで、馬車は?」
「わぉ、密入国ってわけだね。なら遠慮することはないか」
と、私は背負っているリュックからごそごそと箱を取り出した。手のひらサイズの箱だ。
「……従者の方、それは?」
「私の事はカリーナちゃんって呼んで! これは馬車代わりの乗り物だよ」
ぽいっと投げると、コンテナが現れた。勿論空間魔法で入れ替えただけだが――このコンテナ、扉を開けて中に入ると中身はコンテナハウスとなっている。
もちろん空間魔法で作った部屋なわけだが、家具については五大老工房製。快適な生活をお約束しよう。
「これが、乗り物ですか? どうやって動くのです?」
「アーサー」
『うっす!』
と、アーサーがばさりとコンテナの上に乗り、大きくなった。コンテナの上には、足で持つための棒がついている。……まるで巨大なオカモチだ。
「と、こうやってアーサーが運ぶんだよ、ドラゴン空輸だね」
「ドラゴン空輸……!?」
「快適な空の旅さ。仮にこの箱が落ちても何も問題ない備えはしてあるから安心して。それと光学迷彩もあるからバレないよ」
と、ヨウキちゃんをコンテナに押し込む。ディア君とアイシアにも乗ってもらう。大丈夫、落ちても安全だからね!
『で、姐さん。実際には姐さんの魔法でひとっとびっすよね? いやぁー楽でいいなぁ!』
「あ。アーサーには箱を持って飛んでもらうよ? 箱は軽くしとくけどよろしく」
『えー! そんなぁ!?』
「箱の底に窓付けてあるんだよね、地上の様子を眺めつつ実際に飛んでもらおうと思って。実際空輸ではどのくらいの時間がかかるのか知りたいしさ」
まぁ頑張って? と親指を立てて、私もコンテナの中に入った。
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(書籍化作業中ですわ……!!)
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